「your」ってゆわないで…!

今回も、こないだ触れて途中状態になっていたコメントの続き(とはいえ内容は独立しており、続きネタというわけでもないのですが)を見ていこうと思います。

 

特に元ネタは関係ありませんが、一応、こないだのこちらの記事(=corporationの語源などに触れていた記事)にいただいていたメッセージになります。

これまで同様、もちろんおなじみアンさんよりいただいていたコメントですね。

また順に、主にご質問を含む部分を引用させていただきましょう。

corporationはcorpusとなんとなく関係あるっぽいということでしたが、

これまた余談なんですけど、、

先日、実際にどこかで見かけた英文です。

「Thank you for your understanding and cooperation.」

ご理解とご協力に感謝します。

ですよね?

まず、コーポレーションってこんなスペルだっけ?あれ?意味も違うくない?会社の他に協力って意味もあるんか?

とまぁ、疑問に思って考えてみることが大事!っていうことで笑、corporationとは全く別の単語なんですね、cooperationは。

 
⇒この二語は確かに、クッソ似過ぎてて空耳ならぬ空読みしてしまう単語ですねぇ~。

とはいえ個人的には、落ち着いて考えれば意外と区別の付きやすいペアといえるかもしれません。


「co-」という接頭辞は、「ともに・一緒に」という意味を導くものであり、「cooperation」というのは「co-operation(コ・オペレーション)」と区切る感じで、「一緒に行うオペレーション」=「協力・協調」という意味になるわけです。

一方、ちょうどこないだの記事で見ていた通り「corporation」は「body」を意味する「corpus」がその語源ですし、「co・rporation」と区切っても意味不明ですから、これは先ほどの「コ・オペ」とは全然違うもので判別がつきやすいといえる感じで、語源的にも、cooperationとcorporationは、似て非なる語だといえそうです。

(もっとも、「corpus」という語のcoも、ある意味「ともに・一緒に」という字義を含んだものなのかなとも思えますから、完全に無関係とは言い切れないかもしれませんが。)


この接頭辞「co-」については、他の例だと、生命科学用語でとてもよく聞くため個人的に馴染みがある「coexist」(コ・エグジスト=一緒に存在する=「共存する」という意味)とか、あぁより一般語として馴染みがあるかもしれないのは、「coworker」(コワーカー=一緒に働く人=同僚)なんかもありますね。

なお、この接頭辞は「com-」とか「con-」と形を変えることもありますが、基本的にどれも「ともに」というニュアンスを付加するものだといえましょう。

(「compose」=com(ともに)pose(置く)=合成する、とか、「context」=con(前後一緒に)text=文脈・前後関係、とかですね。もちろんco系で始まる単語全てがそうでは決してありませんが。)

 

…と、コ・オペレーションも面白いポイントでしたが、今回の本題は以下の、コメント続きの部分になります。

 

そして、スティーブがthanks forの後にyour kindnessと言えるけど、動名詞の時はyourはつけない(your helpingとは言わない)と言っていたのですが、

your understandingはいいのか??

っていう更なる疑問ですね。helpとunderstandの違いは何でしょう??

 

⇒これ、度々登場しているスティーブ・ソレイシィさんの名著『なるほどフレーズ100』をずっと前に読んで、僕自身もめちゃくちゃ「なるほど!」と思えて極めて役に立ったポイントの一つなんですけど、まさに英語の原則はそうなっているとのことですね。

つまり、例えば「お電話ありがとう」であれば、「Thanks (Thank you) for your call.」でも「Thank you for calling.」でもどちらでもいいのですが、-ing形をつなげる場合、「(×) Thank you for your calling.」とは決して言わない・おかしいんですね(=yourの後は純粋な名詞のみ)。

CDでスティーブさんがまさにそう断言していましたし、実際自分の経験からも現実の英語は本当にそのようになっていたため、僕自身絶対にそうならないように気をつけているポイントです。

(日本語の発想的に、油断したらついついつけちゃいたくなっちゃうんですよね。)


なぜおかしいのかというのは、例によって例のごとく、「不自然に聞こえるから」としかいえない話なんじゃないかな、と思います。

例えば、(そこまで極端な話じゃないにしても)日本語で「楽しいです」は自然だけど「楽しいます」とは決して言わない・おかしい…というのは100%絶対全員が同意する話なわけですが、日本語学習者に「なぜ?」と聞かれても「いやハッキリ理由言ってあげられなくてゴメンだけど、おかしいもんはおかしいんだ。誰もそう言わないから、君も使わないでね」としか言えないのと似たような感じな気がしますね。

