前回の「スラッギング(ワセリンを塗りたくって水分バリアを作る)」に続き、今回も世界最高峰の医療機関の呼び声高いクリーブランド・クリニックが取り上げている美容ネタを見てみようと思います。
今回は、ヒアルロン酸のペン型リップフィラー(充填剤)について!
美容医療の主役級の存在として確固たる地位を築いているヒアルですけど、これまで何度か登場してきた美容ネタでは、普通に肯定的に取り上げられていた気もするものの…
(この辺が一例ですね↓)
…今回の記事タイトルには「?」マークはなく、「ヒアルペンフィラーの危険性」という言い切り型になっていますから、どうやらこれはあまり良くないもののようですね。
どんな感じなのか、早速参りましょう。
ヒアルロン酸ペンによる唇へのフィラー注入の危険性(The Dangers of Hyaluron Pen Lip Fillers)
あざ、傷跡、および感染などのリスクがあるため、こうした針なしフィラーの使用は避けるべきです
DIYプロジェクトが好きではない人なんていないことでしょう。キャンドル作りから木工まで、人生には自分の手を動かしながら学んで楽しめることが沢山あります。こうした趣味は楽しくて役に立ち、リスクも少ないものですが、中には専門家に任せた方が良いこともあります。特に体や健康に関わること―中でも顔に関係する美容処置については「言うまでもないこと」です。こういった場合は、プロの手に委ねるのが最善です。
ヒアルロン・ペンはコロナ禍の最中に人気が高まりましたが、美容外科医、皮膚科医、およびスキンケアの専門家たちはその使用リスクについて警鐘を鳴らしています。この家庭用リップ盛り用製品は―驚くべきことにインターネット検索で容易に市販品が見つかるものですが―わざわざ美容外科や皮膚科に行く必要なしに、針を使わず手軽に唇をふっくらさせられる、と謳っているのです。
「TikTokの動画で見たり、友達の友達が『うまくいった』という話を聞いたりして、ついやってみたくなる気持ちは分かります」と美容外科医のマーティン・ニューマンMD(医師)がおっしゃっています。「残念ながら、他の人がうまくいったからといって、十分に調べずに安易に手を出してしまうのは危険です。」
そこでニューマン医師が、ヒアルロン・ペンを使う際に注意すべき理由―そして美容処置を安全に受けるために考慮すべき点について説明してくださいます。
ヒアルロン・ペンはどう機能するの?
ヒアルロン・ペンは、針を使わずに圧縮空気の力でヒアルロン酸を皮膚奥深くの組織まで押し込む装置であり、これにより、唇をふっくらと見せる効果を狙うものです。この仕組みは、ワクチンやインスリンの投与などに使われるハンディ型のジェットインジェクターをモデルにしているとされています。
従来型のリップフィラーでは、注射器と針を使ってヒアルロン酸―美容医療の分野でよく使われる代表的な成分―を目的の部位に注入していました。「皮膚の下にボリュームを与えたり、シワを埋めたりするために、様々なフィラー素材が使われています」とニューマン医師が説明を続けます。「その中でも最も一般的なのがヒアルロン酸です。」
一方、ヒアルロン・ペンの製造元は、従来の注射器と針を使わずに、同じヒアルロン酸を高圧の空気またはバネ仕掛けのピストンを用いて唇の皮膚や粘膜に押し込むことで、同様の効果が得られると主張しています。
「この装置は、基本的に注射器状のチューブにヒアルロン酸を入れて使用するものです。片側を唇に押し当て、反対側から高圧をかけてヒアルロン酸を押し出す―要は、皮膚から浸透させて目的の部位へとヒアルロン酸を送り届けようとしているわけですね」と、ニューマン医師がさらに説明を続けます。「その圧力で皮膚を突き破り、成分を体内に送り込むというコンセプトなわけです。かなり乱暴な方法に思えますね。」
ニューマン医師がこの装置を好んでいないだけに思えるかもしれませんが、ニューマン医師だけではありません。同じようにこの装置のヒアルロン酸輸送効果に懐疑的な専門家は他にもいます。そもそもこの装置は、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認も受けていないのです。
「まず本当に疑問に思うべきなのは: フィラー物質―ゼリーのような粘性のあるジェル―を、一体どうやって皮膚の中に押し込めるのか、ということですよね」とニューマン医師が付け加えています。
ヒアルロン・ペンに関するリスク
皮膚は身体の中で最も大きな器官であり、当たり前のものと思ってはいけないことを忘れないようにしてください。皮膚は、多くのこと―アザやシミ、それから蚊に刺されることなど―に対処できるように感じるかもしれませんが、非常に傷つきやすいものでもあるのです。
以下が、ヒアルロン・ペンの使用にまつわるリスクと危険性です:
FDA未承認
2021年10月、FDAは、ヒアルロン・ペンのような、針を使用しない器具に関する公式警告を発表しました。この声明では、このような器具は適切にテストされておらず、感染症やアレルギー反応などの副作用を引き起こす可能性があるため、使用しないよう強く勧告がなされています。
声明の一部にはこう書かれています:
「FDAは、針のない器具、およびこれらの器具で使用するための唇や顔用のフィラーが、一般消費者向けにオンラインで直接販売され、その使用が唇のボリュームを増やす、しわの見た目を改善する、鼻の形を変える、およびその他同様の処置のためにソーシャルメディアで宣伝されていることを認識しています。FDAは、どのような皮膚フィラーの注入においても、針を使用しない器具の安全性と有効性を評価していません。」
