(番外編)GMATチャレンジ、推論問題その1

唐突な脱線ネタで、前回は「GMTA」という略語にそっくりなことから、MBAに入学するために受験が必須のGMATから1科目、数学テストを見ていました。

せっかくなので、日本人にとってより難しいとされる、残り2科目、「推論」と「言語」のサンプル問題も垣間見させていただきましょう。


前回同様、プリンストン・レビューという学習ビジネスサイトが公開されているサンプルをお借りさせていただく形です。

www.princetonreview.com

まずは「統合推論」の方ですね。


タイトル的には結構いかつい感じですが、どんな問題なのでしょうか?

Sample Integrated Reasoning Questions

Item 1: Andre is buying gifts for his office staff. He wants to spend exactly $280 and he can buy either sweatshirts, which cost $22, or baseball caps, which cost $26.

In the table below, choose the number of sweatshirts and the number of baseball caps that Andre should buy.


Sweatshirts Baseball Caps Number to Buy

(A) __

(B) __

(C) __

(D) __

(E) __

(F) __

(A) __

(B) __

(C) __

(D) __

(E) __

(F) __

4

5

6

7

8

9


(和訳)

1. アンドレは、会社の同僚にプレゼントを買うつもりでいる。ちょうどピッタリ280ドルを使いたいと考えており、22ドルのスウェットシャツまたは26ドルの野球帽のいずれかを買うこととした。

下の表から,アンドレが購入すべきスウェットの枚数と野球帽の枚数を選べ。

(表:スウェットと野球帽の個数、各4-9までの選択)


⇒なるほど、まあまあ、多少は計算が大変な気も……するけど、こんなのただの数学じゃん!

もっと、データを交えた会話や複雑な論説文とかがあって、「以上のことから推測されるのはどれか」みたいな難儀なものが来るかと思いきや、マジで結局これも数学どころか算数の問題でしかない感じですね。

何となく公務員試験っぽい感じもしますが(公務員試験を受けたことはありませんが、まぁこんな感じの問題を沢山解かされる印象です)、案外MBAと公務員は、問われる資質が似たような感じといえるのでしょうか(まぁ、適当に記事水増しがてらそれっぽいこと書いてるだけで、正直全然そうは思えませんけど(笑))。


ぶっちゃけこれまた楽勝にも程がありますけれど、順に解いてみましょう。

まず、この手の問題の場合、正解は「4~9個のどれか」という大ヒントが既に存在しているため、全部でわずか6パターンずつしかないわけで、こんなもんあれこれ難しいことを考えず、即座に「それぞれいくらになるか」を書いていけば瞬殺ですね。

 

スウェットの値段 野球帽の値段 買う個数

88

110

132

154

176

198

104

130

156

182

208

234

4

5

6

7

8

9


もちろん、1枚増えるごとに22ドルまたは26ドル増えていくだけなので、掛け算よりも足し算の方が早そうだと思えば、1つ上の数字に22や26を足していくのが賢いやり方だといえましょう。

で、当然全部の組み合わせをチェックしていく必要はなく、まぁスウェットを基準にするなら、88ドルなら合計280ドル付近になる野球帽の下の方の数字と足し合わせてみればよく、88+182なら270ドルだし、88+208=296でもう超えるので却下、そしてシャツ5枚の110ドルは+156だと266でダメで、+182はもう280を超えるので論外……ってのを続けるだけで、地味にダメなパターンが続いていくものの、176と104でドンピシャ280ドルになるので答えはコレ、スウェットが8の(E)で、野球帽が4の(A)ですね。


ただ、あんまり試験が得意じゃない方…というと言い方が悪いですが、しっかりと本質を考えたい方の場合、「選択肢から考えるなんて邪道だ!もし選択問題じゃなかったらどうしてくれる!!」「本当にその組み合わせだけが全てと言い切れるのか?!別の組合せがあったらどうしてくれるんだ!!」みたいなことを思ってドツボにハマってしまうかもしれないので、選択肢がない場合、かつ一般化してどうなるかについても、せっかくなので触れておきましょう。


つってもこれも考え始めは別に難しいことはなく、まぁ僕なら値段の大きい野球帽を基準に(←その方が最大の枚数が少なくなるので)、10枚で260ドルで、11枚でそれに26を足した286ドルとなり、これだけで280ドルを越えますからまず野球帽のあり得る最大の数10枚を基準に考えていくと思います。


で、パパッとこういう表を書いていき…

野球帽の数 280ドルまでの
残り金額
22で割り切れる?

