それでは予告通り、前回のハート・エフェクトに続きまして、今回はアルコールのブレイン・エフェクト=脳への影響についてまとめてくれているhealth essentials記事(↓)を見ていこうと思います。
前回の記事によると、心臓への影響は、最近盛んに言われるようになった「一滴でも良くない」というのが現在最も確からしいと考えられている説のようでしたけど…
(もちろん「一滴飲んだら即心臓が爆発する」ってわけではないものの、「適量なら直ちに影響はない」というのはお酒好きの方を極度に不安にさせないためのものであって、基本的には「累積的な作用を持つ」という話ですから、例えば3杯飲んだら「3杯飲んだ」という事実が肝臓やら全身の細胞に刻まれ、翌週に2杯飲んだら「(これまでの人生で)合計5杯飲んだ」(前回の3杯が人生初だったのであれば、ですが)という形で、リセットされることなく永久に積み上がり続けるものだというのが現在主流の考え方であり、その意味で「一滴も飲まない方がいい」なわけですね。
とはいえこれまたもちろん、「〇杯飲んだらアウト」というようなラインが引かれているような話でも決してなく、あくまで「病気になる確率がどんどん上がっていく」だけであり、その確率も、人によっては例えば「5万杯到達時点で、心臓がギブアップする確率25%」みたいに(その確率は、体質によるという話ですね)、たかが数杯飲んだところで何がどう変わるわけでもない、というのも、偽らざる事実だとは思います。)
…と補足が長く利ましたが、脳への影響は果たしてどうなのでしょうか?
今回も早速、世界最先端の呼び声高いクリーブランド・クリニックのまとめ記事を参考にさせていただきましょう。
アルコールは脳にどのような影響を与えるのか?(How Does Alcohol Affect Your Brain?)
たとえ1杯の飲酒であっても、認知機能に影響を及ぼし、呂律が回らなくなる、視界がかすむ、記憶が飛ぶといったことにつながり得ます
ストレスの多い一日を過ごしたら、ワインでくつろぎたいと思えるものです。あるいは、友人と出かけて、ビールを数杯飲むこともあるでしょう。
お酒を飲み過ぎると、呂律が回らなくなったり、まっすぐ歩けなくなったりするかもしれません―そして、それは翌日の二日酔いに対処する前にやってくるものです。
しかし、これまで落ち着いてこう考えたことはあるでしょうか: アルコールは脳にどのような影響を与えるのか?、と。
「アルコールを飲むと、少しおしゃべりになるものです。より社交的になり、穏やかになって、気分をリラックスさせてくれることでしょう。でも、飲む量が増えるにつれて―そんなにたくさん飲む必要はないのに―最終的に、アルコールを分解する酵素が限界を迎えてしまうのです。だから、アルコールというものはあっという間に溜まってしまうんですね」と、依存症精神科医のアキール・アナンドMD(医師)が説明しています。
「その後、筋肉の連動が悪くなり、言葉が不明瞭になります。記憶や処理能力に問題が出てきて、失神、意識の喪失、昏睡、さらには死に至ることさえあるかもしれません。そう、アルコール中毒は、人を死に至らしめるのです。」
次の一杯に手を伸ばす前に、アルコールが脳にどのような影響を与えるかについて―短期的だけでなく、長期的なものも―アナンド医師が説明してくださいます。
アルコールが脳に与える影響
(※ここにはアナンド医師が語ってくれているポッドキャスト動画が挟まれていましたが、特に記事以上の内容もないと思うので、例によって動画は省略します。)
では、アルコールは脳にどのような影響を与えるのでしょうか?
「それは性別、年齢、体重など、完全に個人個人に依るものです―がしかし、科学的そして理論的には、アルコールは脳にリラックス作用を与えてくれるものと言えます」とアナンド医師が説明しています。「GABAシステムと呼ばれる系に作用します。アルコールはGABA-A受容体の作動物質であり、この受容体に結合することで、脳をリラックスさせ、安心感を与えてくれるのです。」
では、アルコールは脳にダメージを与え得るのでしょうか?また、アルコールは、脳の発達に影響を与えることがあるのでしょうか?
