それでは今回は、こないだの「嘘つきの舌」こと「一過性舌乳頭炎」の記事…以外にもまぁ最近見ている舌関連記事で何度もでてきていましたけど、舌の突起に含まれているという、味蕾について!
新年早々、未来を感じる話でおめでたいですが(別に名前の音が同じなだけで、1ミリも味蕾に未来は感じませんけど(笑))、サムネイルでも表示されている、この舌をべーっと出して甘味やら苦みやら酸味やらが示されたイラストを見ると、僕は小3か小4の頃の自由研究を思い出しますねぇ~。
なんてことはない、今でこそ曲がりなりにも研究職に就いて生命科学の研究をしていますけど、子供の頃は図画工作とか自由研究とかそういうのは自由意志を反映させて何かを作るものは一体何をすればいいのか全く分からず(図工はともかく、自由研究とか1秒もまともな指導がないですしね)、当時親が毎月買ってくれていた「小学〇年生」の付録にあった「オススメ夏休みの自由研究」みたいな小冊子に挙げられていたのを、イラストから何から完全に丸パクリし、臆面もなく模造紙にデカデカと描いて提出した、っつうそれだけなんですけどね(笑)…
…幸いにして、既に僕の子供の時点であまりそういう学習誌は読まれなくなっていたのか、誰かと被ることもなく、「パクリだ!」と言われることもなかったものの、しばらく張り出されている間、パクっただけのベェっとしている図がデカデカと並んでいるのを目にする度に、陰で「あれ、小学〇年生に載ってたのそのまんまだよ…」と言われてやしないか何だか勝手に恥ずかしくなり、幼いながらに「ズルはダメだな」と気付かされて印象に深く残っているものなのでした。
とはいえ、内容としては、「舌は、部位ごとに感じる味が違う!」というもので、今でも覚えてますけど、
「甘い:舌の先っぽ、しょっぱい:その両脇、酸っぱい:奥の方の横、苦い:奥、うまい:中央」
…で、実際に試してみて、
「本当だ!先っぽは甘味を強く感じるし、奥は何でも苦くなるし、横は酸っぱさが強烈になるね!」
…と一応ちゃんと自分で実践はして納得はしており(それが面白かったから自分の発表に採用したというのもありますが。ちなみに旨味だけは、未だによく分からない(というか、それを別の味とするなら、他にも「別の味」に分類できそうなのはありそうな気がする)ので、これは自分ではイマイチ分からなかったものの、付録に書かれてたまんまパクりました…いや分からなかったので、そこは省略したかもしれません(笑))、パクって一人で勝手に恥ずかしい思いをしてたのも、逆に言えば今でも内容まで強く記憶に残っていることにつながったとも言えますし(他の学年でやった自由研究なんて、もう何書いたかすら覚えてませんしね)、案外それはそれで意味のある経験だったのかもしれません。
…と、どうでもいい昔の思い出になりましたが、そこそこ長い記事(…ではないかもしれないものの、極めて短くはなさそう)なので、HEALTH LIBRARY記事の方に早速参りましょう。
味蕾(Taste Buds)
味蕾とは、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味を含む味覚を感じることができる、舌にある細胞です。味蕾は約10日ごとに再生するため、味蕾が傷付いても通常、自然に修復されます。
概要
(※各乳頭部位の専門語は、以前も出てきましたが、本文で登場する際に英語も併記しておくので日本語はそちらをご参照ください。)
味蕾とは何?
味蕾は、味を感じるための小さな感覚器官です。舌乳頭と呼ばれる舌を覆う小さな突起の中に存在しています。味蕾は、食べたり飲んだりしているものが「おいしい」か「まずい」かを知らせてくれます。この情報によって食事が楽しくなりますから、味蕾は体に栄養を行き渡らせる手助けをしてくれていると言えるわけですね。味蕾はまた、ダメになった牛乳や腐った肉など、安全でないものを口にしたときにも警告を発してくれます。
味蕾はどんな味を感知できるの?
