灰とディタージェント

脱線続きですっかり先延ばしになってしまっていた、中途半端に触れた状態のままであったご質問コメントの再開からですね。


既に何度も貼っていますが、アンさんよりいただいていたコメントを改めて再掲する所から始めさせていただこうと思います。

 

basicがアルカリ性って、、アルカリ性は流石にアルカリでしょ…って思ったら、「アルカリ性」という日本語を英語で言うとbasicというよりは、アルカリ性のものを英語でbasicという、みたいな感じなんですかね?(わかりにくい笑)

ちゃんとalkalineという英語もあるようですし。

塩基性の基は基本の基ということですか?対をなす酸性の方が特異みたいなイメージ?

だから塩基性がbasicという英語になるという感じ…?

とまぁ、何を言ってるか自分でもちょっとわかりませんけど…恐らく、basicはやっぱりつまらんゴミカスのイメージにはならないっていうことが言いたいんですね笑


どうでもいい話ですが、

酸性とアルカリ性は、リトマス紙で見分ける方法を中学生だったかで習いましたよね。赤が酸性、青がアルカリ性と覚えた記憶があります。(正確には、赤く変わるのが酸性、青く変わるのがアルカリ性、変わらないのが中性ですね。)

 

で、

(前々回貼ったため、画像省略)

↑ネットで拾ったこの写真ですが…

パッと見ただけなんですけど、右側の記述が私の記憶と違うくないですか?

これがトップヒットだったので、私の記憶はリトマス紙じゃなかったのか…?と軽く混乱しましたが、、

自分の記憶を信じることにしました笑


それは置いといて、

酸性の「酸」はどうしても酸っぱいイメージで、塩基性の塩もやはり酸っぱいイメージなので、酸性とアルカリ性しか知らないところへ新しく出てきた塩基性アルカリ性と言われても、なんで?っていう違和感ですよね笑

 

⇒冒頭の、basicという語とアルカリ性という語の関係について、そう、まさにそこも触れようと思っていた所でした。

まず、コメントでお書きいただいた通り、「アルカリ性」自体は「alkaline」というほぼカタカナそのまんまの英単語が普通に存在している形になっています(アメリカだと、発音は「アルカライン」という感じですが)。

 

そして日本のみならずアメリカでも、アルカリ性という性質(=水溶液のpHが高い)やアルカリ性の物質そのものを指す場合は、「塩基(性)」ではなく、しばしば「alkaline」「alkali」(こちらは名詞のまさしく「アルカリ」で、これも英語の発音だと「アルカライ」って感じですね)という用語が使われる気がしますね。

 

パッと浮かんだのでいうと、「alkaline detergent」という感じのフレーズが思い浮かびましたが、こちらは「アルカリ性洗剤」という意味の言葉になります。

この「ディタージェント」という単語、特に僕は自分の専門分野である生命系の実験で死ぬほど出てくるので馴染みがありすぎるのですが、実は日常生活でもバリクソよく出てくる単語であり、意味はまぁまさに今書いた通りの「洗剤」なので、生活する上で洗剤は欠かせないからというのがその理由なのは言うまでもなくご納得いただける話だと思いますけど、恐らく単語のレベルとしては結構高めな気がしますし、多くの方には馴染みがない言葉ではないかと思うため、これは覚えておいて損はない語といえましょう。


「洗剤」を英語で言おうと思ったら、「んー、washing……液体って何ていうんだっけ?washing...ウォーター??いや違うな……あ、soap!ソープだソープ!」みたいなことを考えてしまいがちな気がしますけれども、soapというのは基本的に「体を洗うもの」であり(要は「石鹸」ですね)、衣服やお皿を洗うものには普通は使わない語かな、と思います。

(まぁ、「dish soap, please!」と言った場合でも、絶対に通じるとは思いますけどね。日本語でも、外国人の方が「オ皿ノ…セッケンをクダサイ」と言っていたら、食器用洗剤のことかな、って思いますもんね。)

…というか、改めて考えてみたらカジュアルな場面ではむしろdish soapでも全然普通の表現かもしれない…という気もしてきたものの、厳密には、「洗剤」というものを表すより適切な語は、改めて「detergent」だという感じになるように思います。