(そして、学習者に追加で、「でも、『楽しみです』と『楽しみます』はどちらも正しいって習ったんですけど……違いは?」とか聞かれても、「うるせー」といって顔面パンチをお見舞いするしかないぐらい(いやどんな野蛮人だよ(笑))、もうホント理由なんて知らんけどそうなってるの!…って話が言語には多いという感じに思います。)

 

話をご質問に戻すと、そんなわけで、僕はもう完全に刷り込みレベルで「Thank you for your -ingはおかしい」とインプットされているため、この「Thank you for your understanding」はやっぱりちょっとおかしいんじゃないかな、って気がしてしまい、反対派の立場を取りたくなる感じかもしれません。


まず思ったのが、これはやっぱり、日本語の「ご理解ご協力に感謝します」という決まり文句に引っ張られすぎた、かなり日本語的発想の英文なんじゃないかな、と思えたんですけど、調べてみたら、一応英語圏でも使われていなくはない表現のようですね…。

 

しかしやっぱり、「使われていなくはない」だけで、そこまで自然な表現ではないんじゃないかなぁ、という気もします。


そんなわけで、ここはまさに最近の一連の記事で、こういう時のために存在するツールとして触れてきました、コーパス検索の出番ですね。

10億語を超える膨大な英文データベースでの利用頻度を、調べてみるといたしましょう。

 

ThanksとThank youは、語数が違うことから一括で検索するのはちょっと難しそうにも思えたので、ここはfor以下のみで調べてみようと思います。

本題はfor以下でのyourとingとの共存なので、これでも十分といえましょう。

 

まずは「for your understanding」で調べてみると……

「for you understanding」でのCOCA検索結果

なんと、たったの3件!!


…とはいえ、前回見ていた通り、ここで表示される数字はたまに信頼できないこともありますから、クリックして実際の例文一覧を見るまでは信用なりません、さぁ、例文一覧はどうか…?!

「for you understanding」でのCOCA検索結果・例文一覧より

お!

やっぱりマジでたったの3例文のみ、これは全く使われていない表現だと、ほぼ断言できる形!!

 

一方、your抜きで「for understanding」でコーパス検索をしてみたら……

「for understanding」でのCOCA検索結果

3068件!

桁違いというレベルを超えている、圧倒的な差ッ!!

 

勝ったッ!第3部完!

 

…と思ったのですが、よーく見直してみたら、最初の検索、まさかの「for you understanding」と、yourの部分をyouとミスタイプしてしまっていました…!

 

むむ、流石にそんな文法的におかしい英文は、同じくタイプミスで登録されたのであろう例外的な文(実際は3件の内、明らかにタイプミスと思われるのは1つだけで、他は「thank you for your understanding」とは別の文脈での利用だと思われますが)ぐらいしかないのは当然で、これはフェアではなかったですね…。


実はこの検索だけ事前に既にしてあって、圧倒的なる差であったことから、記事のタイトルや方向性までもう決めちゃっていたので、何とか「for your understanding」も全然使われていないという結果のままであって欲しいところ……というか本当は見なかったことにして「やはり、forとingの間にモノが挟まると、おかしい!」で通したかった所ですが(笑)、仕方ないので、再検索しておきましょう。

 

ちゃんとyourと入力してリトライ……さぁ、どうなる?!

「for your understanding」でのCOCA検索結果

むむ、95件!

まぁ流石に3件よりは多いものの、どう考えても先ほどのyour抜きの結果より、圧倒的に少ないと断言できる結果といえましょう!

 

いやぁ~良かった良かった、やはり「for your understanding」なんて言い方はおかしいってことよ、スティーブ万歳!

 

…と、一応念のため実際の例文も見ておくと、まずyour抜きの3000件超の方は…

「for understanding」でのCOCA検索結果・例文一覧より

まま、結構「thank you for…」以外の文脈でのエントリーも目立つものの、一応、thanks for/thank you forの文脈での利用もしっかり存在するため(↑のスクショではthankがピンクでハイライトしてあります)、問題ないでしょう。

 

そもそも、thanks以外の文脈もヒットしてくるというのは「for your understanding」での検索でも同じ条件なわけですから……

「for your understanding」でのCOCA検索結果・例文一覧より

…この違いは意味があるものと断定して問題ないように思います。

(こちらも、ask for your understandingとかpray for…とか、別の文脈での利用例もヒットしてきている感じですね。まぁこちらはほとんどがthanksと一緒なので、実際の差はもう少し小さいのかもしれませんが…)

