コメ返信や補足その1-49-15:日本人を指す「Japanese」って形容詞なの?

ここ何回かの記事で、Japaneseという単語の使い方(特に「日本人」という意味で)について色々見ていました。

その中で前回は、「the Japaneseという呼び方は失礼ではないけど、a Japaneseはおかしい。Japaneseは形容詞だからね」というような意見があり、「うせやろ!?『日本人』を意味してるんだし、冠詞の後に来る単語だし、意味的にも文法的にも、このJapaneseは名詞では…?!」という疑問が個人的に頭をよぎっていたのでした。


それについて、(まだ詳しく読んでいないためどれだけ分かりやすく説明されているかは不明ですが)結構盛んな議論がされていたQ&Aフォーラムが同じStackExchangeの方で目についたため、今回はこちらを見ていこうと思います。

かなりのレスが付いていて割と長そうなので、前置きはともかく早速参りましょう。

こちらですね(↓)。

english.stackexchange.com

Sssamy(質問者、今年上位43%に位置している回答者でもあり):「the Japanese」(総称としての日本の人々)の中の「Japanese」は名詞なのか形容詞なのか?(質問スコア1点)

 

オックスフォード辞書では、日本人を総称する「the Japanese」の「Japanese」は名詞に分類されているんだけど、私が相談した人の中には、それは形容詞であると主張する人もいたんだ。「the French(フランス人;※注:もちろんこれはFranceの形容詞ですね)」や「the Dutch(オランダ人)」の例に基づいてそう言ってるみたいだね。

どちらが正しいのだろう?それとも、どちらも正しいのだろうか?

  • It took them three hours to get to the Longhua Airport, used as an air force base for the Japanese.
    (日本軍の航空基地として使われていた龍華空港まで3時間かかった。)

  • Apart from the American Indians, the Japanese make some use of lily bulbs in traditional dishes. (出典: オックスフォード辞書より)
    アメリカン・インディアンとは違うやり方で、日本人は伝統的な料理にユリの球根を使うことがある。)

 

(※例によって回答とは別に、この質問文にコメントがついていました。10件もありましたが、せっかくなのでまずそちらから見ておきましょう。)

(この質問へのコメント1)Davo(上位3%に位置する優良回答者):

このスレッドを見ればスッキリするはずだよ。

 

(コメント2)Sssamy(質問者):

それは読んだんだけど、残念ながら何の役にも立たなかったよ。そのスレは抽象的な形容詞が「the」をつけることによって名詞に変換できることを説明しているだけなんだけど、私の疑問はそれが形容詞なのか名詞なのかに関するものなんだ。形容詞だと分かっているならば、「the Japanese」の正しい立ち位置が分かると思うんだけど…。とりあえず、名詞である可能性もあるし、形容詞である可能性もあるってことなのかなぁ。

 

(コメント3)Hot Licks(上位0.63%に位置する超優良回答者):コメントスコア2点

どう解釈するかに依るよね。「the Japanese」は「the Japanese people」の省略版で、「Japanese」を形容詞として使っていると主張することもできるし、省略なしの名詞であると主張することもできるね。英語の構文の「ルール」は、言語の後に発明されたものにすぎないよ。

 

(コメント3)Edwin Ashworth(今年上位0.11%に位置している超優良回答者):

質問の例文はいずれも「the Japanese」を正しく使っているね(ただし、私なら「Apart from」を「Like」に変えるだろうけど // このWikipedia記事が、「名詞的形容詞」を扱っているよ)。これによると、形容詞であることがそうでなくなることは決してないようだ。しかし、文法家の中には間違いなく異論を唱える人もいるだろうね。hypernym(上位語)である「substantive(名詞的なもの)」に反論する人さえいるかもしれない。最も適切な見解は、「呼び方なんてどうでもいいじゃないか。どう使うかが問題なのだ」ということじゃあないかな。ジョン・ローラー(※注:有名な言語学者)なら間違いなくそう言うと思えてやまないね。

 

(コメント4)Sssamy(質問者):

お二人とも、ありがとう。Edwinさん、hypernym substantiveとはどういう意味なんだい?

