チラシの裏に、∞の世界が広がる…!

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ここ何度か紹介していた作品は…というか基本的に僕が好きな作品はほとんどの場合、そこはかとなく知性が感じられるもの・想像力が掻き立てられるものが多いようにも思えるのですが……って、いやそれもちょっと違うかな、そもそも漫画に限らず1つの作品として世に出回っているものというのは少なからずしっかりした構成力・鑑賞者の感情を動かす力などが要求されるので、知性みたいなものがないわけがない(=知性がなくては作れない。言語を獲得できない動物種が、人間を感動させる作品を自発的に生み出すことは決してできないように……って、それも、抽象画とかなら可能なんですかね?検索したら、「チンパンジーが描いた絵が、約300万円で落札された」というニュースもありましたが…↓

www.wrc.kyoto-u.ac.jp
こちらの記事にそのチンパンジーコンゴの作品が載っていたので抜粋させていただくと…

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コンゴの8作目(1957年6月)、Mayor Gallery(ロンドン)提供

う~ん、でもやっぱ、僕ぐらい芸術的センスに欠けている男ですと、この絵の良さは分からない・感動にまでは至ることができないといえますねぇ…。

作品という形で万人の心を動かすのは、やはりある程度以上の知恵がないと難しいといえそうです。)

…って無駄に余談が長くなりましたが、本題に戻ると、ま、普通に商品として売られている、僕程度の浅い読者が目にするような有名作品であれば知性が備わっているのも当たり前ともいえるんですけれども、やはりどちらかといえば、僕は個人的に、漂う知性が押し付けがましくなく感じられるようなものを求めているというか好んでいるのかもしれません。


というか多分それも因果関係が逆で、別に僕は漫画に知性なんぞを求めて読んでいるわけではないんですけど(1ミリも知性の欠片すらないタイプのギャグ漫画とかもめっちゃ好きですし……でもそれも結局、他人を笑わすことができるのは、作者の知性の賜物って気もしますね)、やっぱり、自分が好きになるのを見回してみたら、まぁ「知性」ってのも漠然としているというか何かカッコつけた言い回しですけど、こう何というか「その発想は凄い!そんな考え方は自分の頭からは全然出てこなかった、面白い!!」と思えるものが多くなってるかな、って感じですね。


特に沢山の作品を読むようになって無駄に目が肥えてからはなおさら、具体的に挙げたら申し訳ないですけどまぁあえていうならコロコロの作品みたいな、小学生男児がキャッキャ喜ぶようなものより、やっぱりもうちょい深みのあるものの方がハマることが多いかな、って所でしょうか。

(でも、何度も書いている通り、歴史とか純文学とか哲学とか、本当に難しいものを自分の中でしっかり咀嚼できるほどの審美眼にまでは至っておらず、「凡人にも分かりやすく知的に感じられる」ように(作者の方が)作ってくださっているものに惹かれているだけともいえるんですけどね。

…あぁあというまでもなく、小学生を笑わせるのもそれはそれで非常に難しいことであり、コロコロ作品とかが劣っているということは(特に元コロコロ作品愛読者として)一切微塵も思わないのももちろんのことです。
 まさに、「自分は」コロコロを卒業した(コロコロ的子供だましな作品が悪いわけではなく)、というお話ですね。)

 

…おっと、無駄に割とどうでもいい前置きが長くなってしまいました。

今回取り上げさせていただく作家さんは、そんな自称目が肥えた漫画鑑賞の玄人こと僕が思う、「この方の想像力・発想力の底知れなさには恐ろしさすら感じるとともに、心と魂に訴えかけてくるものがあって、全身が震える」作品……

それが、既に最初の漫画画像で挙げていました、詩野うらさんによる、『有害無罪玩具』『偽史山人伝』他、チラシのウラ漫画

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「有害無罪玩具」表紙より

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偽史山人伝」表紙より

tirasimanga.web.fc2.com
そう、表紙画像の次にリンクカードを貼りましたが、元々詩野さんはネット上で漫画を自主的に公開されていらっしゃった方で、上記ご自身のウェブサイトで全ての作品が閲覧可能だったんですけど、あまりにも傑作であったためか書籍化にまで至り、それに伴い、残念ながら書籍収録分の話は数ページまでの公開に制限されてしまっています。