 

とはいえまぁ一応、understanding以外の文脈・表現でも本当にそう言えるのか、チェックしておくとしましょうか。

動詞に何が来てもいい検索……これはズバリ、ワイルドカードの出番ですね。

まずは個人的にアンチの立場であるおかしな子、「yourあり」の方を、「thank you for your *ing」で調べてみましょう。

 

(例によって、検索後に「プレミアムアカウントっていうのもあるよ」という宣伝ページが表示されて固まった際、地味に長いこと待たされるので入力画面に戻ってみた所、検索ボタンが「WAIT ...」になっており、入力のし直しすら認めないという徹底振りでした(笑)。面白かったので、スクショを撮っておいた感じです(笑)。)

 

ちょっと縦に長くなりますが、「これで全て」ということを示せる量であったので、全ヒットをペタリと貼り付けておこうと思います。

「thank you for your *ing」でのCOCA検索結果

なんと面白いことに、トップはずっと見てきた問題の「Thank you for your understanding」だったのですが、それでもやはり42件とかなり少なめ!!


さらに、3位の「Thank you for your amazing」というのは、これはyourの後に動詞が続いているのではなく、この後にさらに何か名詞が続いて、「あなたの素晴らしい○○に感謝」という形(=amzingは形容詞)ですから、「thank you for your 動詞-ing」というスタイルの例文は、ここで表示されているものよりも更に少ないということになりますね!

最後の方の1件しかないやつらなんて、むしろ非ネイティブによる誤用と言えるものすらあるのではないかと思います。

 

一方、このフレーズからyourを抜いてみると……

「thank you for *ing」でのCOCA検索結果

トップの「Thank you for being」は2895件、スクショに収録しきれていない、この下にもまだまだ3桁ヒットのフレーズがジャンジャン並んでいることからも分かる通り、圧倒的な大差!!

 

これは文句なしですね、トップでも数字にして2桁以上も利用頻度に差がある時点で、やはり、「Thank you for your -ing」という形は、ほっとんど使われないものと断言して構わないように思えます。

 

とはいえ、その使われない・おかしな表現の中でも一応一番使われていたのは「Thank you for your understanding」だったということで、これはまぁ一応、一切使われないわけではない形といえるのかもしれません。

その理由としては、結局「Thank you for your」の形の後には名詞をつなげなくてはいけないわけですけど、「理解」に相当する名詞でピッタリ来るのがイマイチ存在しないから、というのがあるのかもしれませんね。

つまり、「Thank you for calling」なら、callはそのまま名詞で電話にもなりますから、「Thank you for your call」とすればよい(ここで「your calling」とするのは絶対におかしい)し、例えば他にも例文の2番目にあった「Thank you for coming」なら、comeもそのままだと名詞にはならないですけど、例えば「ご訪問ありがとう」ということでほぼ同じ意味で「Thank you for your visit」なんていう形でも言えますから、あえて「your」を強調したい場合でも「Thank you for your coming」というのは全くおかしいし誰も使わないといえるものの、「understanding」の場合は、「your」という語を一緒に使いたい場合、ちょうどいい名詞がなかなか見当たらない(なので、仕方なしにyour understandingとする)のではないか……なんてことも思えます。

 

とはいっても、僕は「thank you for your -ing」反対委員会代表ですから(いつ生まれたんだよそんな委員会(笑))、もしも自分で書くなら、「thank you for your understanding」という英文は絶対避けるかな、と思えます。

じゃあどうすりゃいいのさ、って話ですけど、もちろんyourを抜けばいいだけとはいえるものの、お客様へのメッセージとかの場合、「あなたの」というyourという語を入れたくなる気持ちもよく分かります。

なので、僕ならそうですね、「thank you for your consideration」みたいな感じで、「お宅様のお心遣い・ご配慮・ご考慮に感謝」って表現になる、「consideration」という名詞を使うかな、って気がしますね。

 

そもそも、「thank you for your understanding」って、まぁ日本語なら鉄板フレーズとは言えるものの、これ正直、ダウンタウンの松ちゃんが昔から言ってるネタですが、トイレによくある「いつも綺麗にお使いいただきありがとうございます」という表現にも近いニュアンスもほんのり感じられるとでもいいますか…