10

9

8

7

6

5

4

20

46

72

98

124

150

176

×

×

×

×

×

×

○(22×8)

(1列目は値段を書く必要がないし、2列目は最初の分かりやすい「20」から、26を足していくだけですね。)


まぁ答えは野球帽4枚まで下りていかないといけないので結構手間になりますが(→スウェットから始めた方が、最大枚数は多くなるけど(1枚22ドルだから、12枚スタート)結果として早く答えに辿り着けるので、そっちの方が良かった感じですね(笑)。こればっかりは不運でした)、でもまぁ「280ドルまでの残り金額」は26ドルずつ増えていくだけなので複雑な計算など必要なく、この表を手で書く所要時間は10秒ぐらいでしょう。

(いやまぁ流石に10秒は盛りすぎかもですが(笑)。)


で、とりあえず1つピッタリ280ドルになる組み合わせを発見しました(もちろん、先ほどと同じ、シャツ8、帽子4)。


そしたら後は、「他に可能性のある組合せは存在しないのか?」の一般化ですね。

まぁもうここまで来たら帽子の数が3, 2, 1, 0とするだけなんですけど(笑)、気になる方が気になるのはやっぱりそうではなく、「今はたまたま数が小さかったけど、もっと巨大な金額と個数だったらどうするんだ!全パターン試すなんて無理だぞ!!」というのが懸念ポイントだと思うので、「一目で組み合わせを判別できる一般化」を試みましょう。


これはまぁ、整数問題の定石みたいなもので、僕自身が考えたわけではなく、単に昔習ったことのあるやり方でしかないんですが、非常にスマートでナイスな方法をご紹介してみようと思います。

とりあえず、「シャツをN個、帽子をM個買って、280ドルになるNとMの組み合わせ」を知りたいので、式を立てます。

  • N×22 + M×26 = 280


で、先ほどN=8、M=4という答えの1つを発見していました。

当たり前ですが、Nに8、Mに4を入れると、ちゃんと成り立つ式になってる感じですね。

  • 8×22 + 4×26 =280


そして、ここからが頭のいい人が考えたテクニックで、おもむろに上の式から下の式を引き算してやります(中学で習う、連立方程式でやるパターンですね)。

すると、こうなるわけです。

  • 22 × (N-8) + 26 × (M-4) = 0


両辺を同じ数で割っても関係は変わりませんから、数字を小さくして分かりやすくするために、22と26のどちらも割ることのできる2で両辺を割っておきましょう。

  • 11 × (N-8) + 13 × (M-4) = 0


…で、ここはちょっと、数学の知識がないとピンと来ないかもしれない点なんですけれども、11と13は「互いに素」(=両方を同時に割り切れる数が存在しない。もちろん1なら割り切れるので、「2以上で」ですね)であるため、この式が成り立つためには、N-8は絶対に13の倍数でなくてはいけないし、M-4は絶対に11の倍数でなくてはいけないのです。

(なぜなら、(プラスマイナスをひっくり返して)「11 × (N-8)」と「13 × (M-4)」とが全く同じ数にならないと差し引き0には決してならないわけですけど、11と13は互いに素なので、「11 × (13の倍数)」と「13 × (11の倍数)」という形じゃないと、両者が同じ数になることは絶っっ対に不可能なので。

…これ、まぁできない人をバカにするというわけでは全くないんですけれども、少なくとも僕が学生時代や塾で教えていたときなんかで周りを見て来た限り、残念ながらこういう概念をどう頑張っても理解できない人は一定数どころか結構な割合でいるように思えるのですが、恐らくこういうのを理解できるかどうかが、数学が得意か否かの分かれ目といえるポイントかもしれませんね。

 僕も決して数学のセンスがあるわけではなく、初めて聞いた時は「何で絶対そうと言い切れるんだ?もしかしたら同じ数になるかもしれんくない?」と思えたものの、冷静に考えたら、やっぱり絶対断言できるんですよね。

 学生時代分からなかった方も、多分大人の脳で考えれば分かるのではないかと思うので、分かると結構面白いですし、ぜひ考えてみることをオススメしたい所です。)


…と余談が長くなりましたが、「N-8」が絶対に13の倍数であることが確定しているため、これを、

  • N-8 = 13 k
    (kは整数。掛け算マークは省略しましたが、13×kのことですね。)


と表すことができるわけです。

(改めてこの辺も、こういう「何かを文字で置くこと」に嫌悪感がある方が世の中の大多数だと思えるんですけど、これは恐らく「なぜそうするかの必然性がまるで意味不明」というのがその最たる理由ではないかと思います。

…とはいえとりあえずこれで突拍子もない謎の文字と式の登場はほぼ終わりですし、まぁ頭のいい人が考えた凄いやり方だ、ということでお付き合いください。)


一方、「M」側にも同じ文字を通してやるために、「N-8 = 13 k 」なので、これを「11 × (N-8) + 13 × (M-4) = 0」の式に代入してやりましょう。


(N-8)を、13kに置き換えてやるだけですね。

つまり、

  • 11 × 13 k + 13 × (M-4) = 0


ということになります。


これらを分かりやすい形に変形すると、まずNの方は、(8を移項するだけ)

  • N = 13 k + 8


となり、一方Mの方は、両辺を13で割って、移項して整理すると、

  • M = -11 k + 4


という形が得られることになります。


…ってなわけで、これにて一般化の完了です!

