もういっちょ細かい点の補足

前回はいただいていたご質問&「何となく理解できてきたかも?!」というコメントをご紹介することで、初学者の方が感じがちに思える疑問点モヤモヤポイントをつまんでおこう、などと嘯いていました。

人によって多少形は違えど、初めて聞いた話で混乱したりスッキリしないポイントは概ね似たような部分もあると思うので、この辺は本当に細かく触れるに値する話になっていたと思えるとともに、非常に有意義なコメントを投げていただいているアンさんには重ねてお礼申し上げたく存じます。

で、前回の記事に対してもまた改めていくつかコメントをもらっており、当然のごとく触れておく価値のあるポイントがいくつかあったように思えたので、また取り上げさせていただくとしましょう。

というわけで、以下引用部が、前回同様もらったコメを適宜一部改変したものになります。

次の「RNA→タンパク質」の合成ステップ…うーん、これはマジでヤバそうだねぇ。これもうパッとわからない気しかしねぇぞぉ?

で、なぜ60でなく64→20なんすかね?何か前後に必要とかあったんだったかなぁ…?(すぐ忘れる)

⇒こちらは、「DNA→RNAは1対1対応だけど、RNA→タンパク質は64→20」という前回の説明を受けてのものですが、書いた後、初稿では何も補足を入れていなかったので、これはちょっと説明が足らんかったかなと思い、申し訳程度に「3塩基の集まり=コドン」的な補足を後から加えていたんですけど、恐らくアンさんは説明ゼロの初稿をご覧になっていたのかな、と思います。

まぁその補足すら不親切だったので改めて触れておくのでちょうどいい感じですが、これは、4種類の塩基が3つ並んでコドンを形成するので、4×4×4=64という話ですね。

もうちょい丁寧にまとめ直しておくと、

  • DNA→RNAはA⇒A、C⇒C、G⇒G、T⇒Uという、1塩基が1塩基に対応しているだけの、いわば単なる完コピするだけなので仕組みも単純
  • でもRNA→タンパク質は、3塩基コドンNNN⇒アミノ酸X(例:AUG⇒M(Met:メチオニン)など)なので、単純に64種類の異なるものを認識し、20種類のアミノ酸(+アミノ酸なしのストップ)に変換する必要があるという、めちゃんこ複雑な仕組み

…ってことですね。

ちなみに64種類については、コドン表としてまとめられるもので、検索すればどこにでも至る所でみつかるアレになります。

せっかくなので、今更ですがまた改めて貼っておきましょう。

検索したら最初にヒットした、試薬・実験機器最大手の一角ナカライテスクからの引用になります。

f:id:hit-us_con-cats:20211027060826p:plain

https://www.nacalai.co.jp/information/trivia2/09.htmlより

なお、このナカライのコドン表は「DNAの遺伝暗号表」としてTAGCで表記されている形ですが、これはDNAとRNAは1対1関係にあるからT(DNA)を使ってるだけで、実際にコドンとして使われるのはRNAのUの方ですね。

でも、実際の実験でいじるのはDNAが多いですし(ソーマチン遺伝子をプラスミドに入れるとか)、僕自身も、コドン表はTで書かれていた方が何となくしっくりきます(改めて、TとUは同じものとみなせばいいだけなので、本質的には全く同じものですけどね)。

ちょうどまさにこれと関連した点のご質問をいただいていました。

 

続いての、アミノ酸を運んでくる「分子」についても、詳しくはこれからってことでよかったんだね。

ちなみに、読まれるコドンがRNAってことは、(RNA→タンパク質って書かれてるし)一応わかってるつもりなんだけど、そうなってくると、DNAのコドンを読むことってあるんかえ?それはどんな時?