 

(コメント5)Flater(上位3%に位置する優良回答者):

@EdwinAshworthさん:OED(※注:オックスフォード辞書)が明示的に名詞として挙げている(Japanese)のであれば、それはもう単なる形容詞ではないということに自動的になるのではないかい?文法家の間での議論はともかく;現在は名詞として定義されているので、その定義を正しい英語として受け入れる必要があるんじゃないかと思う。お示しのリンク先では、「elderly」は名詞として定義されていない(したがって、必ず名詞的形容詞でなければならなくなるわけだね)ため、それは「Japanese」とは無関係に思えるよ。

 

(コメント6)BillJ(今年上位0.66%に位置している超優良回答者):

質問の例では、「Japanese」は「fused-head(主要部融合)」構文の形容詞だね。そして、「The Japanese」は一般的に使われる名詞句で、これは「the」によって限定されており、主要部と修飾語である「Japanese」が「fused(融合)」して「Japanese」という一語になるわけだ。我々はこの語を日本の住民を意味するものと理解するね。

 

(コメント7)Peter Shor(上位0.09%に位置する超優良回答者):コメントスコア1点

the Japaneseは、名詞としても形容詞としても捉えることが可能だね。

 

(コメント8)Edwin Ashworth

@Flaterさん。ノー。辞書は文法の新しい学術的知見を取り入れるのに時間がかかるものだ(OEDは限定詞/限定詞格を採用している?AHD(アメリカ・ヘリテッジ英語辞典)やRHK Webster's辞書は採っていないけど、Collinsは採用しているね。)ACGEL(英文法語法大全)もCGEL(ケンブリッジ版英語文法)も「the Dutch」「the French」などの非冠詞を形容詞に分類しているよ(実例も挙げられている)。CGELでは、『形容詞のかなり限定された範囲で、特別な解釈を伴う融合頭構文が発生する(「名詞への変換を受ける」ではない)』となっている。このような分野だと、上記のような由緒ある文法書が辞書に(OEDにさえも)勝るのは当然といえば当然であろう。

 

(コメント9)Edwin Ashworth

@Sssamyさん。ここでは、一部の文法家が使っているRHK Websterの定義を使うことにするよ。『substantive: 名詞-10. 代名詞、形容詞、または名詞として機能する他の単語もしくはフレーズ。』Flaterさんはここで紹介した他の辞書の定義と比較することで、このような情報をまともな文法書以外のもの(時にはそれすらも)に頼ることの不適切さに気付いてくれると期待したいね。

 

(※以下、回答として投稿されたものです。)

tchrist(上位0.04%に位置する超優良回答者):回答スコア1点

コメントでBillJさんがこう書いていたね:

 (上記コメントの引用、省略)

他のコメンテーターは、名詞化された形容詞の概念について言及されていた。これは、なぜ人々が日本人を意味する際に「the Japanese」と言うことは可能なのに、「*a Japanese」と言うとおかしく聞こえるのかを説明するものだね。同じことは、「the old(古い人)」という言い方をするときにも見て取れるが、ここでも「*an old」は非文法的になる。


OEDは、名詞としてのJapaneseをこう書いている:

以前は、-es.という形は複数形を伴う真の名詞として用いられていた;現在は形容詞としてのみ絶対的に使われ、複数形としては不変である:a Japanese, two Japanese, the Japaneseのように。


Wikipediaの名詞化形容詞の記事には、こう書かれている:

英語における名詞化形容詞の最も一般的な出現は、形容詞が集合的なグループを示すために使われる場合である。これは、the poor people(貧しい人々)のようなフレーズが、the poorになるようなケースで起こる。形容詞のpoorが名詞化され、名詞のpeopleが消えている。この方法でよく使われる他の形容詞には、rich(豊かな)、wealthy(裕福な)、homeless(ホームレスの)、disabled(障害のある)、blind(盲目の)、deaf聴覚障害のある)などがあり、また、English(イギリス人)、Welshウェールズ人)、Irishアイルランド人)、French(フランス人)、Dutch(オランダ人)のような特定の人口名詞も同様である。

こちらの回答も参照されたい。

 

(※このtchristさんの回答にも興味深いコメントが付いていましたが、残念ながら返信がつかなかったようなので省略します。

 以下はまた別の回答です。)

 

Flater(先ほどコメントでも登場):回答スコア0点

それらは名詞である*

*素人考えではあるけど。

The Japanese
The French
The Dutch

これらはすべて正しいんだけど、他のいくつかの国籍については同じことが当てはまらないんだね。

The Belgians(ベルギー人)
The South Africans(南アフリカ人)

OEDで上記5つの国籍すべてを調べてみたら、この全部において、これらの単語は明確に定義された名詞であることにも気付いたんだ。

Japanese(日本人)、French(フランス人)、Dutch(オランダ人)、Belgian(ベルギー人)、South African(南アフリカ人)(※注:当初各語にリンクを貼っていましたが、どうやらOED辞書のリンクはURLが変わったのか、どれもリンク切れでした。)

