ポンしゃぶ・ゴマしゃぶ・ラボアジエ

ピーエッチのお話、中途半端な所で前回は終わってしまっていましたが、今回は早速その続きからですね。

 

まだ一通り見終えていなかったため、ネタ元とさせていただいております、アンさんより賜ったコメントを再掲する所から始めさせていただきましょう。

 

pHって何だ?…はい、それ、めっちゃ思ってましたね。

エッチは水素イオンですか、、まぁ妥当ですよね、それは笑(苦手なイオンですけど)

水素イオンの濃度…なるほど。

pHの数字が大きいとアルカリ性で、小さいと酸性でしたよね。で、『pH 7のお水なら、水素イオンが、1リットルあたり「1/107=0.0000001モル」含まれている…』ということは…?

水素イオン濃度が小さいとアルカリ性、大きいと酸性ということ?アルカリ性には水素イオンは少なくて、酸性には水素イオンが多い?

あ、『pHが小さいほど酸性度が大きいってこと』と書いてますが、、それは水素イオン濃度も大きいということなんですよね。(既に混乱しかけ)

とりあえず、モルはややこしくなるので置いといて、

『中性の水はpHが7』というのは、水でなくてもpHが7なら中性ということですよね?

酸性雨は、水素イオン濃度が真水よりも大きい、水素イオンがたくさん含まれている、っていうのは、なんとなくわかりました!

で、水素イオンが多いと、何がダメなんですか?

ちなみに、弱酸性ビオレは、酸性を謳っているのではなく、弱を謳っているということなんですかね?(酸性が良くないみたいなイメージで考えると。)


(そもそも、水素が多いと酸性というのも、全くピンときませんけど、、

水の場合、H2OのHが多いという意味?

Oは酸素で、酸性の酸が酸素の酸ならOが多いと酸性とかになりそうですけど…まぁ、そういう問題ではないんですよね、恐らく。)


酸性は良くないとはいえ、胃の中は酸性で、それは酵素が働いて消化する為だからOKで、、あぁ、そこから先はソーマチンに戻るお話なんですね笑


めちゃくちゃややこいですが、個人的にこういうのはわりと好きです。わかってませんけど笑

 

⇒そんなわけで前回は、「『酸性は悪い状態』というわけではなく、そのモノの普段の状態からpHがズレてしまうと、特に生物にとっては都合の悪いことが多くなるといえるんですね」みたいなことを書いていました。


例えば酸性雨は、普段そんなに酸性じゃない雨を受けていた大地がいきなり酸性に傾いた水を食らうことで、葉っぱの成長維持やらなんやらが悪影響を受けてハゲ山になってしまう…という感じだと思いますけど、この場合もちろん酸性は悪い状態であるといえるんですが、酸性であることそのもよりも、あくまで「通常の、森林にとって快適なpHと違うこと」が良くないわけですね。

(まぁあまりあり得ないですけど、例えばナトリウム工場が爆発して辺り一帯水酸化ナトリウムの大量に溶け込んだ「アルカリ性雨」が降り注ぎ続けたような場合でも、森林は大ダメージを受けて、むしろハゲ山どころか腐って木ごと倒れてしまうかもしれません。

 仮にそんなのを人間が浴びたしたら、肌がぬるぬると溶けていき肉までどんどん腐食し続け、激痛にのた打ち回った後に死ぬことでしょう。

 あくまでも、酸性に限らず、pHが普段と大きくずれるのが良くないってことですね。)

 

逆に、普段は超酸性状態である胃の中であれば、「酸性が保たれること」はむしろ健康な胃である絶対条件なので、この場合アルカリ性に傾くことの方が悪といえるわけです……なんてのも前回既に書いていた話でした。

 

そこから少しご質問の方に視点をずらすと、「水素イオンが多いと、何がダメなんですか?」という点について……

これは今しがた書いていた通り、「水素イオンが多い=絶対悪」というわけでは決してなく、「普段の状態からpHが大きくずれるとダメ」という話になるわけですけれども、それを踏まえて言い換えると、ご質問のポイントは「水素イオンの量が変わると、何がダメなん?」ってことですね。

 

これはまぁ案外説明するのは難しい気もしますが、詳しいことは省いて要点だけ触れてみますと、ずーっと前の分子生物学入門シリーズで何度も書いていた通り、人間…というか生物はみな、体の重要なパーツや筋肉他、いわば本体そのものはタンパク質から出来ているわけですけど、pHが変わると、タンパク質の構造が変わってしまうから、ってのが最重要点だといえるように思います。

