オクトフォビアとは一体…?

ここ最近は、閉所恐怖症先端恐怖症という代表的な恐怖症を見てきましたが、他にも前回の記事では注射恐怖症(trypanophobia)が挙げられていましたし、もちろんそれ以外にも、最も代表的な恐怖症と言える高所恐怖症(acrophobia)や、程度の差こそあれ潜在的に人間なら誰しもが感じるのではないかと思えるピエロ恐怖症(coulrophobia)なんかも思い浮かび…

…そこから、「trypano-」は、生命科学だと「トリパノソーマ」というコルク抜きのような形状の寄生虫の一種で有名ですが、まさに「ドリル・錐体」を意味する接尾辞であり、一方「acro-」は「アクロバット」という語にも出てくる通り「高い・頂点」を意味する言葉、そして「coulro-」は、ほぼこの「ピエロ恐怖症」でしか出てこない語のようですけど、語源を紐解くと古代ギリシャ語で「竹馬に乗ってやって来る人」を意味するようで、ピエロの不気味さに通ずるものが感じられますね…

…みたいな、「各恐怖症の、英語の名前をチェックしていこう」ネタも面白そうかなとも思たのですが、まぁあまりに単発豆知識ネタにも程があるのでそれはやめておくとして、他に何か興味深い恐怖症はないかなぁ、と思ってHEALTH LIBRARYを検索してみた所、なんと121記事もの恐怖症記事がヒットしてきました(一部は一般記事に「phobia」という語が出てくるだけっぽいものもありましたが、大半が↓のスクショ画像のように、「〇〇phobia」という、まさに特定の恐怖症に関する記事でした)。

 

https://my.clevelandclinic.org/health?q=Phobiaより

…とはいえ、これもこれで、実際に苦しんでいる人がいるのに、「こんな恐怖症があるみたいっすよ、面白いっすね」とか言うのも失礼にあたるな……とも思えて、あんまり興味本位で取り上げるのもよくないな、恐怖症はこの辺にしておくか…と思ったのですけど、検索結果をつらつら見ていく中で、

「流石にどういうことだ?!全く理解ができない、これは何なのか気になるゾ」

というものが目に付きまして、それがズバリ、先ほどのスクショ画像でも一番上に配置し、記事タイトルにも挙げました、octophobia

 

「octo-」というのは、これはかなり有名な接頭辞と言えましょう、タコさんの「オクトパス」でおなじみ、数字の「8」を意味する言葉で、まさに↑の検索結果にもカッコ書きで書かれている通り、「数字の8への恐怖症」といもののようで……「どゆこと?」と感じるのも納得いただけるのではないかと思います。

 

my.clevelandclinic.org

 

「いや流石に…怖くなんてなりようがないし、それは適当にギャグで言ってるのでは…?」と思えるものの、こうして著名な医療機関が症例として挙げている以上、同じ症状を抱えている人がこの世に複数存在しているのは事実なんでしょうし、拒絶は理解から最も遠い感情と言えますから、ここは記事を見てどんなものなのかぜひ知っておきたい限りです。

 

正直、先二回と似たような恐怖症全般の話に終始する内容な気もしてしまいますが、今回もHEALTH LIBRARY記事を参考にさせていただくといたしましょう。

 

オクトフォビア(数字の8に対する恐怖)(Octophobia (Fear of the Number 8))

オクトフォビア(※以下、「8の字恐怖症」とします)とは、数字の8に対する強烈で不合理な恐怖心のことです。この特定の恐怖症を持つ方は、その数字を見るのを避けるために極端な行為に走ることがあり、もしかしたら家で孤立することさえあるかもしれません。8の字恐怖症に伴う不安により、教育、職責、人間関係、および日常業務に支障をきたすことがあり得ます。しかし、特定の種類のセラピーが効果的な可能性はあります。

 

概要

8の字恐怖症とは何?

