前回見ていた精神疾患の診断名および診断基準を網羅した世界的権威を誇る書籍といえますDSM-5の記事で、「こんな疾患が記載されています」と挙げられていた例の中に、非常に興味深いものがいくつも見られました。
とはいえやはり、心の問題というのはどれも単純なものではなく、ほとんどの記事がべらぼうに長く、「ちょっとこれ読むのはキツイなぁ…」と思えるものばかりで、泣く泣く断念せざるを得ない感じだったのですが…
(例えば、めちゃくちゃ身近な行為で、そうする心理とか対策とかが知れたら面白そうだと思えたものに、皮膚むしり症とか、毛抜き症とか、むちゃ食い障害(この症例名も、「そんな名前あるかよ(笑)」と思えますが、いくつか別名はあれど、これが一番よく使われる正式名称の印象ですね)とか、あと他にも窃盗壁とか放火癖とか、その辺はかなり気になります)
…特に↑の例に挙げたものは、「ちょっとぐらい長くても、面白そうだしぜひ読んでみよう」と思っていたのに、その気持ちを挫いてくるレベルで尋常じゃない長さのものばかりだったこともあり諦めざるを得なかったわけですけれども、唯一(ではなく二つ)、アルコール使用障害と自傷行為についての記事、こちらもかなり身近に感じられるもので、かつ、記事の長さもギリギリ1記事として我慢できるぐらいかな、と思えるぐらいのものがあったので、DSM-5記事からはこの2つを取り上げてみようかなと思います。
まずは、記事タイトルにも挙げていました、自傷=Self-Harmの方から参りましょう。
これは、幸いにして僕は一度もやったことがないと言いますか、「ひぃ~痛そう」としか思えず、金もらっても絶対やりたくないレベルで自分とは縁遠い症状なんですけれども、特に学生時代は、親しくしている間柄の子でも、どうしても繰り返しやっちゃう子が周りにも結構いました。
言うまでもなく女の子の方が多い印象がありますけど、そういえば高校の頃一番親しくしていたレベルの友人(男)が、
「中学の頃、彼女と別れた後とかに、どうしても自分が許せなくて、思いっきり傷つけたことが何回かあるよ、マジで肉体的な痛みのおかげで、気持ちが楽になるんだ」
と、傷跡も見せてくれたことがありましたけど、彼は確か「自虐」と呼んでいましたが、まさかの日本刀(まぁ模造品だと思いますけどね(笑)、でも、鋭利なものですし、傷つくのには十分な鋭さのものっぽかったです)を使って傷つけていたようで、しかも腕全体を縦断するように斬り付けていた痕があり…
(リストカット、いわゆるリスカといえば、手の平を上に向けた状態で水平方向にカッターを走らせるものですが(なので、若者用語で、リスカのことはしばしば「イカ焼き」と呼ばれていることも豆知識ですね)、彼はまさかの垂直方向に刀の先端をずずーっと走らせるという、凄まじい執念でした)
…とはいえまぁでも、腕って別に手首のすぐ下はシワが横切っているものですし、縦方向にも血管が走ってたり筋肉が盛り上がっていたりで、何かしら線が入ってるのは普通なので、僕は別に見てもそこまで違和感を覚えはしませんでしたが、いずれにせよ、男の子でも人によっては全力で自分の肉体を傷つけることは、なくはない話に思います。
(むしろ、ゲームで上手く行かずに体を思いっきり殴ったり、ムカつくことがあってモモに鉛筆ぶっ挿したりみたいな極端なことをするのは男性に多い気もします。)
今回の記事は例によってクリーブランド・クリニックによるもので、アメリカの医療現場での話ですし、日本の少年少女のみならず、この行為は世界中で見られるものだということですね。
これを読んだ所で自傷に走る子の気持ちが完全に分かったり対策ができたりなんてことは絶対にないと思いますけど、世界最先端の最新医学ではどういうアプローチがなされているのか、今回もHEALTH LIBRARY記事を参考にしてみようと思います。
自傷(非自殺性の自己傷害疾患)(Self-Harm (Nonsuicidal Self-Injury Disorder))
自傷とは、自分自身を故意に傷つけることを意味します。自傷を行う理由は様々です。ある人は、圧力鍋の蓋を外すような感覚で、それが気持ちの安らぎをもたらすと感じているのかもしれません。また他の人は、身体的な痛みが自分が生きていることを思い出させてくれるからという理由で自傷を行っていることもあるのかもしれません。しかし、自傷は時にその意図以上に深刻になることがあり、感染症を引き起こす可能性もあります。治療方法は存在しています。
概要
自傷とは何?