「皆さん気付いていらっしゃいませんが、アルコールは神経毒なのです」とアナンド医師が続けます。「脳細胞にダメージを与えるので、短期的な影響は非常に危険なものとなるかもしれないものとなっています。長期的な影響もまた、非常に危険になり得るものです。」
そしてアナンド医師によれば、アルコールはGABAシステムに影響を与えるだけではないそうです。
「アルコールは非常に乱暴な薬物なのです。体内にいっぱいあるこの受容体すべてに作用するものであり、過剰な摂取は脳と精神にとって非常に有害です。」
短期的な影響
仲間とビールを1、2杯飲むだけだとしても、アルコールは全身や脳にどのような影響を与えるのでしょうか?短期的には、アルコールは認知機能に影響を与え、以下のような症状を引き起こす可能性があります:
- 言語不明瞭
- 視界のかすみ
- 自制心の欠如
- 疲労感
- 手と目の協調性の低下
- 反応速度の低下
- 平衡感覚の問題
- 記憶および推論の障害
- 錯乱
- 気分の突然な変動
- 吐き気と嘔吐
こういった影響は1杯飲んだだけでも起こり得るもので―しかも、飲めば飲むほどその分大きくなっていくものです、とアナンド医師がおっしゃいます。
「急性のアルコール使用症に関して言えば、最も深刻なのはアルコール中毒です」とアナンド医師が語ります。「しかし、最も一般的なのは、暴飲時のアルコール性失神です。多くの方は、「失神酔い」というとテーブルに突っ伏して記憶がなくなった状態を想像しますが、失神酔いというのはもっと捉え所がないものであることもあり得ます―友人とお酒を飲んでいて、その友人と会話をしたのに、翌日その友人と話した話題を全く覚えていないような場合もそうですね。
長期的な影響
「一般的に、時を重ねるにつれて、慢性的なアルコールの使用―非常に多量に摂取した場合―により、脳の灰白質、白質ともに損傷を受ける可能性があるということが、複数の最新の研究で示されています。アルコールは脳の萎縮を引き起こし、時間とともに脳を縮小させてしまうのです」とアナンド医師がおっしゃっています。
つまり、長期のアルコール使用は、脳の形を変えてしまう可能性があるということです。
「アルコールは脳―灰白質と白質―にダメージを与えるので、認知症につながる可能性があります」とアナンド医師が説明を加えます。「アルコールは、認知症を発症する可能性を高くするのです。また、認知症の原因ともなり得る、脳卒中も増加させる可能性があります。」
認知症だけでなく、アルコールの長期使用は、コルサコフ症候群やウェルニッケ脳症のような、他の記憶障害を引き起こす可能性もあります。
「ウェルニッケ脳症は、錯乱、記憶障害、歩行障害、眼球運動の異常、およびその他あらゆる気分症状が現れるものです」とアナンド医師が話しています。「飲酒を止め、栄養状態を改善し、チアミンを補充すれば、可逆的に回復する可能性はありますよ。」
若い人への長期的な影響
若ければ若い方ほど、脳とその発達に受ける影響も大きくなる―永続的な衝撃を与え得る―ものがあります。
「特に若い内は、脳が大きく変化しています。脳は非常に敏感です。アルコール使用障害を発症する巨大な危険因子は、早期の飲酒開始です。つまり、14歳以前に飲酒した場合、成人後にアルコール使用障害を発症する可能性は、約50%にもなるのです」とアナンド医師が説明しています。
「早期の飲酒開始は、成人後のIQ、記憶力、および思考処理に影響を及ぼす可能性があるのです。」
頻繁な飲酒が体に与え得るダメージは深刻になり得るものですが、場合によっては可逆的なこともあります。
「積極的な永続的ダメージがない場合は、可逆的である可能性はあります」とアナンド医師が続けます。「しかし、ある種のダメージは、可逆的でないこともあるのです。」
アルコールがメンタルヘルスに及ぼす影響は何?
アルコールはリラックス効果があり、最初は気分を良くしてくれますが、慢性的なアルコールの使用はメンタルヘルス上の問題を引き起こす可能性があります。
「アルコールはリラックス剤であると同時に抑鬱剤でもあります。長期間飲み続けると鬱病を引き起こし得、そして急に飲むのをやめると、不安症を引き起こしてしまいかねません」とアナンド医師がおっしゃいます。
「慢性的なアルコールの使用は、慢性的な精神病を引き起こすことさえあり、被害妄想に陥ることもあり得ます。幻聴や幻覚に苦しむ可能性までありますよ。」
助けを求めるべき時
アナンド医師は、全く飲まないまではいかなくとも、適度な飲酒の重要性を強調しています。
「ガイドラインに従ってください: 男性は1日2杯まで、女性は1日1杯までです」とアナンド医師が基準を示してくれています。「暴飲―男性ならその場で5杯、女性ならその場で4杯―は絶対に避けるようにしましょう。」
アルコールの問題を抱えていると感じたら、ためらわずに医療機関にご相談ください。また、薬物乱用・精神保健サービス局(SAMHSA)のホットライン(アメリカ国内番号: 1.800.662.HELP (4357))に、24時間・365日電話することも可能です。
アルコール使用障害は、医学的な疾患―精神的苦痛や身体的危害を引き起こす可能性のあるもの―です。しかし希望はあります。
「もしストレスや不安に対処するためにアルコールを使用していて、外出し、1杯だけ飲むつもりが飲むのを止められないような場合、かかりつけの医師に相談し、専門医を受診することが重要です」とアナンド医師が推奨しています。
「薬物療法だけでなく、様々な治療法があり、それらは本当にアルコール使用障害の患者さんを助けることができるものとなっていますよ。」
一応「不可逆ではない」ものもあるとのことでしたが、「一生もので戻らないもの」もやはりあるということで、怖いですね。
どうか、どなた様もお酒には呑まれないことを願ってやみません。