あまりにもお腹の調子が悪いときは、PKAを用いるのもアリ…?

食(ダイエット)に関する色々な話を見ていましたが、今回の脱線ネタはまた少し腸の話に戻りまして、どこかの記事でプロバイオティクスと並んで語られていました、何となく名前が似ている、プロカイネティック・エージェントというものを、ただ名前が似ているというそれだけの理由で見ていこうと思います(笑)。

 

my.clevelandclinic.org

 

まぁ「pro-」という接頭辞は、プロバイオティクスにも使われているわけですが、これは「forward」という意味であり、その「フォワード」自体も色々な意味があるわけですけど、基本的には「前方へ向かう」的なのがその根っ子の意味であり、まさにここでもそんなニュアンス通りの言葉で、一方後半の「kinetic」というのは、「ダイナミック」という語とほぼ同義の、「動的な」「運動の」という意味合いですから、合わせ技で「プロカイネティック」は「前方へ動かしてやる」となり、「エージェント」も色々な意味があるもののここではズバリ「薬剤」なので、「前へ押し出してあげる薬」…すなわち、「胃薬」って感じなんですね…!

 

長々と仰々しい名前の割に、ただの胃薬かよ、って話ですが(笑)、もちろん特に胃腸内に溜まっているものの排出を促進するタイプのものになるので、あらゆる胃薬がProkinetic agentと呼ばれるわけではないですけど、そんなわけで今回はこちらPKA(…と、英語ならそう略されそうな気もしますが、特にそう略して使っている表記は見つからなかったので、僕の勝手な略語です(笑))を見ていくといたしましょう。

 

日本語にすれば、消化管運動促進剤とか消化管運動機能改善薬とか(あるいは単に「運動促進薬」)いくつかの表記がありますが、ウィキペディアの表題タイトルに則り、今回は「消化管機能改善薬」で通そうと思います。

 

ja.wikipedia.org

 

消化管機能改善薬(Prokinetic Agents)

消化管機能改善薬は、腸の運動性―食物を、消化管内を通して前進させる筋肉の収縮―を改善する薬剤の一種です。しかし、その多くは神経系や心臓に関連する副作用のリスクが高いです。このため、多くの消化管機能改善薬は、アメリカでは入手不可能となっています。

 

概要

消化管機能改善薬とは何?

消化管機能改善薬は、消化管の収縮を刺激する薬剤です。食物の消化管に沿った移動を助けるものです。食べ物を飲み込むと、消化管の筋肉が収縮を始めます。この不随意的な筋肉の動きを蠕動といいます。筋肉は食べ物を喉から食道、胃、腸へと押し運びます。この収縮により、体はその途中で栄養を吸収することが可能となっています。

蠕動運動が妨げられると、便秘や胸焼けのような不快な症状が起こり得ます。食べ物が胃の中に長く留まり、必要な栄養が摂れなくなってしまうことがあるかもしれません。

消化管機能改善薬は腸を動かすのに役立つものですが、大きな副作用を伴います。通常、医療従事者は、消化管機能改善薬を処方する前に、プロトンポンプ阻害薬PPI)やH2ブロッカーといった他の薬剤を処方します。それでも、ご自身の症状の診断内容によっては、担当医が消化管機能改善薬を勧めてくることがあるかもしれません。

 

消化管機能改善薬はどう作用するの?

消化管機能改善薬は、腸の神経に作用して収縮させることによって働きます。消化管機能改善薬は、以下の作用があります:

  • 食道の収縮を強め、食物を胃に移動させる。
  • 下部食道括約筋(LES)を強化する。LESは食道と胃をつないでいます。この括約筋が緩みすぎたり、開くはずのない時に開いたりすると、胃酸が食道や喉にしみ込んでしまいます。その結果、酸逆流に伴う灼熱感(胸焼け)が起こるわけです(GERD;胃食道逆流症)。
  • 胃の収縮を強め、食物を腸に移動させる。
  • 胃が空になるまでの時間を短くする(つまり、胃酸逆流と同じように、胃の内容物が食道に逆流するのを抑えるわけです)。

 

消化管機能改善薬はどんな症状を治療するの?

