コメ返信や補足その1-38:入口?人口?

早速、前回本題部分に入る前に脱線ネタで終わってしまっていたコメントの続きに参りましょう。

 

時制の一致、、あぁ、ありましたねぇ。それこそ、例外的に今でも続いてるという意味を敢えて伝えるつもりではなく過去形にしなかったとしても、たいした問題でもなく伝わるような気がしますが…


これって、セリフ調にすれば一致させなくていいとか、そんなルールなかったでしたっけ?(適当)

 

⇒時制の一致も、かなりややこしい……って程ではまぁ正直、他の難解な文法事項と比べたらそこまででもないかもしれませんが、「日本語と大分違う」という断絶は確実にありますから、実際に使いこなすのは結構大変な項目ですね。

僕も(直せる文章・書き言葉はともかく)会話では、ぶっちゃけもうしっちゃかめっちゃかです(笑)。

「過去形にし忘れても、たいした問題はなく伝わる気も…」という点は、これまた(こないだの記事で書いていたように)「自分の中では不変の真理だから」とか強引に現在形で通そうとすることの多い自分が言う話じゃないですけど(笑)、やっぱり、あくまでも日本語で考えたら「大した問題なくね?」と思えるだけといえますから、適切に時制が変えられていない文は、英語話者にとって、意味を誤解しかねないものになってしまう(決して文法的におかしいとか間違いになるわけではないだけに、そのまんま完全に誤解されてしまって、より厄介な状況につながりかねない)ため、これはやはり注意して正しく使った方がいい部分な気もしちゃいますね。


ちょうど似たような話で、もう何度も引用させていただいているマーク・ピーターセンさんの本に似たような話があったのを思い出しました。

ピーターセンさんの著書はちょっともう引用しすぎなきらいがあるため、直接的な引用ではなく思い出してエピソードを紹介させていただきましょう(まぁ結局流用するなら、ちゃんと引用する方がよっぽどいいのかもしれませんが…)。


マークさんは大学の頃、日本語学科に所属していたはずですが、これは学校の文化祭か何かで、学科の学生みんなで日本にちなんだ催しをした時のこと……(だったはずです)。

教室の案内図だかを日本語で作製することになり、バッチリ完成も間近の頃、マークさんは一つミスがあることに気付きます。

それがズバリ、「入口」という表記が「人口」になってしまっているという、致命的なミス……。


そこでマークさんは、その部分を担当したクラスメイトの女学生に、ここは直した方がいいんじゃないだろうかと伝えた所、その女学生は、

「何もそこまで細かいことを言わなくたっていいじゃない。どっちも似たようなものだし、見れば普通に分かるでしょう?」

…と言って頑として譲らず、結局そのままの表記で地図を印刷することになってしまった……というエピソードだったはずですが、この出来事を引っ張ってマークさんは(確か本の冒頭、冠詞の章のイントロの小話でしたが)…

「この女学生にとっては、『入口』と『人口』はほぼ全く区別がつかない些細な違いしかないものであり、自分が見分けをつけられないのだから、他人だって、あわよくば日本人にだって、違いは大してないものなはずだ、と思い込んでいたように思われる。

 ところが実際、日本語ネイティブにとっては、これは極めて滑稽なミスになっているといえるであろう。

 日本人が話す英語も、これと似たようなことが往々にして、非常に頻繁に見受けられる。

 『自分にとって違いがよく分からないし、どうせ大した違いでもないだろう』と決め込んで、『the』や『a』などをあまりにも適当に、『とりあえずそれっぽいからtheを付けておこう』程度の意識で作られたいい加減な英語が、あまりにもよく目に付くのである。

 これはハッキリ言って時に『入口』『人口』以上の大きな違和感を生むことになるため、英語において最重要ともいえる冠詞の使い分けをないがしろにした英語を用いている限り、カタコト英語の呪縛からは逃れられないのではないかと思われる…」

…的な文を書いていてくれていたのが、大変印象に残っています。

(念のため本をチェックしたら、こちらは既に何度も引用させていただいている『マーク・ピーターセン英語塾』に収録のエピソードで、細部は多少違ったものの(マークさんは大学院生で、アメリカの大学で開催される英語研修で日本人の研修グループ担当になり、参加予定の日本人向けの資料にあったキャンパスマップに、アルバイトの日本語学部の女子学生が自分の知ってる単語をサインペンで書き加えていたのを見て……みたいな感じでした。…まぁそこはかなりどうでもいい違いですが(笑))、概ね合っている感じでしたね。)


もうこれは本当まさにそうなんですよね。

僕も、英語を使うにあたり、「自分では違いがよく分かんねぇし、日本語的にほぼ違いはないから、スマンけど無視させてもらうわ」というのはあまりにも多い感じで(まさにaやtheといった冠詞などを筆頭にですね)、まぁ「自分が分からないから、相手も分からないに違いない」とまでは思っていないものの、少なくとも自分では上手く使い分けらんないから、そっちで上手く察してくれ、という無責任な姿勢にはなっており、これはいわば自分の常識を相手に押し付けている感じも同然ですから、改めたい所ですね。


