コメ返信や補足その1-41:僕は彼女にキスをする

何度か脱線で話が逸れましたが、いただいたコメントはまだ途中状態だったので、そちらに戻って参りましょう。

最早何の話だったか記憶の彼方ですが、時制の一致について触れていた、この記事(→コメ返信や補足その1-35:俺の中では真理なんだよ(笑))が大元ですね。

それでは、アンさんにいただいていたコメントの続きです。

 

ちなみに、

この「野球をしている」っていう日本語、ややこしくないですか?

野球をしていると言っても、

「彼の息子さん、今何してるって?」みたいに、彼以外の2人の会話で息子さんが今現在何をしてるかっていうことを言いたい場合は…

「野球してるって言ってたよ」

くらいのニュアンスで、

he said that his son was playing baseball.

となりそうですが、

「野球してる」って、進行形なのかどうなのか問題…まぁ日本語でも同じことなんですけど、日本語で「え?今?」とならないのは、ただの慣れであって、英語が特にややこしいっていう話でもないんですかね。

ちょっと思っただけです笑

 

⇒これはめちゃんこややこしいというか、補足しておきたいなと思っていた点でした。

実際この野球の例文は良くないというかちょっと分かりづらく、結構ややこしいかもしれないな…と書いてて思っていたのです(じゃあそんな例文やめとけよ(笑))。


とはいえ分かりづらいからこそ補足でネタが広がるかもしれないなと思っていたというのも実際でありまして、これは結局、「日本語では分かりづらいけれど、英語だと違いがハッキリしている」話になっているんですね。

まさにコメントでアンさんがおっしゃられていた通り、「野球をしている」という日本語は、今現在野球をプレイ中(休日の昼下がり、リトルリーグの練習試合みたいな感じで)なのか、それとも部活に入ってるとかで、普段野球を頑張っているのか、区別がハッキリしないわけです。

ところが英語だとこれは明白に違う表現が用いられまして、前者はもちろん現在進行形で「he is playing baseball」、一方後者は単純な現在形の「he plays baseball」になるため、こないだの例文は、「息子さんは、普段野球をやっている」という意味になることが明らかだという感じでした。

 

特にこの単純な現在形の使い方に関しては、マーク・ピーターセンさんやミントンさんの本を読む前の僕含め、結構多くの方がちゃんと理解していない点になっているのではないかと思います。

まぁ実は以前の記事でもう何度か軽く触れていたことがあったんですが(未来形の話をしていた時の、この記事とかですね)改めてちゃんと触れてみますと、単純な現在形の英文というのは、「現在の習慣」を表すものであり、決して「今起こっていること」を描写する文ではないのです。

どういうこっちゃという話かもしれませんが、ちょうどマーク・ピーターセンさんの本で触れられていた例文に実に分かりやすい例があったので、お借りしてみましょう(もう引用しすぎた本の話なので引用ではなくネタを拝借して自分なりに語る感じにさせていただきますが…)。


単純にして分かりやすいその例文がこちら、「I kiss her.」


これ、中学生であれば、ほぼ間違いなく「私は彼女にキスをする」と訳すと思うんですけど、実はこれは×なんですね!

…といってもまぁ、例によって日本語の表現自体の幅が結構広いため、必ずしも×とはいえないかもしれないんですけど、少なくともこの文を読んで僕たちが浮かべるイメージは、英文が実際に表している意味とは違うパターンになってることがほとんどではないかと思います(書いた日本語訳が、たまたま不正解だとは言い切れないものだったとしても)。


ズバリこの英文は、「今から彼女にキスをしようとしている」(多分、多くの人はこういうイメージを浮かべるはず)という意味でも、はたまた「まさに今彼女とキスをしている」という意味でも全くなく、正しいニュアンスは、「僕は普段、彼女とキスをする習慣がある」ということしか言っていないんですね…!

改めて、この英文は、この台詞を発した瞬間のアクションについては一切何も言及しておらず、「日常的に、彼女とキスしてま~す」という、「いやそんなこと言わなくていいから(笑)」としか思えない意味にしかなっていないのです。


つまり改めて一般化すると、現在形というのは「現在の習慣」を表す文であり、今まさにやっていることを言いたいのであれば、現在形を使うことはできないという、とても意外な話になっているといえましょう。

例えば「I walk to school.」という文は、「学校に向かって歩いています」という意味は1ミリもなく、「(普段)学校へは徒歩で通っています」という内容の発言でしかありません(もちろん、まさに今向かって歩いていることを言いたいのであれば、「I'm walking to...」ですね)。

他にも「I punch him.」なら、「彼を殴ってやった」でも「彼を殴るぞ!」でも「彼を殴りてぇ~」でもなく(まぁ最後は違うのは明らかですが(笑))、「私は彼を日常的に殴っている」というむしろ一番ヤベェ意味になっている、ってことなんですね。

 

ぶっちゃけ僕は、大学院の終わり・日本を発つことが決まって各種英語本(特にピーターセン本&ミントン本)でこの話を読んで学ぶまで、正直全くその意識・認識を持てていなかったように記憶しています。