以下のような症状を治療します:

  • 胃不全麻痺(胃の麻痺): 胃不全麻痺では、胃の筋肉の収縮が弱いために消化が遅れます。消化管機能改善薬は胃の収縮を促進するため、胃が早く空になります。他の治療法が有効でない場合、消化管機能改善薬であるメトクロプラミドの服用をかかりつけの医療従事者から勧められることがあるかもしれません。メトクロプラミドは、糖尿病に関連した胃不全麻痺(糖尿病性胃不全麻痺)の場合を含め、胃不全麻痺の治療薬としてFDAに承認されている唯一の薬です。
  • GERD(慢性的な胃酸の逆流): GERDは胃酸が胃から食道を通って口の中にまで逆流する病気です。これはLESが開くべきでない時に開いてしまったり、十分に密閉されていなかったりする場合に起こり得ます。消化管機能改善薬だけではGERDを治すことはできません。胃が十分な速度で空っぽにならない症状が関連している場合は、他の治療と一緒にこれが処方されることはあるかもしれません。
  • 機能性ディスペプシア(慢性消化不良): 機能性ディスペプシアは、食後に消化不良の症状が続くけれど、その原因がよく分からないというものです。いくつかの症例では、消化管機能改善薬によってこの症状が緩和される場合もあります。研究者は、この薬剤が胃の収縮を高め、胃がより早く空になるからではないかと考えています。
  • 吐き気と嘔吐: 急性(突発性)または慢性(長期)の嘔吐で、他の治療法が上手く効かない場合、担当医が消化管機能改善薬を処方することがあるかもしれません。これには、化学療法薬の服用に関連した嘔吐のための治療も含まれます。
  • 慢性偽性腸閉塞: この病態では、腸閉塞の症状が現れます―がしかし、実際には腸閉塞ではありません。研究者が現在、この症状緩和のために、いくつかの消化管運動促進薬がどのような役割を果たすかについて研究しています。

 

消化管機能改善薬の種類には何がある?

消化管機能改善薬には、アゴニスト(作動薬)とアンタゴニスト(拮抗薬)があります。

  • アゴニスト(作動薬)は、特定の神経伝達物質の作用を模倣するものです。神経伝達物質とは、神経に付着し、神経に何をすべきかを伝える化学情報伝達物質です。アゴニストは神経に付着して、収縮を指示する神経伝達物質として振る舞います。
  • アンタゴニスト(拮抗薬)は、特定の神経伝達物質が神経に結合するのを妨げるものです。アンタゴニストは、蠕動運動を妨げる神経伝達物質が神経に結合するのを妨げます。

消化管機能改善薬の様々なカテゴリーとしては、以下が含まれます:

 

消化管機能改善薬の例

処方される消化管機能改善薬には、現在治療に使用されている薬(胃不全麻痺に対するメトクロプラミドのような薬)、副作用のためにアメリカでは入手できなくなった薬、および安全性と有効性について現在研究中の薬が含まれます。

消化管機能改善薬の例としては、以下が含まれます(※こちらも、日本では販売されてないものがある…のみならず、上述の通りアメリカでも既に製造中止されているものもあり、公式の日本語表記がないものは、それっぽいカタカナ表記にしているだけ=正式名称ではない点にご注意ください):

  • アジスロマイシン(ジスロマックス®): 胃不全麻痺の治療に適応外で処方されることがある、モトリン作動薬です。
  • バクロフェン(EDバクロフェン®): PPI治療に反応しないGERDの治療効果が現在研究されている、コリン作動薬です。
  • ベタネコール(ウレコリン®): 胃不全麻痺を改善し、GERD症状を緩和するコリン作動薬です。しかし、不随意筋運動や目のかすみといった重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、あまり処方されません。
  • シサプリド(プロプルシド®): 胃がより早く空になるのを助けるセロトニン作動薬です。かつてはGERDの治療薬として使用されていました。シサプリドは心臓に関連する副作用があるため、アメリカでは市場から除外されました。
  • ドンペリドン(モチリウム®): 医療従事者がFDAに処方拡大の申請をしない限り、アメリカでは入手不可能なドーパミン拮抗薬です。副作用には、不整脈や心臓発作などの重篤な心臓障害があります。
  • エリスロマイシン(E.E.S.®): 医療従事者が胃不全麻痺の治療に適応外で処方することがある、モトリン作動薬です。
  • メトクロプラミド(レグラン®、マクセラン®、ジモティ®): 胃不全麻痺の治療薬として唯一FDAに承認されているドーパミン拮抗薬です。一般的な治療法に反応しないGERDの治療にも用いられます。ただし、神経系の副作用を引き起こす可能性があるという警告がついています。
  • プルカロプリド(モテグリティ®): 慢性便秘を治療するセロトニン作動薬です。胃がより早く空になるのを助ける効果もあります。
  • ピリドスチグミン(メスチノン®): 主に重症筋無力症の治療に用いられるコリン作動薬ですが、時々胃不全麻痺の治療に用いられることもあります。