⇒今しがた触れていた通り、実際にコドンとして読まれてアミノ酸が直接対応しているのはRNAの方であり、「コドンが読まれる分子も、コドンを読んでアミノ酸を運んでくる分子も、実はどちらもRNAである(前者がmRNA、後者がtRNA)」というのが前回のおさらい…というかまた近い内に触れる予定のネタということですね。

一方ご質問のDNAのコドンは、こちらは「RNAのコドンになる」(=転写反応でmRNAを合成する際の鋳型となる)以外に使われることはありません

ここは絶対で、DNA→RNA→タンパク質の、矢印を飛ばして「DNAのコドンが読まれて直接タンパク質が合成される」という反応は、今の所、あらゆる生物・生体分子を見回しても、一例も知られていない感じになります。

もしDNAから直接タンパク質を合成できる仕組みが見つかったら……まぁ凄い発見ですけど、「ほ~ん、で?」というか、特にパッとはいい応用例が思いつかない感じかもしれませんね(でも、生命科学の歴史が塗り変わるぐらいの、世紀の大発見には違いありません)。

 

そして、今ちょっと思ったんだけど、自分でも書いた「アミノ酸を運んでくる」ってとこ!!RNAコドンが指定してるアミノ酸を、「分子」が運んできて、それを合成すれば、タンパク質の出来上がり?!

細かいイメージの違いでしかないんだけど、、

そう、「RNA(分子)がアミノ酸になって、タンパク質になる」じゃなくって、

RNAの分子が(コドンで)指定するアミノ酸を、(どないかして←まだ謎)合成すると、タンパク質ができる」…って、ちょっと矢印っていうか、流れが見えた気がしてきたぜぇ~い?!(今?)

合ってるよね?…ていうか、いやこれ伝わるかなぁ…?

⇒「RNAがグニョグニョ~と形を変えられて(…っていうイメージをもたれていたかはともかく)アミノ酸に変身する」ではなく、「RNAのコドンを基に、そこで指定されているアミノ酸が次々と届けられてつながっていく」というイメージをもつことに成功していたら、それで完璧ですね!

結局改めて、「DNA→RNA→タンパク質」という表記や、「変換されて…」という表現の仕方がややあやふやなものだった、ってのが誤解を招く感じだったのかもしれません。

この、生体反応ならびに生命科学で一番断トツで重要である、転写(DNA→RNA)と翻訳(RNA→タンパク質)という反応は、どちらも「1つ前の分子をもとに、その配列に対応した新しい分子を合成する」という形になってる、ってことが最重要ポイントで、そこをもっと最初から強調して伝えた方がよかった、といえそうです。

(あまりにも慣れすぎて当然なものと感じてしまう話だったのでそこに考えが及びませんでしたが、冷静に考えたら、そういう「1つの分子が形を変えていく」と誤解して受け取ってしまうのも、ごく自然な捉え方だと思います。)

しかし恐らくここまで読まれた方にはもう完全に伝わってるかな、と思えるポイントですね。


ただ1点、流れの解釈はまさにその通りなんですが、これも細かい言葉の解釈というか重箱の隅をつつく感じの話ですけど、「RNAを合成する」「タンパク質を合成する」はいいけれど、(コメント内で書かれていた)「アミノ酸を合成」はちょっと変な感じがしますね。

これは、正確には「(アミノ酸をつなぐことで)タンパク質を合成する」であって、アミノ酸はいわば材料です。

ヌクレオチドをつないでDNAやRNAが合成される」であって、「ヌクレオチドが合成される」というのはおかしいのと同じですね(ヌクレオチドは周りに既に存在しているやつがつながれていくだけで、これが合成されるわけではない)。


…って、これはちょうど前回「(アミノ酸の一種である)トリプトファンを合成する酵素」がtrpオペロンで出てきたばかりだったので、「いやアミノ酸も合成されとるんじゃん」って話だったかもしれないんですけど、実際アミノ酸も他の生体分子から合成はされるわけですが、ここで気になったというか指摘しているのはそういうことではなく、「(RNAが指定する)アミノ酸を合成」という文脈はおかしい、ってことですね。

繰り返しですが、先ほどの文脈なら「(RNAが指定する)タンパク質を合成」でなくてはいけない、って感じです(この反応で合成されるのは、アミノ酸ではなくタンパク質だから。アミノ酸は、材料としてつながるだけの物質)。

