それでは、歯ブラシのお手入れ法という脱線記事を経て、前々回の歯磨き粉記事やその他口腔衛生記事で何度も触れられていたフッ素、こいつは一体何者なのかについてのHEALTH LIBRARY記事(↓)を見ていこうかなと思います。
「何者なのか」と言っても、「電気陰性度が全元素中最大な、原子番号9のハロゲンでぇ~」とかいう化学ケミストリーな話は誰も求めちゃいませんし、こちらは医療記事ですから、「医学的に、人間にとってどういう意味を持つものなのか」というまとめですね。
↑のサムネイル画像からも窺えますが、やはり歯、何と言ってもフッ素というのは歯を健康に保ってくれるありがた元素というのがその全てと言えそうです。
今回も早速参りましょう。
フッ素化合物(Fluoride)
フッ化物(※Fluorideは厳密にいえばフッ素化合物=フッ化物ですが、長ったらしいので、以下「フッ素」としようと思います)は、多くの食品や水に天然に含まれるミネラルで、虫歯予防に役立つものです。フッ素は初期の虫歯を元に戻し、歯のエナメル質を再石灰化します。フッ素は大量に摂取すると有害ではありますが、歯磨き粉やマウスウォッシュのような市販品に含まれるフッ化物の量は少ないため、有毒レベルに達することは困難です。
概要
フッ素とは何?
フッ素は多くの食品や水に見出される天然由来のミネラルです。歯科では、歯を強くし、虫歯のリスクを減らすために、医療従事者がフッ素を使用しています。
(※この4項目の効果は後ほど本文で出てくるため、日本語はそちらをご参照ください。(ほぼ全て既に述べられてはいますが(笑)))
フッ素は何をするの?
日々、エナメル質(歯の外側の保護層)はミネラルを得たり失ったりしています。酸―細菌、歯垢、糖分から口の中で作られるものです―がエナメル質を攻撃することでミネラルが失われます。(この過程が脱灰です。)ミネラル―フッ素、カルシウム、リン酸など―を含む食べ物や水を摂取することでミネラルが増加します。(この過程が再石灰化です。)
虫歯というのは、再石灰化が十分に行われず、脱灰が過剰に起きてしまった結果なのです。
歯科用フッ素はエナメル質を酸の攻撃に強くすることで虫歯を予防します。また、初期の虫歯も元に戻します。
歯科で使用されるフッ素の種類
多くの食品や水にフッ素が含まれています。フッ素入りの歯磨き粉やマウスウォッシュも購入可能です。低濃度のフッ素入りであれば、マウスウォッシュは市販されています。液体や錠剤のより強力な濃度のものは、医療従事者からの処方が必要です。
歯科医にも、フッ素を以下の形で歯に塗布してもらうることが可能です:
- フォーム(泡状)、これはカスタムトレーに分注し、歯に覆い被せられるものです。
- ワニス(樹脂)、これは歯に直接塗られます。
- ゲル(ジェル・ゼリー状)、これは歯に塗るか、カスタムトレーに分注されるものです。
フッ素摂取が最も重要な年齢はいくつ?
生後6ヶ月から16歳までの乳幼児と小児は適切な量のフッ素を必要としています。発育中の歯は、萌出歯(既に生えている歯)と同様にフッ素の恩恵を受けます。
アメリカ歯科医師会(ADA)は、乳幼児と小児におけるフッ素の過剰摂取に注意することを奨励しています。ADAは特に、フッ素添加水との混合が必要な濃縮液や粉ミルクのような、再構成液体ミルクを避けることを推奨しています。
代わりに、ADAは、母乳、すぐに与えられるタイプの粉ミルク、またはフッ素を含まない水と混ぜた調製粉ミルクを推奨しています。こういった推奨は、エナメル質フッ素症―子供の発育期に、仮に歯が歯茎から萌出する前であっても、歯のエナメル質に現れることのある微かな白い筋―を予防するためのものです。
幼児に対しては、ADAは以下のことも勧めています:
- フッ素入りの歯磨き粉は、小豆大の量を毎回使用する。
- 歯磨き粉を飲み込むのではなく、吐き出す。
- 6歳未満の子供には、歯科医やその他の医療従事者に勧められない限り、フッ素入りマウスウォッシュを使用させない。
- 生後6ヶ月未満の子供には、フッ素入りの栄養補助食品を与えない。
大人にもフッ素は有効なの?
はい、大人にもフッ素は有効です。特に以下のような方は、フッ素による効果が大きいかもしれません:
- ドライマウス(口腔乾燥症)は、いくつかの健康疾患(シェーグレン症候群など)や特定の薬剤(アレルギー薬や抗ヒスタミン薬など)の副作用としてよくみられるものです。唾液(つば)には、食べかすや細菌を洗い流す働きがあります。唾液の分泌が少ないと、歯周病や虫歯のような口腔内の健康問題が起こりやすくなるわけです。
- 歯周病は歯と歯茎を細菌にさらすもので、虫歯のリスクを高めます。
- 虫歯の既往歴がある場合、通常、フッ素塗布が有効です。
- クラウン(単冠)、ブリッジ(連結冠)、歯列矯正具、または取り外し可能な部分入れ歯を使用している場合、特に歯列矯正のブラケット周辺やクラウンと歯の境目は、虫歯のリスクが高くなるる可能性があります。
処置の詳細
フッ素塗布では何が行われるの?
歯科医師または歯科衛生士が、定期的な歯科検診やクリーニングの際にフッ素治療を行うことがあります。フッ素のジェル、フォーム、ワニスが歯に塗られることになるでしょう。通常、フッ素治療にかかる時間は5分以内です。
リスク/メリット
フッ素の健康効果は何?