(もっとも、旅行なんかで「洗剤」を必要とすることってほとんどないと思いますし、洗剤が必要となるのは生活を始めてからな気もするので、こんな難しい単語、そんなに「覚えておこう!」レベルの語でもないかもしれませんが。)


(ちなみに、生命系の研究で出てくる「detergent」は洗剤という意味ではなく(もちろん洗剤でも使いますが)、「界面活性剤」という意味の、タンパク質を上手く水に溶かす…というかまぁ実際はその他色々な役割があるんですけどそれはともかく、「洗剤」というよりむしろちゃんとした「試薬」として登場することがメインになります。

 もちろん「洗剤」と「界面活性剤」はほぼ同じようなことを指している語であり、結局どちらもタンパク質やその他の生体分子と上手いこと作用できる物質を指す言葉ですから、だからこそいわゆる「洗剤」というものはタンパク質や脂質の分解が得意なので、まさに「洗剤として使える」物質になっている、といえるわけですね。)

 

他に「『アルカリ』って何で使うかな…」と考えてみたら、英語ではほぼ使わないものの、日本語の場合、間違いなく「アルカリ乾電池」という語で一番目にする気がしますね!

実際僕が生まれて初めて「アルカリ」という語を知ったのは電池だったと思いますけど、英語の場合は、当然「alkaline battery」という表現もあることはあるものの、大雑把なメリケンどもはそんな細かい違いなんぞ全く気にしないので、基本、「battery」としか表現しないように思います(笑)。


(なお、これまた豆知識として、日本語なら「単三電池」とパッといえるあのサイズも、「英語だとどう言やいいんだ?!」と思える、知らないと表しようがない表現ですね(まぁ、「アー、ほらアノ…regular size, very normal battery!!」とか言えば、多分通じると思いますけどね(笑))。

 こちらは、英語だと「AA battery」であり、口頭で言うなら「double A」というのが一番普通かな、って気がします。

 また、単四は「AAA battery (triple A)」で、そうすると単二は「A (single A)」なのかな?と思わせて、実はこいつは「C」で、単一は「D」という、「何でや!」と思えてやまない相変わらずクソ過ぎるネーミングなのがしょうもない英語文化なわけですが(笑)、まぁ幸いにしてイマドキ単二・単一というクソデカ電池を使うこともまずないですし、無視していいものだと思います(笑)(僕も一度も使ったことがありません)。

 ちなみに詳しいことは僕も分かりませんけれども、歴史的に、もちろん小さい方からA, B, C, Dと名付けられたものの、AとBは機能的にあまり良くなかったのか市場から姿を消し、Aより小さいAA、さらに小さいAAAがスタンダードとなり、今に至る…って話だったと思います。)

 

電池についても、「アルカリ・マンガンの違い」とか、「実は乾電池というのは、これだけ普及しているにもかかわらず完全な分子機構はまだよく分かっていない」という面白い話に触れようと思ったのですが、検索したら実はもう以前触れたことのあったネタでした(笑)。


こちら、「楽しい有機化学」シリーズの続編・ミネラルを見ていた記事(↓)で触れていた感じですね。

con-cats.hatenablog.com

con-cats.hatenablog.com

幸い既に触れたことがあったのでもう繰り返し触れる必要もなさそうだということで、脱線話も無限に広がらずにむしろ助かった感じかもしれません(笑)。


そんなわけで話を戻すと、日常シーンでは(日本語・英語ともに)「塩基性」より間違いなく「アルカリ性」という表現の方がよく聞くように思えるわけですが、より広い意味を持つ「塩基性」の方が一般的に使いやすそうな気がするのになぜそうなっているのかと考えてみると、結局これは「身近にあるものは基本的に水に溶けるから、pHの高い液体は全て(『塩基性』ではなく)『アルカリ性』だと考えても何ら差し支えないから」という話に尽きるように思います。

日本語でも英語でも、小中学校の理科の授業では身近な、水に溶ける/溶けたものの方が重要なためまずそれを学ぶわけで(水には溶けない「酸と反応する物質」は、高校から)、多くの人に馴染みがあるのは「アルカリ性」という単語になるのは間違いなく、その流れで日常生活でも「アルカリ性」の方がよく使われる語になっているのではないかと思う、って話ですね。