特定の恐怖症(不安障害の一種)になると、自分に危害を加える可能性があまりないものを怖がるようになります。8の字恐怖症は、数字の8(はち)に対する強い恐怖です。

8の字恐怖症の方は、数字の8について考えたり見たりすると不安になります。8という数字を避けるために、以下を含む極端な行動を取ることもあり得ます:

  • 住所や道路標識に8がある所には絶対に行かない。
  • スーパーのレシートやレストランの会計の合計金額に8が含まれないように強くこだわる。
  • 8枚のシャツなど、特定のものを8枚所有しないようにする。

数字はどこにでもあるので、8の字恐怖症は甚大なストレスや身体的症状さえ引き起こすことがあり得ます。8の字恐怖症の方は、その恐怖が理に適ったものではないと頭では理解しているかもしれませんが、それをコントロールすることができないのです。人間関係や仕事上の責任、あるいは日常的な仕事(例えば、請求書の支払いや現在時刻の把握など)に支障をきたすこともあることでしょう。

 

数字の8に対する恐怖はどのくらい一般的なの?

8の字恐怖症のような特定の恐怖症を抱える方の数を正確に知ることは困難です。しかし、アメリカの成人の約10人に1人、そしてティーンエイジャーの5人に1人は、人生のどこかで特定の恐怖症に悩まされることが実際に知られています。

 

8の字恐怖症に関連する他の恐怖はある?

8の字恐怖症は、以下を含む、数字にまつわる他の恐怖と関連しています:

  • 数字恐怖症(numerophobia)とも呼ばれる、算数恐怖症(Arithmophobia)
  • 8の字恐怖症よりもアメリカではより一般的な、13恐怖症(Triskaidekaphobia)
  • 悪魔に関連する666という数字に対する恐怖である、悪魔の数恐怖症(Hexakosioihexekontahexaphobia)

 

症状と原因

何が8の字恐怖症を引き起こすの?

医療従事者にも、何が8の字恐怖症を引き起こすのかについて、はっきりとしたことは分かっていません。しかし、多くの場合、以下のような原因が重なって起こると考えられています:

  • 遺伝: 家族に不安症や特定の恐怖症の既往歴を持つ方がいると、何らかの恐怖症になりやすいです。
  • 迷信や文化的意味: 文化によっては、「8」という数字にまつわる物語や伝統が受け継がれています。それはしばしば権力、宗教、神々と関連したものです。8はウィッカの祭典が1年間に開催される数や、ユダヤ教ハヌカの日数を表しています。また、イスラム教やヒンズー教でも重要な意味を持つものです。横向きにすると無限を表すものでもあります。
  • この数字にまつわるトラウマ体験: 8という数字にまつわる嫌な体験の後、8の字恐怖症になる方もいらっしゃるかもしれません。例としては、数学の成績が悪くて叱られたり殴られたりしたとか、住所に8がつく家でトラウマになるような体験をしたとかが含まれます。

 

8の字恐怖症の症状は何?

8の字恐怖症をお抱えの方は、8という数字を考えたり目にしたりすると、不安やパニックの症状を経験することがあり得ます:

  • めまい
  • ドライマウス
  • 極度の恐怖や絶望感
  • 吐き気、嘔吐、または下痢
  • 大量の発汗
  • 呼吸や心拍数の急上昇
  • 動揺や身震い
  • 息切れ

8の字恐怖症はまた、以下のような特定の行動を引き起こすこともあるかもしれません:

  • 道路標識、時計、コンピューター、電話、本、請求書、領収書などを見るのを避ける。
  • 8という数字に遭遇する可能性があるため、学校や仕事をさぼる。
  • 恐怖のために家に閉じこもる、あるいは決して外出しない。

こういった行動は、その人の教育、キャリア、および人間関係にダメージを与え、うつ病や薬物乱用につながることもあり得るものです。

 

診断と検査

8の字恐怖症はどう診断されるの?

8という数字に対する恐怖を診断する検査はありません。しかし、担当医が、患者さんとの以下に関する話し合いに基づいて恐怖症を診断することが可能です:

  • 症状
  • その症状がいつから起こっているか
  • 生活に支障をきたしているかどうか

担当医は、患者さんに以下のような強い恐怖がある場合、8の字恐怖症と診断し得ます:

  • 8という数字について考えたり出会ったりすると、直ちに極度の不安に襲われる
  • 甚大なストレスを感じたり、日常生活に影響が及んだりしている
  • 少なくとも6ヶ月以上続いている
  • 実際の危険とは関係がない
  • 特定の状況や活動を避けるようになる
  • 不安やパニック発作の身体的症状が現れる

 

管理と治療

8の字恐怖症はどうすれば治せる?