(松ちゃんは、「このメッセージ見た瞬間、ホンマにゾッとしてもうたでぇ。『綺麗に使うよな?』みたいな、もう脅迫やん、こんなん!」と、それまであまり注目されていなかったこのメッセージに笑いで一石を投じていた記憶があります(笑))

…「thank you for understanding」もちょっと「理解できるよな、お前なら?」みたいな押し付けがましさを感じるとでもいいますか、まぁそんなことないかもしれませんけど(笑)、この表現自体ちょっと微妙なんじゃないかな、とも思えます。

それなら、微妙な差ではありますが、considerationで「ご配慮いただき、ありがとう」の方が、何というか若干の慎ましさがあるような気も、個人的には少しするかもしれません(これも、全くそんなことないかもしれませんけどね(笑))。

 

一応、実際に使われているフレーズなのか、改めてコーパスでチェックしておきましょう。

「for your consideration」で検索してみると…

「for your consideration」でのCOCA検索結果

お、189件!

これと対応する「for your understanding」は95件でしたから、一応、ダブルスコアぐらいの差がある表現とはいえそうですね!

 

一応、こちらも「thank you for…」以外の文脈での例文も散見されたものの……

「for your consideration」でのCOCA検索結果・例文一覧より

例によって検索の条件は同じですし、全体でよりよく使われているのはfor your considerationだ、といって良いのではないでしょうか。

 

…と、一応念のため、ネイティブの意見はないかなと思って検索してみたら、まさにピタリな記事がヒットしてきましたよ(↓)。

 

blog.hubspot.com
こちら、hubspotというクラウドソフトウェア企業のウェブページ上で公開されていた、編集者・ブロガーのMegさんによるブログ記事ですが、まぁもう大分長くなっていますし、ブログ記事なので全編の紹介は控えておきますけれども、メグさんも松ちゃんと同様、「『Thank you for understanding』という表現、いつ聞いてもゾッとするわね」みたいなことを書かれていました。

英語でも「いつもトイレを綺麗にお使いいただきありがとうございます」に近い押し付けがましい雰囲気は、やっぱりあるのかもしれませんね(笑)。


(なお、記事タイトルは「Thank You For Your Understanding」になってますけど、本文の最初(上記リンクカードにも表示されていますね)、一文目は「Thank you for understanding」と、your抜きになっています。

 やはり、基本的にyourがない方が自然な響きの英文なんじゃないかな、ということが窺えますね。)


そして、このゾッとする表現に代わる12のフレーズが紹介されているのがこの記事なわけですけど、全部は紹介しないもののちょろっとだけ引用させていただくと、代替案の一つ目が「Thanks for your comprehension.」で、二つ目が「I appreciate your flexibility.」という感じでした。

(その他の表現は記事をご参照いただければと思いますが、実際最初に挙がってるだけあって、個人的にはこの二つがベストかな、と思えました。)


considerationではなく、comprehensionかぁ、となるほどと思える感じでしたが、このcomprehensionという単語は、第一義的には「包含」みたいな感じで、全てを包み込むことから「理解・知識・了解」みたいな意味合いにもなる単語ですね。

understandingは、何というか「知識として分かる、頭を使って正しい判断をする」みたいなニュアンスが感じられますけど、comprehensionの方は、「全体を見渡して、本質を捉えてそれを受け入れる・了承する」みたいな、何というかより人間の本質に根ざした温かいものを感じるとでもいいますか、単語としてはunderstandより遥かに難しく堅い表現ではあるものの、この事前感謝を表すフレーズにおいては、確かにこちらの方がマイルドかもしれませんね。

 

一方もう一つの「I appreciate your flexibility.」の方は、直訳すると「あなたの柔軟な対応に感謝申し上げます」という感じで、これは日本語の発想からは中々出て来ない言い回しである気もするものの、これはかなり英語っぽいフレーズで、少なくとも「Thank you for your understanding」よりはいい表現かな、って気がしますね(まぁ、ネイティブが「代替案」として挙げている例文なんだから当たり前かもしれませんが(笑))。

 

という所で、意外と長くなったのでこの辺にしようと思いますが、今回の記事最大の結論としては、やっぱり「(thank you forから-ingと繋げるなら)yourって言わないで!」って感じですね!

(本当は記事タイトルも「ゆあないで」にしたかったのですが(yourだけに)、流石に分かりにくすぎたので、「ゆわないで」と日和っていました。どうでも良すぎる点ですが(笑)。)

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