私には、「the Japanese」は名詞のように思える。その用法が、元々の形容詞に基づくものであることは理に適っているね。

たまたま形容詞と同じになっただけで、OEDでは名詞と形容詞に別々の定義があり、したがって文法的には別の単語になっているわけだ。

興味深い点

最初の3つの例は、いずれも語尾が「s」っぽい音になっており、単数形と複数形の違いが聞き取りにくくなっているね。この区別は、私が思いつく限り全ての国籍に当てはまるようなので、これは関連しているような気がするよ。

The Swedesスウェーデン人)
The Finnish(フィンランド人)
The Danish(デンマーク人)
The Russians(ロシア人)
The Chinese(中国人)
The Bulgariansブルガリア人)
The Americansアメリカ人)
など、まだまだ沢山…


編集 こちらは国籍のリストだよ。

このリストの大部分に目を通したんだけど、複数形の「s」があるかどうか(国民を指す場合)は、その国籍が「s」のような音で終わっているかどうかが常に関係しているように思う。


例外はあるけれど…

指摘してくれたGEdgarさん、ありがとう。

Finnishは、人々を指す場合は名詞として定義されないんだね(名詞は言語を指す場合のみ)。

この場合、「the Finnish」は名詞ではなく、(Edwin Ashworthさんのコメントのように)名詞的形容詞となるようだ。

(この定義された名詞が存在しないことがOEDのミスであれば別だけど、存在しないんだから、それはわからないね。)

  1. 辞書で名詞と定義されているのであれば、名詞と考えるべきであろう。
  2. 名詞が見つからなくても、その単語が形容詞として定義されているのであれば、名詞的形容詞と考えるべきであろう。
  3. 名詞としても形容詞としても定義されていないのであれば、それは正しくない英語である(ただし、借用語は定義されていなくても正しいとされるわけではない、という条件付き…?その辺りはよく分からない)

 

(※この回答にはさらに13件もコメントが付いていました。長すぎますが、せっかくなので見ていきましょう。)

(この回答へのコメント1)GEdgar(今年上位0.41%に位置している優良回答者):コメントスコア2点

The Finnish なのか the Finnsなのか?The Danish なのか the Danesなのか?The Scottish なのか the Scotsなのか?

 

(コメント2)Flater(回答主):

@GEdgarさん:同義語があっても、その単語がすべて(OEDでは)名詞として定義されているという事実は変わらないね。どちらかというと、その例は、複数形の「s」が既に「s」の音がない所にのみ現れるという、更なる例となってるね。ちなみに、お示しの例をチェックしてみたけど、「Finnish」だけはOEDで名詞として定義されていないんだね(人々を指す場合。言語を表す名詞としてであれば、やはり名詞として定義されている)。なので、「the Finnish」(人々を指す)は名詞的形容詞というのが正しいだろうね(最初の質問に対するEdwin Ashworthさんのコメント参照)。

 

(コメント3)Peter Shor(先ほども登場):

I am a JapaneseI am a ChineseI am an AmericanI am a Russianというフレーズは、間違いなく皆に言われているね。では、I am a FinnishI am a Danishと言う人はいるだろうか?この場合、I am a FinnI am a Daneと言うんじゃないかと思う。

 

(コメント4)Flater(回答主):コメントスコア1点

@Peter Shorさん:「I am a Chinese」このフレーズは一度も聞いたことがない。I am Chinese と I am a Chinese [+名詞が続く] なら確かに聞くけれど。どちらも、それは形容詞だね。Japaneseも同じかな。Russian は、厳密には一人のロシア国民を指すものであり、「Russian」は決してその国の国民を総称するものではないので、その例のリストとは全くフィットしないんじゃないかな。

 

(コメント5)Peter Shor

the living(生者)やthe dead(死者)とも言うことが可能だよね。でもdeadlivingは名詞ではなく形容詞だ。I am a dead とか I am a livingとは決して言わないであろう。では、I am a Finnishとは言えないのに、なぜFinnishも形容詞ではないと思うんだい?