自傷とは、自分自身を故意に傷つけることです。非自殺性自己障害症とも呼ばれているこの自傷行為を行う方々は、自分自身を傷つけているわけですが、死を引き起こしたいわけではありません。自傷を行う理由には、以下のようなものがあり得ます:
- 心の処理のため。自傷を行う方の中には、痛みに耐えられることを証明したり、ネガティブな感情を解放したりすることで、それが気持ちよく感じるからという理由で行う場合もあります。
- 感情を内側に向けるため。中には、自分自身を罰するためや、自分の怒りを向けるために自傷を行う方もいらっしゃいます。
- 自分が苦しんでいることや助けを求めていることを示すことで、他者とのコミュニケーションを図るため。
(※ここには動画が挟まれていましたが、例によって記事のまとめのような内容で特に意味もなかったものの、今回は画像がなかったので、
「自傷には、Cutting(切る)のみならず、Biting(噛む)、Burning(焼く)、Hair-pulling(髪を引っこ抜く)、Head-banging(頭を振り回す)、Scratching(引っ掻く)、Skin-picking(皮膚をむしる)、さらにはSelf-punching(自分を殴る)といった行為もあります」
…というシーンのスクリーンショットを、アイキャッチ用にお借りしようと思います。)
この症状を持つ人はどう自分を傷つけるの?
自傷には多くの形があり得ます。いくつかは他のものより一般的ですが、全て危険性を伴います。最も一般的な自傷の行動には、以下が含まれます:
- 皮膚を切ったり破いたりするために、鋭い物で切る行為
- タバコ、マッチ、もしくは加熱した鋭い物のような熱い物質、または家庭用洗剤のような化学物質で焼く行為
- 衝撃によって怪我を引き起こすことがある、固い物を叩く―壁を殴るなど―行為
- 皮膚にダメージを与えることにつながる、引っ掻いたり擦ったりする行為
症状と原因
非自殺性自傷の症状は何?
もし自傷をしているなら、それを周囲の人々から隠そうとするかもしれません。外が暑くても長袖や長ズボンを着て傷を隠すことがあるかもしれないわけです。また、そのケガを事故によるものだと言い訳することもなくはないことでしょう。それでも、周りの人は、以下のような自傷の症状に気付くことがあるかもしれません:
- 特定の形や集まり方をしたかさぶたや傷跡
- 同じ大きさや形の複数のやけど
- 新しい引っ掻き傷、噛み跡、あざ、または腫れを引き起こす頻繁すぎる事故
- 皮膚の特定の部分を引っ掻き続けてしまうのがやめられないなど、衝動のコントロールに問題があること
自傷は体のどこで行われるの?
自傷を行う可能性が最も高い部位は以下の通りです:
- 腕(特に前腕)
- 手首
- 太ももの前面
- 腹部
それ以外の体の部位での自傷はあまり一般的ではないものの、可能性はあります。
何がその人に自傷を引き起こさせるの?
自傷の原因を正確に言い当てるのは困難です。しかし、以下を含む特定のメンタルヘルスの状態が自傷と関連していることがあります:
- 不安障害
- 自閉症
- 双極性障害
- 境界性パーソナリティ障害
- 鬱病
- 素行症や間欠性爆発性障害といった、秩序破壊的、衝動制御および素行症群
- 解離性障害、特に解離性同一性障害や解離性健忘
- 摂食障害、特に神経性無食欲症
- 性別違和
- 強迫性障害
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 睡眠障害
- アルコール中毒、アルコール使用症、および大麻使用症を含む、アルコールや医薬品使用症
非自殺性自傷症のリスクファクターは何?
非自殺性自傷の危険因子には以下が含まれます:
- 虐待やトラウマ: 自傷は、虐待やトラウマ歴(特に幼少期の虐待やその他の有害事象を含む)をお持ちの方々に、より一般的です。
- 年齢: 自傷行動は、12歳から14歳の間に始まることが最も多いです。しかし、もっと早く始まることもあり得ます。自傷を行う方々は、しばしばそれを数年間続けます。自傷は若年成人、特に大学生に一般的です。
- 性別認識: シスジェンダーでない方々(つまり、生まれた時に割り当てられた性別を受け入れていない方々)は、自傷の率が高いです。専門家はこれを、虐待やいじめなどの有害事象による高リスク化と関連付けています。
- 性的指向: 性的マイノリティの方々(つまり、異性愛者でない方々)も、自傷の率が高いです。専門家は、性的少数者の方々は有害事象に直面しやすいため、自傷の率が高くなると考えています。
- 社会的孤立: 社会的に孤立している、または拒絶されていると感じている方々、特にいじめやその他の理由で社会的孤立を経験している子供やティーンエイジャーは、自傷の率が高いです。
診断と検査
どうやって診断されるの?
非自殺性の自傷症は、診断が難しい場合があります。自傷をしている方々は傷を隠し、そのことについて話すのを避ける傾向があります。
医療従事者は、自傷を診断するための特定の検査を使用しません。その代わりに、傷を調べて、過去の自傷によるパターンや傷跡を探します。また、医学的および社会的な既往歴について質問されます。さらに、生活で何が起こっているのかについての話し合いもなされます。金銭的な問題、最近の家族との死別、学校での問題、いじめ、または恋人との別れなど、ストレスを引き起こす可能性があるものを探していきます。
管理と治療
自傷はどう治療されるの?