味蕾は、以下を含む5つの基本的な味を感知します:
- 甘味(Sweet): 甘い食べ物のほとんどは、何らかの形の糖(ショ糖(スクロース)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、乳頭(ラクトース))を含んでいます。蜂蜜、果物、アイスクリームなどがこれにあたります。
- 塩味(Salty): しょっぱい食べ物には、食卓塩(塩化ナトリウム)またはマグネシウムやカリウムのようなミネラル塩が含まれています。プレッツェル、ポテトチップス、映画館のポップコーンなどが思い浮かべられますね。
- 苦味(Bitter): 苦味のある食品には、カフェインや植物由来の化合物などの成分が含まれているかもしれません。苦味は、味蕾が 「おいしい」と感じるか 「まずい」と感じるかに関していえば、複雑な味覚です。例えば、コーヒーやダークチョコレートのような苦い食べ物が好きな方もいれば、そうでない方もいらっしゃいます。
- 酸味(Sour): 柑橘類や酢のような、酸味のある食品には何らかの酸(酢酸、クエン酸、乳酸)が含まれていることが多いです。
- うま味(Umami): うま味は、香ばしく、濃厚で、肉っぽい味です。味蕾がうま味として認識する食品の多くは、グルタミン酸と呼ばれる物質を含んでいます。うま味食品には、トマト、アスパラガス、魚、キノコ、大豆などが含まれます。
味蕾はこれらの味を様々な組み合わせで摂取するため、食べ物や飲み物を摂取しての感想はより複雑になります。例えば、味蕾はある食べ物のほとんどを甘いと感じるかもしれませんが、その中に塩味やうま味も感じるかもしれません。また、ある飲み物の味は、苦みが強いけれど甘みも感じる、という可能性もあります。
機能
味蕾は何をしているの?
味蕾は鼻にある嗅覚受容体と協力して、味を感じることを可能にしています。食べ物を噛むと、歯と口の中の唾液が一緒になって食べ物を分解します。この分解によって食べ物から化学物質が放出され、それが味蕾に伝わります。また、これらの化学信号は鼻腔を通り、鼻の受容体に届きます。鼻と口からのこういった信号が合わさることで、味を感じることができるのです。例えば、鼻をつまんでも味を感じなくなることはありませんが、味が変わったり、味が弱くなったりすることはご想像いただけることでしょう。
口や喉にある他の細胞には、食べ物や飲み物の熱さや冷たさを感知する受容体があります。「熱さ」には温度とスパイスが含まれます。「冷たさ」には、温度とミントやユーカリのような特定の風味の感覚が含まれます。
複数の敏感な細胞が協力し合って、人間の飲食体験を形成しているのです。
解剖学的知見
人間にはいくつ味蕾があるの?
平均的な成人の味蕾の数は2000~1万個の間です。加齢とともに味蕾は減っていきますから、これは、子供の味蕾の数は大人よりも多いということを意味しています。味蕾の大きさや数には個人差があります。
この違いは、誰もが同じ5つの味を感じているにもかかわらず、その味に対する認識や体験が異なることを意味しているわけですね。
味蕾の大きさはどのくらい?
味蕾の大きさは様々です。平均して、直径は約30分の1ミリメートル、高さは16分の1ミリメートルです。
味蕾はどこにあるの?
味蕾は主に舌を覆っています。より少ない量ですが、舌だけでなく、口蓋や喉にも味蕾があります。舌の味蕾は、乳頭と呼ばれる目に見える突起の中に存在しています。味蕾を含む乳頭には3つのタイプがあります:
- 菌状乳頭 (Fungiform): 舌の側面と先端にあります。約1600個の味蕾が含まれています。
- 円乳頭 (Circumvallate): 舌の奥にあります。約250個の味蕾が含まれます。
- 葉状乳頭 (Foliate): 舌奥の両側にあります。この乳頭は約20個あり、それぞれに数百個の味蕾が含まれています。
舌には味覚ゾーンと呼ばれる、特定の味覚に特化した部位が存在している、というのはよくある誤解です。そうではなく、甘味、塩味、苦味、酸味、うま味を感知する味蕾は、舌全体に散らばっています。舌の一部には、特定の味覚により敏感な部分が存在はしています。
例えば、舌の奥の味蕾は、特に苦味に敏感です。これは進化的な特徴でしょう。有毒物質には、味蕾が苦味や不快な味として認識する化合物が含まれていることが多いです。飲み込む前に不快なもの(そして潜在的に危険なもの)を識別することは、命を救うことにつながり得るわけですね。
味蕾はどんな形をしているの?
皮を剥いたオレンジやバラのつぼみのようなものが並んだ細胞の集合体を想像してみてください。バラのつぼみの上部に、味孔と呼ばれるわずかな開口部があり、食べ物や飲み物が内部の味を感知する細胞と接触するようになっています。
味蕾の構造はどんな感じ?