とりあえずご質問にあった、

『「アルカリ性」という日本語を英語で言うとbasicというよりは、アルカリ性のものを英語でbasicという、みたいな感じ…?』

は、これはそうではない感じになってしまっています。


あくまで「アルカリ性(英語でalkaline)」と「塩基性(英語でbasic)」の違いは、

  • アルカリ性=何かが水に溶けた結果、酸と反応する状態になった液体(=pHの高い水溶液)の性質

  • 塩基性=水に溶けているか否かに関わらず、酸と反応する物質全般(液体ですらない場合もあり)の性質

…であり、改めて、「アルカリ性の物質」というのは、必ず「塩基性の物質」であるともいえる(=「日本人」が必ず「地球人」であるのと同じ(「地球人」の方がより大きなグループ)で、「塩基性」の方がより大きいグループのことを指している(「アルカリ性」は、水に溶けた状態(水溶液)の性質のみを指す))形になってるわけですね。

 

とにかくこないだの説明の仕方が中途半端で混乱を招いてしまった気がしますけれども、アンさんの書かれた「名詞・形容詞」的な違いは、これは普通に「alkaline」「basic」それぞれ両方持つものなので、関係ないという話でした。

alkalineについては先ほど上で書いていた通り、「alkali」というのが「(水に溶けて)アルカリ性を示す物質」という名詞で、一方、basicの方も、「base」というのがズバリ「塩基」という、「塩基性を示す物質」という意味の名詞になっている形です。


そう、この「base」は、実はDNA・RNAで、その構成単位である「A・C・G・T(U)」の1つ1つを指す際に「1塩基、2塩基…」と数えます…などと書いていた、あの「塩基」を指す語で既に登場したことがあったんですね。

つまり、DNA・RNAの「A・C・G・T・U」といういわゆる「塩基」は、塩基性を示す物質だからそう呼ばれているという形でした。


(以前書いていた「分子生物学入門」シリーズでの初出はこの記事(↓)でしたが…

con-cats.hatenablog.com
アルカリ性うんぬんについては、実際DNAの場合ほぼその意味は関係ないため、特に触れていませんでしたけどね…!)

 

baseについてはその意味について考え始めるとややこしくなるのでひとまず置いておくとして、一方、小学校時代からいきなりしたり顔で登場してくる「アルカリ」とはそもそも一体どういう意味なのでしょうか?

これは実は「」という意味で、歴史的には「草木を燃やした後に残る灰は、水に溶かすと酸と反応する物質であるね」と気付いた昔の偉い人がつけた名前のようですけど、その辺の話含め、「baseとalkaliの違いは何ですか?」という質問が、その道の完全なる専門家である日本化学会による小中高生向け質問コーナーで触れられていました(↓)。

kinki.chemistry.or.jp

(割と短くまとまっている説明なので引用も控えますが)プロの説明は流石で大変上手にまとめられているものの、キッズ向けとはいえ、やっぱりちょっと難しめな感じがしちゃうかもしれませんね(小中学生が読んでも正直何のこっちゃ分からないような気がします)。

 

…と、もうちょいその辺を踏まえて説明をしてみようかな、と思ったのですが、例によってまた完全に時間切れとなってしまいました。

うーん、正直これ以上深入りする意味もあまりないというか面白くない話になるだけ(イオンとか、電子とか)な気もするので悩ましいのですが、ちょうど、またアンさんから前回のpHネタに関してちょろっとご質問をいただいていたため、そちらの補足だけもう少し続けてみようかな、なんて思っています。

 

今回は画像もなく、上手く記事タイトルにできるようなネタもなかったので、無理やり「灰とダイヤモンド」と絡めて(これ、僕は曲のタイトルのイメージだったのですが(GLAYももクロ、あとは沢田研二さんも出されていますね)、元ネタは映画のタイトルだったんですね!)、ちょうど六音節で都合よく「ント」で終わるディタージェントというものに触れていたため、こちらを採用させていただきました。

こちらが、detergentのいらすとだということですね!

「ソープ」ではなく「ディタージェント」と覚えておかれることをオススメしたい限りです。

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