 

消化管機能改善薬を服用することによる副作用は何?

消化管機能改善薬には、医療従事者がこれを処方することを妨げることにつながる、重篤な副作用を引き起こす可能性があります。それでも、典型的な治療法(GERDのPPIのような)が有効でない場合、担当医が消化管機能改善薬を勧めてくることがあるかもしれません。あるいは、安全対策として、低用量または期間限定で消化管機能改善薬を処方する場合もあり得ます。

かかりつけの医療従事者が消化管機能改善薬を処方する場合は、その薬に関連する特定の副作用について尋ねるようにしてください。

副作用には以下が含まれます:

  • 腹痛
  • 吐き気および嘔吐
  • 下痢
  • 目のかすみ
  • 頭痛
  • 疲労
  • 無気力(薬効による眠気、疲労感または一般的な眠気)
  • 抑うつ
  • 不安障害
  • 不随意性筋収縮(ジストニア
  • 不随意性顔面運動(遅発性ジスキネジア)

シサプリド、ドンペリドン、テガセロドは全て、以下を含む重篤な心臓疾患のリスクがあるとして市場から除かれました:

  • 心拍の低下(徐脈)
  • 不規則な心拍(不整脈
  • 心臓発作

新しいプロキネティック薬の研究は、腸の収縮を促進するという利点をもたらす薬―副作用のリスクを冒すことなく―の開発に重点を置いています。

 

その他のよくある質問

最も一般的な消化管機能改善薬は何?

最も一般的に処方されている消化管機能改善薬は、メトクロプラミドとドンペリドンです。アメリカでは、メトクロプラミドが胃不全麻痺に対する唯一のFDA承認治療薬となっています。しかし、かかりつけの医療従事者は、FDAドンペリドンの処方許可を求めることが可能です。

 

クリーブランド・クリニックからのメモ

消化器系疾患の治療に関して、消化管機能改善薬の有効性と安全性は様々です。かかりつけの医療従事者は、副作用のリスクがあるため、消化管機能改善薬を試す前に他の薬を試すかもしれません。それでも、消化管が収縮しないために重篤な症状を患われている場合は、消化管機能改善薬が切望されている症状緩和をもたらしてくれる可能性があります。消化管機能改善薬を服用する場合は、かかりつけの医療従事者が潜在的な利益とリスクを理解する手助けをしてくれることでしょう。

 

聞いたことない薬だと思っていたら、今はほとんど使われていない薬だったとのことですね。

 

とはいえ、全然効かないというわけではなく、むしろ逆で、あまりにも効果が強すぎるため、副作用が大きい…というのがその理由とのことで、正しく使えば有効な場面もあるといえそうです。

 

最初に貼った消化管機能改善薬のウィ記事には、「最もよく使われているのはモサプリド」とありましたが、FDA承認薬で、少なくともアメリカで最もよく使われているのは、圧倒的にメトクロプラミドのようですね。

 

今回は記事に画像がなかったので、困った時の分子構造という感じで、メトクロさんの構造式をアイキャッチ用にお借りしておしまいとさせていただきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/メトクロプラミドより

ちなみにモサプリドもまぁ似たような構造でしたが、塩素原子が1つあるメトクロと違い、塩素1つとフッ素原子まで1つくっついた、かなり反応性の高そうな分子でした。

…まぁそんな構造だけ見ても何も分かりませんが(笑)、強力そうな薬ではありますね。

服用の際は、副作用が出ないことを願いたい限りです。

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