自傷について医療機関を受診した場合、まず必要であれば傷の治療が行われます。その後、長期的にメンタルヘルスや生活のストレス要因を管理するために、セラピーかつ/または薬物治療を勧められることがあるかもしれません。
自傷を治療しないリスクは何かある?
治療を受けないと、短期的および長期的なリスクがいくつか考えられるため、自傷の治療を受けることは重要です。
短期的なリスク
時々、自傷は以下を含む自分では意図しなかった問題を引き起こすことがあります:
- 医学的な合併症: 自傷行動は感染症、神経損傷、並びに永久的かつ/または重度の傷跡につながり得ます。時には、深刻な怪我や死亡を招くこともあるかもしれません。
- 社会的な問題: 自傷は―意図的または意図せずに―家族、友人、または他の愛する方々との関係に影響を与えることがあります。また、仕事や学校などの社会的な場での自分の気持ちにも影響を与える可能性があるものです。
長期的なリスク
自傷は、以下を含む長期的な問題を引き起こすこともあり得ます:
- メンタルヘルスの悪化: 自傷は、恥、罪悪感、または後悔の感情を引き起こすことがあります。傷を見られることを心配して、傷や傷跡を覆ったり隠したりするために、多大な努力をするかもしれません。
- より深刻な怪我: 自傷行動はしばしばエスカレートします。自傷をもっと頻繁に行ったり、自傷がより深刻になったりすることがあるかもしれません。
- 自殺のリスク: 非自殺性自傷症は自殺を目的としたものではありません。しかし、自殺を試みたり、自殺によって命を落とすリスクは、自傷を行う方々で非常に高くなっています。
予防
自傷は予防できるの?
初めての自傷を予防することは必ずしも可能ではありませんが、メンタルヘルスの医療従事者に助けを求めることで、自傷を続ける可能性を減らすことは可能です。
その他のよくある質問
自傷について医師に診てもらうべきタイミングはいつ?
もし自分自身(または大切な誰か)が自傷をしていることに気付いた場合、医療従事者に相談してください。負った傷が医療処置を必要としている場合もあります。また、自分がひとりではないことを知るのも助けになることでしょう。担当医が話を聞いて、支援してくれます。ご自身に適した治療法を提案してくれますよ。
救急外来(ER)に行くべきタイミングはいつ?
自傷や他の人を傷つける危険を感じた場合は、すぐにERに行くか、911(またはお住まいの地域の緊急サービス番号)に連絡してください。アメリカでは、988をダイヤルすることで、自殺予防・危機支援ラインに相談することも可能です。
また、以下の症状を含む、怪我の程度が深刻である場合も、緊急の対応が必要です:
- 呼吸困難
- 止まらない出血
- 身体的な変形
- 手足の動きの喪失
痛みは自傷をする人にどのように影響するの?
自傷が対処メカニズムとなる理由の一部は、体が痛みに対してどのように反応し処理するかに関連しています。
体が損傷を受ける可能性のある状況に遭遇すると、影響を受けた部位の神経末端が脳に緊急信号を送ります。脳がその信号に反応して行うことの一つは、ベータエンドルフィンを分泌することです。この化学物質は、短時間で気分を良くするドミノ効果を引き起こします。しかし、その効果は長続きしません。したがって、自傷を行う方々は、気分を改善しようとするために、自傷をより頻繁に繰り返すことがあるのです。
クリーブランド・クリニックからのメモ
多くの方にとって、自傷行動は理解しにくいものかもしれません。自傷を行う方にとっては、それは気分が良くなる唯一の方法であったり、人生における何かをコントロールする手段に感じたりすることがあります。自分を危険にさらすつもりはないかもしれませんが、自傷には依然としてリスクがあります。自傷は気分を良くするための持続可能な方法ではないため、身体的および精神的な健康およびウェル・ビーイングに悪影響を与えることにもなります。
もし自傷の衝動を感じたり、実際に行っている場合は、助けを求めても大丈夫なのです。自傷のためのケアを求めることは、身体の病気のための治療を受けるのと何の違いもありません。今はそのように感じないかもしれませんが、身体的にも精神的にも、きっと良くなっていきますよ。
特に「へぇ~」と思えることもなかった気もしてしまうものの、やっぱり自傷というのは「愛情が足りない」場合に起きやすいのかな、なんて気がするかもしれません。
まぁ冒頭で書いていた僕の友人の場合、別に愛情に飢えているような男ではありませんでしたし、「自分を許せなかった」とか言って自分を律するために肉体を傷つけるなんてパターンもあるかもしれないものの、でもよく考えたら「彼女と別れて…」とか腑抜けた理由だったわけですし(笑)、キーワードは「愛」なのかなぁって気もしますね。
(…と思ったけど、やっぱり深く愛されてるのに「どうしてもやっちゃう」って子もいましたし、そんな単純なものでもない気もしますね、まぁ世界最高峰の医療機関が断言できていない時点で、当たり前っちゃ当たり前ですが…)
成長とともに治ることも多いようですし、やっぱりしないで済むならしない方がいいことだとは思うので、悩んでいる人は、どうか上手く治ってくれることをお祈りしたい限りです。