(「詩野うら」というペンネームは、「チラシのウラ」をもじったものではないかと推察されますが、とても良いお名前ですね。)


…おーっとしかし何とも都合がいいことに、ビームコミックスのセール期間中のようで、シーモアAmazon(↓)も(恐らくその他どの配信サイトでも)、定価913円が、現在まさかの273円!

www.amazon.co.jp
お得ぅ~!
コミックビームといえば僕にとってはやはり『放浪息子』で、放浪息子が連載していた雑誌なので、非常にイメージが良い雑誌です(笑))


僕は当然定価組ですけど、自分の好きな作品が幅広く読んでもらえることにつながるセールは大歓迎ですね!

(でも、こういうセールって、作者さんに入る印税も引かれちゃうのかな…?

 そもそも詩野さんは、「新都社」(にいとしゃ)という、ネット民の有志が作った架空の出版社で作品を公開されていたのがその始まりだと思うんですが(僕はネット上で偽史山人伝がめちゃくちゃ話題になってたときに初めて目にした新参なので、初期の歴史については存じ上げませんが…)……

neetsha.jp
…最近はめっきり僕自身がアクセスすることは減ってきてしまいましたが、そのニート社は、今でも活発に有志の方の作品投稿および感想やファンアートで盛り上がってるんですね!

 僕は、この誰でも無料で気軽に楽しめる新都社みたいなコンセプトは大好きなんですけど、とはいえ漫画や小説という多大な労力をかけたものが報酬を生み出さないというのもそれはそれで特に作家さんには死活問題ですし、お金というのは難しい問題といえそうです(言うまでもなさ過ぎる話ですが)。

 詩野さんも、最近はめっきり表立った活動をされていないように見受けられますが、僕はたったの2冊分しか支援していないザコですけど、こういう類まれな光るものを持たれている方の才能が、金銭問題みたいなもので埋もれてしまうのは非常に残念というかもったいないので、どうか「作品を出したいけど、収入確保で忙しく、それが難しい…」という状況ではないことを願ってやみません……
(言い換えると、経済的な問題ではなく、気分の問題などであれば、それはまた何か改めてアウトプットされる気になるまで、いつまでもじっくり待たせていただきたいと思えてやまない感じです。
 ↑で言っているのは、あくまで「経済的なやむを得ない理由みたいなもので、製作に集中できない・作品を出せない」という状況でないことを祈りたい……という話で、急かしているわけではないってことですね。)
 まぁ結局何か上から目線の酷い物言いにもなっているかもしれませんが…。)


…と、話が大分逸れましたが、セール中でも立ち読みや古本とは違い作者さんに確実に還元される形にはなっているはずなので、ご興味ある方はぜひぜひお手に取っていただけるとファンとしては嬉しいです、ということでした。

 

作品についてですが、上述の通り、誇張抜きに、僕が今まで見てきた中で最も深くまた大きく広がった空想の世界を見せてくれる作家さんに思えてなりません。

本当に、(悪い意味ではなく)子どもが考えるような無限の可能性を秘めた独自の空間が展開されており、まさに、謙遜されて「チラシのウラ」と銘打たれているわけですが、心から「チラシの裏には無限大の世界が広がっていたんだ!」と思える、人間の想像力の底知れなさに度肝を抜かれたといっても過言ではない作品群なのです。


僕も想像力にはそれなりに自信がありますけど、「え?まだ話が広がるの?そしてさらにその先も…?!」という驚きが本当に心地よい喜びとして自分の脳に伝えられてきて、もうまさに「痺れた…!」としかいいようのない、大変稀有な体験を味わうことができましたねぇ。

僕は小説はほっとんど読みませんけど(多少思いついたときに有名作品を中心にまとめて読んだことはありますが、漫画と比べたら毛ほどの量ですね)、小説家の方を含めても、個人的には詩野さんの思考想像創造力が一番深いのではないかとすら思えるぐらいです。


自分の中で雄大な世界を構築して、それをそのまま分かりやすくアウトプットすることができるという点で、詩野さんは格が違うな、この方の脳内には一体どのようなイメージが広がっているのだろう…という興味が本当に尽きません。

(なお、あとがきの方で、詩野さんのアウトプットの仕方の一端を文章で垣間見せていただけているのですが、もうその表現すらも何というか詩的で、まさに深淵を覗かせていただいた感があって本当に良かったの一言です。)