 

(コメント6)Flater(回答主):

@Peter Shorさん:名詞的形容詞が存在しないとは決して言っていないよ。存在はするね。定義された名詞が存在しない場合(the elderly(高齢者)、the living(生者)、the dead(死者))に適用されるんだ。しかし、Japanese(と、どうやらFinnishだけは除く他の国籍)の場合、名詞として明示的に確立された定義が存在しているわけだね(その国の国民を指す場合)。

 

(コメント7)Peter Shor

OEDでは、Japaneseという名詞の下に引用として挙げているよ:日本人と台湾人の対話を。つまり、「Japanese」という名詞を使う場合は、I am a Japaneseという構文が含まれているんだね。だから、Finnishという名詞をリストアップしていないわけだ;I am a Finnishなんて誰も言わないからね。

 

(コメント8)Flater(回答主):

@Peter Shorさん:なるほど納得。ただ、私が提示した反例よりもまだ珍しいケースのように思えちゃうね(もちろん、あなたのはそれと関係なく正しいものではあるけれど)。そして、それでも私の回答が無効になるわけではないよね。「Japanese」は、この単語の他の定義に関係なく、集団(日本国民すべて)を指すと明確に定義されているんだから。

 

(コメント9)Flater(連続投稿):コメントスコア1点

@Peter Shorさん:『だから、Finnishという名詞をリストアップしていないわけだ;I am a Finnishなんて誰も言わないからね』一人の国民を指す名詞と、全ての国民を指す名詞を混同しているのでは?この2つは、仮にたまたまスペルが同じであっても、私が知る限り文法的には何の関連もないものだよ。異なる定義が適用されるはずだね(ロシア人全員を指して「the Russian」とは誰も言わない)。単数形が総称を指す、あるいはその逆の自動的な関係は存在しないよ。

 

(コメント10)Peter Shor

全ての国民を指す名詞は、時に形容詞として捉えることが可能である。ゆえに、I am a Finn, Danish, Spaniard, Frenchman, または dead manなどと言おうとする際に、the Finnish, the Danish, the Spanish, the French, それから the deadと言うことが可能なわけだね。また、OEDがFinnishを名詞と見なさない理由もここにある。このような集合的な意味を認めてしまうと、ほとんど全ての形容詞を名詞と考えなければならなくなるからだね。

 

(コメント11)Flater(回答主):

@Peter Shorさん:『全ての国民を指す名詞は、時に形容詞として捉えることが可能である』これは間違っているよ。全く逆で、形容詞が名詞として使われることもあるんだね。これは、私とEdwin Ashworthさんとが既に議論していた、名詞的形容詞だよ(以前のコメントで「the living」と「the dead」に言及した際、君自身もそれに言及していたね)。君の発言内容は、例として挙げられている「the Finnish」には当てはまらないんだ。このフレーズは、(国民を指す場合)名詞として定義されていないからね。

 

(コメント12)Flater(連続投稿):

@Peter Shorさん:君の最後の数コメントは、私の回答の妥当性を問うものでも、意味のある訂正を行うものでもないね。自分自身と矛盾し始め、自分自身の主張するルールに合わない例を挙げているんだから。申し訳ないけど、これは無意味な議論だよ。

 

(コメント13)tchrist(先ほども登場):

@Peter Shorさん、danish(デニッシュ)を名乗る人は、ゼリードーナッツ―あるいはKennedy(ケネディ)と間違われる危険性があるかもしれない、ってことを考えてみてもいいかもね。:)  


(※最後にもう1件別の回答が付いていました。)

 

Greg Lee(上位2%に位置する優良回答者):回答スコア0点

副詞の「partly(部分的に)」で修飾できるので、形容詞だね。名詞は副詞で修飾できないから。

 

…という、極めて白熱した、濃密な議論が交わされていましたが、例によって長すぎたので以上をまとめただけで時間が尽きてしまいました(笑)。

ちょうど、関連ネタについてまたアンさんよりご質問をいただいていたので、それも含め、次回また今回の話のおさらいから始めていく形にしようかなと思います。


感想としては、まぁ自分で見ておいてなんですけど、やっぱりこういう細かすぎる文法・品詞解剖系の話は、正直「どーでもえぇわい!」感を覚えてしまうものといえるかもしれませんね(笑)。

(とはいえ、どちらのスタンスの主張にも理を感じられましたし、議論として非常に面白いものだったのには違いありませんが。)


アイキャッチ画像は、例によっていいネタがあまりにもなさすぎたため、最後争っていたお二方にちょっと冗談を混ぜてコメントを投げて空気を柔らかくしてくれていたtchristさんの書き込みの、デニッシュをお借りしましょう。

…と思ったら万能いらすとやに、まさかのデニッシュのイラストが存在しなかったので、一番近いものに思えたパルミエのいらすとをお借りしました(デニッシュパンとは結構違うかもですが(笑))。

tchristさん、今まで見てきた中で圧倒的に断トツで全体評価の高い回答者(多分ですが)なだけあって、大変良いコメントでした(デニッシュとケネディの関連性は分かりませんでしたが(笑))。

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