(もちろんヌクレオチドアミノ酸自身も生体分子なので、そいつらだって他のもっと単純な分子から合成されることはあるんですけど、それは「DNA→RNA→タンパク質」という流れの話とは全く別物、ということ。)

trpオペロンのON OFF逆の話…マジで全く頭に入ってこんかった…。ポンコツだな笑

前のコメントで質問した「なぜ分解酵素じゃないの?」というのは、ただ単純に「分解酵素だったら(逆じゃなく)同じだったのにぃ!」って思っただけなので、「逆のパターンの制御はなぜ分解酵素じゃないの?」という質問ではなかった感じだったような気も…。ま、それを踏まえて読んでも、やっぱりわからないんだけどね。残念。

まぁでも、逆の仕組みもなんとなくイメージはできたと思うので…

「なんで逆やねん!ややこしやん!」って心の声が漏れた形になっとった感じよ笑

後半の話は…あ、そーだったそーだった。ラクトースは糖って、見覚えあるね。でも、トリプトファンはタンパク質なんか。それって、同様のオペロンで同じような働きをするように見せかけて、そんな微妙なとこで違ってくるとは、これまた「なんでや!?」だわね。まぁ、「小分子」って括りでいいってことなのかな?ちょいモヤではあるけど笑

⇒あぁ、前回ラストに書いてた「trpオペロン、なぜ?」のご質問は、まぁ書いてて「そういうことじゃないよな…」とうっすら感じていたというか、無駄にややこしいだけの話になってしまっていたので、あれはスルーで問題ないでしょう。

長いだけでいうほど意味のある話になってなかったというか、書いてて「何言ってんだコイツ?」とか自分でも思ってましたしね(笑)。


一方、最後のコメント、「トリプトファンはタンパク質」というのは……まぁ完全に間違いとはいえないけれど、やっぱり正確ではなく、トリプトファンアミノ酸ですね。

改めて、20種類のアミノ酸が大量につながったものがタンパク質なので、トリプトファンはタンパク質に含まれるとはいえるけれど、これ自身をタンパク質といっちゃうのはちょっと語弊がある感じといえましょう。

…まぁ正直ぶっちゃけ、そういう細かいことにいちいち突っかかるからやる気なくすんだよ、それでも通じるし、そもそもそんなん学びたての頃によくあるただのチョイミスだろ……って気もするんですけどね。

一応あやふやになりがちなポイントでもあるし、念のため指摘してみた、って所でした。


ちなみに、同じオペロンなのになぜ…ってポイントに関しては、そもそもなんでラクトーストリプトファンの2つだけがめちゃんこ有名なオペロンとして知られているのかとかも、完全に謎といえますね。

他の知られているオペロンとして、lac・trp以外に名前だけは挙げていた残り3つも、何気にちょうど糖かアミノ酸かに関する遺伝子でそれもやや不思議というか面白いポイントですけど、「何で別のアミノ酸や糖じゃなくてその5つなのか?」とか、「なぜヌクレオチド合成はオペロン制御されていないのか?」とかは、まさしく「大腸菌の勝手でしょ」という、誰にもその理由は分からない感じとしかいえない感じですかね。
(そもそも知られていないだけで、もしかしたら他にもオペロン制御されている遺伝子も……まぁ大腸菌は全ゲノムが解読されてるし多分なさそうですが、似たようなあんまり調べられていない細菌とかでは、普通にあるかもしれないというのも否定できない話といえますね。)


そうですねぇ、話に出したついでに、今回はちょっとした点に触れるだけで短い記事になるので、せっかくだから名前しか出していなかったその他のオペロンについて、もう1つぐらい見てみましょうか……と、記事を書く前は思っていてタイトルもそれ用につけていたのですが、フタを開けてみたら、既にクッソ長くなっていた…!

まぁ、とかいって前回はこの倍ぐらいの長さの記事だったんですけど、前回は一連の流れがある内容だったけれどその他のオペロンを見るのはまた全く別の話題になりますしね、一旦区切りをつけるとしましょう。

ということで次回、またちょっとした脱線ですが、案外見ておく価値はありそうかなと思えてきた第3のオペロンを垣間見てみる予定です。

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