施術が難しい
リップ盛りに関する記事やブログ、そしてスキンケアフォーラムの全てを読んだとしても、このような施術を行う資格はまだ認められません。
「私が懸念しているのは、この施術がコントロールできないことです」とニューマン医師が警告しています。「このような施術を行う場合、どこに、何を、どれだけ注入するのか、綿密にコントロールする必要があるのです。」
こういった器具による投与は、その性質上、「ペン」が思い通りに動かない危険性が大きいです。それどころか、結果にばらつきが生じたり、もっともっと悪い結果を招いたりする可能性さえあるとニューマン医師が指摘しています。
「この装置は、丸い穴に四角い釘を刺そうとしているようなものなんです」と語るのはニューマン医師。「こういった装置は、水性あるいは脂性薬剤や予防接種に有効であることが証明されている、確立された薬物輸送システムを利用して、皮膚や粘膜にゲル状物質を押し込もうとしているのです。」
「対象部位に外傷を与えるだけでなく、皮膚は人それぞれ違うので、浸透の深さや投与量、それから個々の結果をコントロールすることができません」とニューマン医師が続けています。「自分で出来るコントロールは、せいぜい最小限のものです。このような知識を念頭に置けば、どのような問題が生じ得るかは明らかですね。」
非医療用ヒアルロン酸
ヒアルロン酸は皮膚フィラーによく使われる素材ですが、だからといって全てのヒアルロン酸が同じように作られているわけではありません。だからこそ、これらの機器に関するもうひとつの懸念として、「ペン」に供給されるヒアルロン酸のタイプが挙げられます。
ヒアルロン酸が病院の診察室で使用される場合、そのヒアルロン酸はテストされ、FDAの承認を受け、担当医によって特定の処置に使用される最良の種類の材料として選択されているという合理的な期待が可能です。しかし、オンラインで購入した場合、何が手元に届くのかの保証は一切ありません。
深刻な合併症と副作用
ニューマン医師によれば、美容施術に関しては、常にリスク、メリット、および選択肢を考慮し、天秤にかける必要があるとのことです。しかし、上述の理由から、ヒアルロン・ペンは物凄く高いリスクを伴う可能性があるわけです。加えて、このような非処方タイプの器具は、しばしば医療関係者以外が、通常は医師の監督なしに自宅で使用するため、合併症に気付かず、かつ/または治療されないまま、永久的な変形につながる可能性があると言えます。
ヒアルロン・ペンの使用により起こり得る合併症には以下が含まれますが、これに限定されるものではありません:
- 出血
- あざ
- 腫れ
- 著しいバランスの崩れ
- 瘢痕形成
- 永久的な色素変化および皮膚の変色
- 感染
- 血管の閉塞による組織死(壊死)、失明、または脳卒中
- 圧迫による目の損傷
- 皮膚内のしこり形成
- アレルギー反応
リップフィラーは医療専門家に任せるのがベストな理由
ペースの速いSNSの世界では、隔週で新しいスキンケアや化粧品の広告を目にする可能性があります。そして、高額な施術を自宅にいながらほんのわずかな費用で受けられるという興奮に振り回されがちです。しかし、ヒアルロン・ペンの場合は、単純に、真実であるには話が良すぎる、という典型的なケースと言えます。
こういった装置を検討している理由の一つは、それが既に使われていると聞いたから、という可能性が高いのではないでしょうか。「本当に火に油を注ぐのは、他の誰かがやって、良い結果が得られたという事実です」とニューマン医師がおっしゃっています。
しかし、友人が良い経験をしたからといって、あるいは好きなインフルエンサーがヒアルロン・ペンの結果を自慢しているからといって、あなた自身が同じ結果を得られるわけでも、安全に使えるわけでもありません。
そうではなく、リップまたは皮膚フィラーに興味があるなら、最良のアプローチを推奨し、安全な環境で承認された製品を投与できる形成外科医や皮膚科医に相談するよう、ニューマン医師がアドバイスしています。
「一度このことを調べれば―それほど深く調べる必要もなく―このペンが最良かつ最も安全な選択肢ではない可能性が高いことに気付くのではないでしょうか」とニューマン医師が繰り返し強調しています。「もし皮膚フィラーや同様の施術を試したいのであれば、十分な訓練を受けた専門家の専門知識に頼ることが本当に重要です。」
あなたの肌―そしてあなたの笑顔―は、そのことに感謝することになるでしょう。
何てこたぁない、ヒアルロン酸自体が悪いのではなく、「怪しげな注入装置が危険」という、それだけのお話でした。
とはいえ、例えばよく見ていて信頼しているインフルエンサーがお勧めしていたら、手を出しちゃう人もいそうな話ではありますね。
FDAと現場の医師からけちょんけちょんに言われているヤベェ器具だけに、流石にオススメする人はいないことを願いたいですが、美容医療関係はやはりしっかり調べてから手を出すべきだという良い教訓と言えそうです。
そもそも日本ではまだ出回っていないのかな…と思いきや、「ヒアルロンペン」で検索したら日本語でもそこそこの数の商品がヒットしてきたので、これは気を付けたい限りだと言えましょう。