大きく酸性側に傾いても、逆にアルカリ性側に傾いても、そのタンパク質本来の構造が維持できなくなってしまうんですね。


例えばこないだの記事で見ていた、胃の中で消化に働くタンパク質(=酵素ペプシンなんかですと、ペプシンが溶け込んでいる胃液がアルカリ性になってしまうと構造が変わり、途端に食べ物を消化できなくなってしまいます。

もちろん体内の酵素に限らず、他にも例えば目玉はクリスタリンというタンパク質なんかで出来ている感じですけど、真水を浴びても特に何も問題はないものの、塩酸や硫酸のような強い酸でも、水酸化ナトリウムのような強いアルカリでも、そういった極端なpHのものが目に入ってしまうとタンパク質が変性して(ちょうど、生卵がゆで卵になるかのように)、二度と元には戻せなくなる=失明してしまうことでしょう。

 

…と、そうはいっても、「水素イオンの量がちょっと変わったぐらいで、そんな変わるもんなのぉ~?」という気はするかもしれませんが、これもそうですね……例えばこないだのBTTB記事で見ていた通り酸性雨はpHが5.6程度の雨水だそうですけど、中性の真水pH 7から比べると、pHが1.4減少しています。

(実際の雨は真水ではないため、真水と比べるのもちょっとおかしな話なんですけど、まぁ参考程度の例え話として真水と比べましょう。)

1.4といえばめっちゃ小さい数字に思えますけど、これもその記事で既に触れていましたが、水素イオンの量に換算すると、実に25倍もの差があるという話でした。


とはいえ25倍と聞いても、そもそもの水素イオンなる物体が目に見えないこともあって、これまたイマイチ何のこっちゃ想像できない気もするわけですけど、こう考えてみるとどうでしょうか。

例えば何かのスープを作るときに、「あっ、間違えて、お塩25倍も入れちゃった~!」となった場合、25倍というのは、小さじ一杯5グラムを入れるつもりだったら、まさかの125グラムにあたる(まさかも何も当たり前すぎますけど(笑))、両手からあふれるぐらいの量なわけですが、こんなもん飲めたもんじゃないを通り越して、成人が1日に摂取していい量どころか致死量を超えている、殺人スープになっちゃうわけですね(笑)。


何気に、お塩=NaClというのも、水の中で「Na(ナトリウムイオン)」と「Cl(塩化物イオン」に分かれるイオン性の物質なので、「25倍の量のイオン」という例えにピッタリだといえましょう。

たかがpH 1とか2の差といっても、イオンの量はそれぞれ10倍・100倍の差になるので、まさに料理をする際の食塩なんかを念頭に考えてみれば、「そらまぁ実際かなりの違いがあるでしょうね…」というのはご納得いただけるのではないかと思います。

(pHが2違うというのは、例えて言えば入れた塩の量が100倍も違うということ!しょっぱい!!)

 

続いてのご質問、「水の場合、H2OのHが多いという意味?」という部分は、例の前回チラッと書いていた発展的な事項が絡んでくる話なのでちょっとまた後回しにするとして、今回いただいていたコメント最後のご質問的な話にあたる「Oは酸素で、酸性の酸が酸素の酸ならOが多いと酸性とかになりそう…」というのは、言われてみればもっともな話で、そういえばこれ、何でなんでしょうね…?


軽く調べてみたら、信頼の集合知サイトQuoraに、似たような質問(↓)がありましたね!

jp.quora.com

回答者のマツナガさんいわく、

酸素は発見当初、「酸 を生む物」と誤解され、ギリシャ語 の oxys(酸 )と genen(生む)を合わせた名称で呼ばれていた。これは、アントワーヌ・ラヴォアジエ が、酸素が「酸を生む物」であると誤解して、oxygène(仏語)と名付けたことに由来する。

…とのことで、このややこしさの原因は、まさかの、昔の偉い人の勘違いがそのまま現在まで受け継がれてしまったから、という感じだったんですね!