味蕾は、舌乳頭と呼ばれる舌の突起の中に並んだ細胞の集まりです。味蕾には以下の細胞が含まれます:
- 味覚受容細胞: 各味蕾には50~150個の味覚受容細胞があります。この細胞には、味孔の内側に、上方に伸びる受容体が存在しています。この伸長部は、微絨毛と呼ばれる味毛です。微絨毛が、摂取した食べ物や飲み物に含まれる化学物質と接触していきます。味覚受容細胞は、味覚信号を脳に伝達する神経に接続されています。脳は、受容体と接触した化学物質を、甘い、塩辛いなどと認識するのです。
- 基底細胞: この細胞は幹細胞であり、やがて味覚受容細胞になっていきます。味覚受容細胞は、体内で約10日ごとに入れ替わります。
- 支援細胞(支持細胞): 味蕾全体に散在し、味覚受容細胞と並んで存在しています。味蕾の中にありますが、この細胞は味を感じることができません。
味蕾はどのくらいの頻度で変化するの?
基底細胞は、1~2週間(平均10日)ごとに新しい味覚受容細胞に成長します。味蕾は年齢を重ねるごとに減少していくので、味覚は人生の異なるステージで変化していくことになるわけです。大人になってから好きになる食べ物と、子供の頃好きになった食べ物は異なるかもしれません。同様に、味覚も大人になるにつれて変化していきます。
疾患と障害
味覚に影響を与える一般的な疾患や障害は何?
味覚障害と呼ばれる疾患群は、味覚を変化させます。これには以下が含まれます:
- 無味覚症: 味覚の完全な喪失
- 味覚異常: 歪んだ味覚
- 味覚過敏:味覚の亢進
- 味覚鈍麻: 味覚の減退
- 幻味症: 口の中に何も入っていないのに、不快な味が残る
さらに、以下のものはいずれも味蕾に影響を及ぼし、食べ物の味が変わってしまうことがあり得ます:
- 歯肉炎を含む、口や喉の感染症
- 口の中の炎症
- ビタミンB12や亜鉛の欠乏
- 糖尿病や甲状腺機能低下症といった代謝障害
- パーキンソン病や多発性硬化症のような神経疾患
- 神経の損傷
- GERD(胃食道逆流症)(慢性的な酸の逆流)
- 喫煙または噛みタバコ
- 大量のアルコール摂取
- 化学療法を含む、特定の薬物療法
- ドライマウス
- 舌の火傷
- 味蕾の腫れ
ケアする
味蕾を健康に保つにはどうすればよい?
良いニュースとしては、味蕾は定期的に修復および再生されることが挙げられます。通常、傷付いた味蕾は自然治癒します。それでもやはり、度重なる損傷―頻繁な感染症や喫煙など―は味蕾の回復を妨げ、味覚に影響を及ぼし得ます。
味蕾を傷つけないために、以下を心がけましょう:
- タバコを吸わない
- アルコールの摂取を控える
- 歯、歯茎、舌のケア(口腔衛生)をしっかりする
- 食べ物は冷ましてから食べる
- 凍ったものを直接舌にのせない
クリーブランド・クリニックからのメモ
味蕾は小さな感覚器官でありながら、とても大きな働きをしています。鼻にあるセンサーとともに、風味を感じることを可能にしているのです。味蕾を傷付けてしまっても、1~2週間で修復され、再び食べ物を楽しめるようになることでしょう。その間は、食べ物や飲み物を冷ましてから食べたり飲んだりすることで、傷付きを防ぐようにしてください。味蕾に長期的なダメージを与える可能性のあるタバコ製品の使用は避けましょう。
イラストに「ここが甘、ここが酸っぱコーナー…」みたいなのがなかったのでまさかと思いましたけど、どうやら「甘さを感じるのはここ、しょっぱさはここ」というのは全く古い考え方で、どうやら今では否定されているんですね…!
ガーン、印象深かったあの自由研究の思い出は一体…(まぁ元々苦い思い出なんでどうでもいいですけど(笑))。
とはいえ、「苦いものは舌の奥で若干感じやすくはなっています」とありましたし、やっぱり得意分野はあるんじゃないか、って気がしますけど、日本語で検索しても、AIがハッキリ「それは古い考え方だよ」と正してくれていますねぇ…(↓参考:Google検索結果)。
ちなみに、一部の医療機関の記事ではまだこの区分け図を使って「舌は味を感じる部位が決まっています」としているものが散見されましたが、これはアップデートした方がいいのかもしれませんね。
とはいえやっぱり、僕自身、甘いものは先端の方が感じやすいし、横は酸っぱい、奥は苦い…ってのは実体験からも確実にある気がしますけどねぇ~。
もちろん「完全に分かれている」なんて思ってませんけど、「得意分野がある」ぐらいならやっぱり傾向はある気がしますし、自由研究の思い出とともに、僕だけは「舌部位別・味の感じやすさ」を一生信じてあげようかなと思います(笑)。