 

とはいえしかし、詩野さんの作品が全然ピンと来ない方がそれなりにいるということは、正直、容易く想像がつくともいえるかもしれません。

ただ、これは「この良さが分からない人は感性が鈍いと思う」「目が肥えていない」「浅い」というのは冗談抜きに一切思わず…

(実際、Amazonの星1レビューは、決して嫌がらせや愉快犯ではなく、またレビュー内容も真摯で「適当な読みだなぁ。読み手の力不足では?」と感じることは全くなく、そのレビューをされた方ご自身の審美眼は確かなものをお持ちに違いない、と思えるものがほとんどでした)

…純粋に、こういう思考の掘り下げ方・想像の膨らませ方が合わない人も確実に一定数いるのも理解できる、という形ですね。

(別のベクトルの想像性で、僕には合わないものもいくらでもありますから、まさにそういう思考の嗜好(クソうまギャグ)の違いによるものといえましょう。)

 

でも改めて、合わない人がそれなりにいたとしても、僕の心には詩野さんの紡ぎ出した世界が完全に共鳴したのは間違いのない事実だし、そのことがとても嬉しく誇りにすら感じるんだ…とさえ思える、っていうことですね。

「この作品が合わない人は、人間的に合わない」は100%全く1ミリもそう思いませんが、「合う人は、本当に自分と同じタイプの人だと思う」というのは間違いなくそう感じる話でして、作者ウェブサイトでは詩野さんが新都社についたコメントにご丁寧にしっかり返信を返すコーナーがあるんですけど…

tirasimanga.web.fc2.com
…改めて、コメントを送る方も、自分と同じような感性をお持ちの方が本当に多く見受けられるような感じがして何だか嬉しいなぁと、昔よく見ていた頃に感じていたものです。


個人的に一番好きなエピソードを挙げるなら、本当にどれもあまりにも深くて大好きなんですけど、あえて挙げると、書籍化1作目『有害無罪玩具』の方に収録の『虚数時間の遊び』なのですが…

tirasimanga.web.fc2.com(残念ながら書籍収録なので、ウェブ上ではもう最後まで読めませんが)、世界観・各エピソード・終わり方までどれもが完璧、本当に震える出来で、読むたびに感銘を覚えずにはおれない感じです。

まぁ、僕が書籍化にあたりチラウラ漫画3作を選べといわれたら、まさに『有害無罪玩具』収録の3作を選んだと思いますし、あまりにも素晴らしい1冊になっていますからどちらかといえば先に手に取っていただくならこっちがいいのかな、と思いますが、書籍化された2冊とも、どちらも本当にオススメです。

(なお、ウェブ上で公開していたときは、一部作品の一部ページにGIFアニメが入っており、少し動くギミックとかも大変楽しかったのですが、書籍化に伴いそれがなくなってしまったのはやや残念です(流石に、コミックは静止画のみ)。
…まぁ、僕は公開終了前に、ちゃんとGIF動画画像は保存させていただきましたが…(笑))

最後あと1つネックをいえば(Amazonレビューでも何度かいわれていましたが)絵で、僕にとっては内容にピタリのとてもいい作画に思うんですけど、やはり絵だけで客が付くレベルの美麗なものとはいえないのもそうかもしれず(トーンを使わず、全てが手描きなのも、僕の姉を筆頭に受け付けない人が多そうです)、そこは大衆受けという点では惜しくもあるのですが、でもやっぱり、詩野さんの脳内を表すのは詩野さんにしかできないことですから、僕はこの手描き感溢れる絵も、とても良いと思います(元々吉田基已さんとか、手描き風な方の絵もとても好きというのもあるかもしれません)。

同じく新都社発のワンパンマン(後に、ジャンプ史上3本の指に入るといわれている村田雄介さんの作画でリメイク)のように、別の方の手による詩野作品も見てみたくはあるものの、やっぱり、詩野さんご自身の手によるアウトプットが至高に思えてならないですね。


とにかく人間の持つ想像力の素晴らしさ・奥深さ・尊さを再認識できる詩野うらさんによるチラシのウラ漫画、共鳴できそうな方には、心からオススメの逸品です、という話でした。

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