挙げられているラボアジエさんは高校化学でも名前が登場する、「質量保存の法則」を発見した偉大なる科学者ですが(あれ、「質量保存の法則」は中学でも出てきた気がしますし、中学でも習いましたっけ…?)、個人的には、子供の頃に読んだ、記憶にある限り今までで一番面白かった四コマ漫画新井理恵さんの『× ―ペケ―』という作品で、脈絡なく出てきた「ポンしゃぶ・ゴマしゃぶ・ラボアジェ」という、単にリズムがいいだけで何の意味もないけれど謎にインパクトがでかかったフレーズの印象が非常に強いものの、まぁそれは全く関係なく(笑)…

(ただ「ペケは面白かった」と言いたかっただけです(笑)。ただ、ギャグ漫画の宿命で、今の時代に初見で読んで面白いかはやや不安が残るものの、中学生の僕には、「こんなに面白い四コマがあるんだ!」と感動を覚えるレベルでした)

…結局の所、ラボアジエさんの勘違いにより、「『酸性であること』の正体は水素なのに、名前的には酸素が近い」という面倒な状況を余儀なくされたということですね。

はた迷惑極まりない、訴訟!(笑)

 

(…とはいえ科学に勘違いはつきもので、他にも一番有名所で、本当に多くの混乱を生み出してしまった人類の歴史的失態といえば、「電気(電流)の流れと、実際の電子の流れが、逆向きになってしまった」でしょうか。

 これは恐らく中学でどなたも聞いたことがある話だと思いますけど、まだ電子の正体がどんなものかが分かっていなかった時代、電気の研究をしていた偉い人たちが、

「電流は、こちらを+極、こちらを-極として、プラスからマイナスに流れるものだと考えるようにしよう」

 と、特に理由もなくランダムで決めてしまったのが運の尽き、時代が下って電気の流れというのが実は電子という物質が流れることにより生まれるものだと判明し、しかもその電子というのはその考えでいくとマイナスの存在だったために、両者の流れる向きに齟齬が生じてしまったというわけですね。

 一応まぁそれは単に人間が概念的に「電気はこう流れる」と考えていたものが逆だっただけにすぎず、「全ての機械を1から作り直し」とかそういう実害が及んだわけではないとはいえるものの、その後そのややこしさから永久に世界中の学生を苦しめることになったのは間違いないので、人類に無意味な不快感を与えたという意味では、歴史的な大戦犯かもしれません(笑))

 

しかし改めて、ラボアジエさんも、「電極の、どっちがプラスかを決める二択」を外した人類の敵(…ってその表現も冗談ですが(笑)、僕はこれ、初めて実用的な電池を作った、「ボルト」という単位の元になったボルタさんが決めたものだと思ってたのですが、こちらの「教えて!goo」記事(↓)によると…

oshiete.goo.ne.jp
…どうやら電気にプラスマイナスの概念を与えた最初の人は、ベンジャミン・フランクリンさんだったみたいですね!

 ベンジャミンおじさんは、こないだのこのスラング記事(↓)で見ていた通り…

con-cats.hatenablog.com

 近代アメリカの父であり、米国版諭吉ともいえるぐらいの偉大な人なので、敵だなんてとんでもない言いがかりでした(笑))

…と余談が長くなりましたが、ベンフラさんのみならず、ラボアジエさんもそんなちょっとしたミス・誤解程度は全く問題にならないぐらい、人類の叡智を積み上げてくれたマジモンの偉人ということで、下手すりゃ今のスマホやインターネットがこうして誰でも使えるぐらいにまで人類社会が発展したのも、こういった知の巨人達の産物が脈々と受け継がれてきた賜物だといえますから、本当に感謝しかないですね。


ミスは誰にでもあるさ、そんな気にすんなよラッボ!(って何様目線だよ(笑))

 


それでは残ったスペースで、前回チラッと話に出していた「ちょっと発展的になるけれど、これを知っておくと理解が深まるかも」的な話に触れていこうかな……と思ったのですが、ちょっと時間とスペースが足りなさそうなので、そちらはまた次回にさせていただこうと思います。

(いくつか飛ばしていた感じのご質問も、それに関連している感じですね。)

 

アイキャッチ画像は、特に他に何もなかったため、偉大なるラボアジエおじさんの肖像画をお借りするといたしましょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/アントワーヌ・ラヴォアジエより

アントワーヌ=ローラン・ド・ラヴォアジエという名前もカッコいい、見た目もいかにもフランス紳士でいらっしゃる、立派な近代化学の父でした。

サンキュー、ラッヴォ!(いやだからお前は誰だよ(笑))

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