シャツと帽子の組み合わせである「N枚」と「M枚」は、整数kを使って、

「(13 k + 8) 枚」

と、

「(-11 k + 4) 枚」

を買えば、必ず280ドルぴったりになるということが分かりました!!

 

「いや、まだ文字があって、何も分かってへんやん」という気がするかもしれませんが、既に文字は1つしかありませんから、これに当てはめてやるだけで枚数の組み合わせがサクッと得られるという優れものなのです。

例えば、k=0を代入すると、シャツは「(13 × 0 + 8)=8 枚」で、帽子は「(-11 × 0 + 4) =4 枚」と、例の答えがきちんと導ける形ですね。


では、k =1を代入してみるとどうでしょうか?

シャツは「(13 × 1 + 8)=21 枚」で、一方帽子は「(-11 × 1 + 4) =-7 枚」と、まさかのマイナスの数になってしまうんですね!

帽子の方は「-11 k + 4」と、kの係数がマイナスなので、数が増えるほどマイナスになるため、kを増やせば増やすほどどんどんマイナスがかさんでいく形です。


では、kに-1を代入すればどうかというと、もうお察しのことでしょう、シャツは「(13 × (-1) + 8)=-5 枚」で、帽子は「(-11 × (-1) + 4) =15 枚」と、今度はシャツが「マイナス枚」になっちゃうんですね。

先ほどと同じく、kを小さく(マイナスの数字を大きく)していけば、シャツはどんどんマイナスが膨れ上がっていく形です。


以上のことから、この買い物で可能なシャツと帽子の組み合わせは、(両者がプラスの数になる、k=0の)8枚4枚の1パターンしか存在しないことがハッキリと分かりました!

 

…とはいえしかし、「マイナス枚買う」を、この際「その枚数売ってお金を稼ぐ」と考えた場合、当たり前ですがピッタリ280ドルの収支に落ち着く取引が可能になっているといえるわけですね。

例えばk=1の、シャツ21 枚、帽子-7 枚の例を考えると、シャツの購入で21×22=462ドルの支払い、一方帽子はマイナス7枚買う=7枚売って、26×7=182ドルの売り上げで182ドルゲットと考えれば、差し引き、462-182=280ドルと、ピッタリ280ドルを使った取引になっている、というお話なのでした。

(当然、kに違う整数(先ほど見た通り、kがプラスなら帽子を売る、マイナスならシャツを売るパターンですね)を入れていけば、無限の「280ドル取引」パターンを作成可能です。

 k=-1なら、シャツを5枚売って110ドルゲット、帽子を15枚買って390ドル払って、合計収支280ドル、k=4なら、(…先ほどの式を計算して…)シャツを60枚買って(1320ドルのお支払い)、帽子を40枚売る(1040ドルの売り上げ)と、これまた合計ピッタリ差し引き280ドルの負担になっている、ってな具合ですね。)


…果たして、数学が苦手な方が読み飛ばさずに理解されることができるのかは甚だ疑問で、逆に数学が得意な方は「何をこんなことを偉そうに…」と思われるような話になっていたかもしれませんが(笑)、(売る方も認めるなら)ピッタリ280ドルの収支になる組み合わせを無限に作れる簡単な式が得られるというのは案外感動的で、これが数学の力なのです、なんてことを書いてみた感じですね。

 

と、流石にこんなしょうもないシャツ帽子売買の話だけで終わるのもアレですし、2問目は信じられないぐらい簡単だったので2問目も終わらせておきたかったんですけど、しょうもない整数方程式の解説で、ちょっとギリギリ時間が足りませんでした。

あまりに中途半端にも程がありますが、続きはまた次回で、マジで問2はゴミみたいに簡単だったので、一気に言語問題にも挑戦していこうと思います。

 

アイキャッチ画像は、問2にグラフがあったのでそれを使いたかったのですがそこまで届かなかったので、スウェット野球帽のいらすとを組み合わさせていただきました。

色合いのコンビネーション的にクソダサイにも程があるので、プレゼントでこれを受け取ったアンドレの同僚は苦笑いせざるを得ない状況だったのではなかろうか、といえましょう(笑)。

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