中高・さらにいえば大学・大学院で英語を10年以上学んでいたのにこんな現在形の基本的すぎることすら理解していなかったのもお恥ずかしい限りですが、そんなのでもちゃっかり大学は合格できましたし、案外なんとかなるといえる&おそらく多くの方もそこら辺はちゃんと抑えられていないのではないかな、という気がします。

(もしかしたら「いやお前だけだよ(笑)、中学生ですら全員分かってるから」って話かもしれませんが(笑))

(なお、「自分がちゃんと学んでなかっただけなのかもしれない」というのは実際そうで、この話を各種英語本で学んだ後、「そんなこと、高校の頃の英文法書には載ってなかったぞ?!日本の英語教育、大丈夫か!?」と思って高校の頃に買った英文法書を改めてチェックしてみたら、実は案外ちゃんとその旨書いてあるんですよね(笑)。

 ただやっぱり、めちゃくちゃ小さいor短い説明、かつあまりにも無機質な説明であることが多く、ほとんどの学生にとって印象に残る話になっていないようには思えます。)

 

もう一つ分かりやすい「現在形の意外な意味」の話を紹介してみると、こちらはミントン本の現在形の章の冒頭にあった話ですが、昔あった日本のタバコ会社のキャッチフレーズに、「TODAY I SMOKE.」というものがあったそうなんですけど、これは全く意味をなさない英文であり、ミントン先生はこの宣伝文句を作った人を本文中でボロカスに非難していました(まぁそこまででもないですけど(笑))。

つまり、「I smoke.」という英文は、「私は日常的にタバコを吸っている=私は喫煙者です」という意味になるわけですが、ここに「Today」という「今日」という単語がついた場合、あえて日本語にすると「私は今日、普段からタバコを吸っています」という、マジで意味不明な、ミントンさんのイライラも理解できるぐらいの支離滅裂文章になっているということなんですね。

改めて、現在形というめちゃくちゃ基本的に思える英文は、実は現在を表す特定の時間を表す語(todayやnowなど)と相性が悪く…というか、基本的にそういう語と一緒に使うことはできないというんだから驚きです(使ったら、上の広告のように、英語ネイティブにとって全く理解に苦しむ気持ち悪い謎文となってしまう)。


我々日本人的には、「本日、私はタバコを吸う」とか「今日、タバコを吸おう」とか言ってるみたいな気がして、正直全然自然に思えるんですけど、残念ながら正しい英文法・英語解釈的にはそういう意味には絶対にならない(本ではミントンさんがいくつか、その場合どういうべきかを挙げてくれていましたが、単純にはやっぱり「I will smoke today.」とか言わなきゃいけないという感じですね)という話になります。


そんな感じで、現在形はぶっちゃけ我々が考えているより案外度量の狭いヤツで、意味不明な文(というか意図と違う意味になってしまう文)になることが多いという懸念があるため、その意味で、僕は助動詞を適当につけて少なくとも非文になってしまう可能性だけは回避したろ…と考え、shouldとかcanとかを頻繁につけていることが多いかも…といえそうです(タバコの宣伝文句も、willさえつければOKだったわけですしね)。

特にshouldとかwouldとかの助動詞の過去形は、以前書いていた通り仮定法のムードが発揮されるなど、想像以上に色んな意味を持ってくれており、適当に使っても案外都合よくそれっぽい意味になってくれる(相手がそれっぽいニュアンスで受け取ってくれる)ことが多いので、とにかく助動詞を頻繁に使って、意図したのと違うニュアンスになってしまいがちな「裸の動詞の単純現在形」は避けることが多いかもしれませんね。

(まぁそんな行き当たりばったりの適当用法、決して褒められたものではなく、そんなことしてるからちっとも英語が話せるようにならないともいえるかもしれず(笑)、オススメするような話ではありませんが……)

 

…と、しかし、「現在形は、実は今現在のことを表すのが苦手なんですよ」などと聞くと、「いや待て待て~い、『I love you.』はどーなる?!…っていうかもっと基本的な『I am a student now.』とかも、普通に今現在の話で裸の現在形を使っとるじゃあないか!!」と思われる鋭い方もいらっしゃることでしょう。

これがズバリ英語の厄介な所で、実は、「現在形そのまんまでも使える(まぁ「I kiss you.」とかも使えるっちゃ使えるので、いわば『我々日本人が想像する通りの意味になっている』の方が近いですかね)動詞」も存在するんですね!


そちらへ話を広げてみようと思いましたが、ちょっと今回時間がなく、そもそも毎回長すぎるというキライもあるので、まあまあ割といい分量にはなりましたし、今回の目玉ネタは「『I kiss her.』を正しく解釈できる人0人説」だったということで(まぁ0人は言いすぎですけど(笑))、続きはまた次回触れさせていただこうと思います。


アイキャッチ画像は当然こちら、キスのいらすとをお借りしましたが、VRゴーグルをはめて一人で空しくキスをしようとしている男子学生のいらすとと迷ったものの、悲しすぎるのでノーマルのにしておきました(笑)。

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