フッ素は歯を強くし、虫歯のリスクを約25%減少させます。
具体的には、フッ素には以下のような効果があります:
- 歯のエナメル質を再石灰化する。(Remineralizes your tooth enamel.)
- 初期の虫歯を元に戻す。(Reverses early tooth decay.)
- 脱灰のプロセスを遅らせる。(Slows down the process of demineralization.)
- 虫歯の原因菌の繁殖を防ぐ。(Prevents the growth of cavity-causing bacteria.)
フッ素は有毒なの?
適切に用いれば、フッ素は安全で効果的です。しかし、高用量では危険になり得ます。(「有毒」な用量は、その人の体重によって異なります。)
親御さんでしたら、お子様がフッ素を使用する様子を監督することが重要です。以下、役に立つヒントをいくつかご紹介します:
- 味のついた歯磨き粉は避ける。(子供は味のついた歯磨き粉を飲み込みやすいです。)
- フッ素入りの歯磨き粉は、子供の歯ブラシには小豆大の量しかつけない。
- 6歳未満の子供にフッ素入り歯磨き粉を使うのは慎重に。(6歳未満の子供は歯磨き粉を吐き出さずに飲み込んでしまう可能性が高いです。)
市販品のフッ素濃度は低いため、危険なフッ素濃度に達することは非常に難しいと言えます。しかし、心配な場合は、かかりつけの歯科医、小児科医、またはプライマリ・ケア・プロバイダー(PCP=アメリカのかかりつけ家庭医)に相談してください。
フッ素にリスクや副作用はあるの?
フッ素の最も一般的な副作用はフッ素症(フッ素による歯の変色)です。フッ素症の方の歯には、薄い白色から濃い茶色にわたる斑点ができます。このような斑点は通常、歯の発育中、通常は6歳以下の子供に生じます。
フッ素症は、井戸水に含まれるような自然界に存在するフッ素を摂取することによって起こることがほとんどです。井戸水を使用している場合は、サンプルを検査することで水中にどの程度フッ素が入っているかを調べることができます。
フッ素症をブラシで除去することはできませんが、歯科医が特別な漂白法で対処することは可能かもしれません。専門的なホワイトニングが上手くいかない場合は、デンタル・ボンディング(歯科接着法)やラミネート・べニア(セラミックの薄片を貼る施術)を選択することが可能です。
回復と見通し
フッ素治療はどのくらいの頻度で受けるべき?
この質問に対する回答は、患者さん独自の口腔衛生のニーズによって異なります。多くの方は半年に一度のフッ素塗布が効果的です。虫歯になりやすい方は、もっと頻繁にフッ素を塗った方がよいかもしれません。ご自身に合った方法を見つけるには、かかりつけの歯科医にご相談ください。
その他のよくある質問
フッ素の量はどのくらいが適切?
フッ素の最適レベルは0.7 ppmです。これはフッ素添加のある地域の公共水道に含まれる量です。
水道水のフッ素濃度はどこで調べられるの?
お住まいの地域の保健所または水道業者にお問い合わせください。ご使用の水道水にどれくらいのフッ素が含まれているか教えてくれます。アメリカでは、公共水道を利用している方の約74%が、水中のフッ素濃度は十分なレベルとなっています。
フッ素は体にどんな影響を与えるの?
フッ素を摂取すると、腸がフッ素を吸収し、残りが骨と歯に蓄えられます。吸収されなかったフッ素は、おしっこをするときに体外に排出されます。
フッ素の長所と短所は?
歯科用フッ素を使用するメリットには、より強いエナメル質と、虫歯からのより良い保護が含まれます。しかし、大量のフッ素は毒になり得ます。また、フッ素による歯の変色(フッ素症)を引き起こすこともあるかもしれません。適切な量のフッ素を摂取する方法は、かかりつけの歯科医にお尋ねください。
フッ素は歯に良いの?
はい。適切に使用すれば、フッ素はエナメル質を強化し、虫歯のリスクを減らす最良の方法の一つです。お勧めの製品やフッ素塗布治療の頻度については、かかりつけの歯科医にお尋ねください。
クリーブランドクリニックからのメモ
フッ素は、水や多くの食品に天然に含まれているミネラルです。歯科医は、歯のエナメル質を強化し、虫歯のリスクを減らすために、フッ素の力を利用しています。多量のフッ素は危険になり得ますが、適切にフッ素添加された水やフッ素を含む市販の製品では、有毒レベルに達することは非常に困難です。詳しくはかかりつけの歯科医に相談し、専門的なフッ素治療が必要かどうか判断してもらいましょう。
非常に分かりやすい内容だったというか、とにかく歯に良い、人類の味方といえる元素ですね。
もちろん、フッ素の反応性の高さは塩素や酸素以上ですし、大量摂取が危険なのは言うまでもないわけですが、「歯磨き粉を何かの拍子に飲んでしまった!」ぐらいでいきなり何か健康被害が生まれるわけはないので、過度な心配は無用だといえましょう。
(もっとも、「これが美味しくてさ…」とか言って歯磨き粉チューブからちゅぅ~っと毎日数本レベルで消費するとかすると流石にヤバいと思いますけど、そんな人はフッ素以上にもう何かがヤバいので(笑)、普通の人にはフッ素は味方と考えて問題なさそうですね。)
口腔ネタもそろそろ目ぼしいものはなくなってきましたが、もう少し適当なものを見繕ってみようかなと思います。