8という数字に対する恐怖が身体的症状を引き起こしたり、日常生活に支障をきたしたりしている場合は、かかりつけの医療機関に相談してください。以下のような治療が有効かもしれません:

  • 認知行動療法(CBT; Cognitive behavioral therapy): CBTは、思考や感情を理解してコントロールするのに役立つ、心理療法の一種です。この構造化された対話療法は、否定的な考えや行動を意識的に忘れることに役立ちます。
  • 暴露療法: 時に脱感作療法と呼ばれることもある暴露療法は、少しずつ恐怖に立ち向かうことを手助けするものです。制御された環境の中で、時間をかけて、恐怖の原因となっている数字にまつわる考えに触れていくことになります。曝露療法は、例えば「8」という数字の絵を見るなど、あまり怖くないものから始めていきます。8という数字を想像し、何かを8個持ち、最終的にはその数字を描くように指示されることもあるかもしれません。8という数字に接する機会を増やすことで、特定の恐怖とその症状に対処できるようになるわけです。
  • 催眠療法催眠療法は、被験者を、トランス状態でありながらも集中した状態にすることが可能なものです。催眠状態では、暗示や変化を受け入れやすくなります。催眠療法士は、被験者に、8という数字が怖くなくなったと思わせることが可能かもしれません。
  • 薬物療法: 様々な抗不安薬は、不安やその身体症状を軽減することが可能です。

 

予防

8の字恐怖症のリスクを減らすにはどうすれば良い?

メンタルヘルスの専門家も、8の字恐怖症やその他の特定の恐怖症の原因を完全に理解しているわけではないので、予防するための確立された方法はありません。

しかし、ある特定の恐怖症を持つ方の多くは複数の恐怖症を抱えており、さらに加えてパニック障害強迫性障害(OCD; obsessive-compulsive disorder)といった他の不安障害を一緒に抱えていることも多いです。追加の恐怖症を発症する前に、かかりつけの医療従事者と協力して、最初の不安障害の症状を管理することが重要となります。

 

見通し/予後

8の字恐怖症は根治する?

8の字恐怖症のような特定の恐怖症を根治する方法はありません。しかし、暴露療法は、しばしば他の治療法と組み合わせることで、定期的に実践しているほとんどの方に効果があるものとなっています。

 

受け入れる

数字の8に対する恐怖に対処するためには、何を学ぶのがベスト?

多くの方は、メンタルヘルスのプロと協力し、不安を管理するテクニックを実践することで、8の字恐怖症に対処しています。その方法には以下が含まれます:

  • 呼吸法
  • 筋弛緩(リラックス)法
  • 瞑想
  • ヨガ

 

クリーブランド・クリニックからのメモ

8の字恐怖症は、数字の8に対する、強烈で不合理な恐怖です。不安障害の一種である、特定の恐怖症の一種となります。数字はどこにでもあるため、8の字恐怖症は教育、キャリア、日常生活、そして人間関係に深刻な影響を及ぼす可能性があります。8の字恐怖症やその他の特異的恐怖症がある場合は、かかりつけの医療従事者に治療法について相談してみてください。

 

残念ながら、原因や「具体的に8の何をどう恐怖に感じているか?」などについては「何も分からない」としか言えない感じでしたが、「そういう症例もある」ということで、やはり人間の心は奥が深いと言いますか、よく考えたらピエロとかヘビとか虫とかだって、いわば形として「ただこの世に存在するもの」としては特に8と違いはないとも言えますから、そんなにおかしい話でもないのかもしれませんね。

 

(「いや動物とは違うでしょ」とも思うかもしれませんが、僕は正直、子供の頃、図鑑に写っているヘビの写真のページとか、何か怖くてというか気持ち悪くて触れませんでしたし、それを考えると、動くわけではなく、ただ紙に印刷されたインクの集合体だけでも恐怖の対象になるのは僕自身よく分かりますから、「8という概念や集合体やその形自体が怖い」というのも、十分理解できる気がします。)

 

…と、恐怖症は他にも本当に色々興味深いものがあったものの、概ね似たような暴露療法&CBTが挙げられるだけですしこの辺にして、次回以降はまた別のネタに目を向けてみようかなと思います。

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