(…って言っても、軽く反省して改められるぐらいならとっくにそうしているわけで、特に日本語ではその概念を表すことすら困難なものの場合、よっぽど経験を積んで習熟度が上がらないと、どれだけ頑張っても無意識・自然に、適切に使い分けるのがすごく難しい、って話に尽きるわけですが……。

 ただこの辺に関してまた似たような話で、ちょうどこないだミントンさんの本を引っ張っていた際(助動詞の章の、微妙な表現の使い分けについて)、その部分は記事内で触れていなかったものの、

たとえピッタリ当てはまる日本語訳が見つからないとしても、ネイティブスピーカーに向かってこの表現を使えば、必ずこのようなメッセージが伝わってしまうことを覚えておいてください。

…と、「自分たちが違いを意識できなくても、相手にとっては確実に違うものだから注意してくれよな」という警告を目にしていたのですが、これも大変印象的でした。

 仮に自分では中々使いこなせない微妙なものでも、少なくともそういう意識をもっておくのは大事というか、そういう意識をもって臨めば少しずつ違いも見えてくるのかもしれないな、という気もしますね。

…改めて実際は、特に冠詞とかですと、そうそう簡単に自分の血肉として使いこなせるものではないわけですが……)

 

と、やや話が逸れましたが、日本語で同じ(あるいは違いが分からない)ものでも、英語では全然違うということはよくあるので、注意しておくというか意識しておくと良いかもしれません、というお話でした。

続いての「セリフ調にすれば一致させなくていい」という話に関しては、これまた関連ネタで非常に分かりやすすぎる解説がミントンさんの本にあり、また一部引用させていただこうと思ったのですが、またまた非常に明快で役に立ちすぎる話であるため、結構長~く引っ張らせてもらいたい形になっているため、ピーターセンさんの入口ネタの紹介やらで長くなった今回はちょっと保留にして、次回触れさせていただこうと思います。

ということでこの点は次回持ち越しで、続きのコメントに参りましょう。

 

He said that his son played baseball.

「彼は、息子さんが野球をしていると言っていた。」


今でも野球をしている場合は、

He said that his son plays baseball.

ですが、“日本語訳は同じで”、

「彼は、息子さんが野球をしていると言っていた。」

になるわけですよね?

とりあえずは、今も継続して野球してるかどうかなんて知らんし。ってことでいいですか?笑


そして、

彼が言っていた時点でもう息子さんは野球をやっていなくても、

He said that his son played baseball (as a boy).

のように、

「彼は、息子さんが(少年時代に)野球をしていたと言っていた」

と、同じ英語でも日本語訳は違った感じになるわけですよね?


⇒前半の「従属節が現在か過去か」の部分、これはまさに、日本語にした場合、あえて補足的な感じの情報を足さない限りパッと見では同じ文章になってしまうわけですが、これはやっぱり、話し手の意識の上では明白な違いがある形ですね。

He saidと主節が過去形なのに、続く部分(従属節・that節)が現在形(plays)であれば、これは時制の一致の例外ということで、「彼は、息子さんが野球をしていると言っていた。そして息子さんは今でもよく野球やってるみたいだね」というニュアンスがハッキリと表れ、一方時制の一致が働いて、playedになったら、息子さんは今ではもう野球をやっていないということが示唆される……かどうかは、実は僕は正直分かんないんですが、何となく、どっちか分からない場合は、原則に従って時制を一致させるのが通常に思えますし、必ずしも今やってないことは確定しないんじゃないかな、という気がします。

つまり、時制の一致ルールを無視して現在形にしたら、これは確実に今でもよく野球をやっていることがハッキリと示唆されて、特に今のことは分からない状況(数年前のことを思い出して、そういえばそんなこと言ってたなぁ、みたいな感じ)であれば、これはそのままplayedとするのが普通に思えます。

(ただし、これはあくまで「He said」だからだとも言えて、例えば「I thought(私は思った)」という文に従属節が続く場合、続く部分を過去形にしたら、「今は違う」ということがハッキリと示唆されているように感じられると思います。

例:子供に、お母さん(=自分の妻)と出会った時のことを話しているような場面で…

「I thought she is beautiful.」なら、「お母さんのことを美しいと思ったよ」(そして「今でも美しいと思っている」ということがハッキリと暗示されている)となり、一方、「I thought she was beautiful.」なら、「お母さんのことを美しいと思っていたよ」で、「(今は思ってないけどね)」ということが仄めかされる話になっている。

…ので、これも結構お母さんが聞いたら感じる気持ちが変わってくるであろう、大いなる違いがある話になるわけですけど(笑)、原則として英語ではそう言ったらそういう意図になってしまうはずなので、注意が必要だといえましょう。)


では続いてコメント最後の、「発言時に、『野球をしている』というのが既に過去だった場合」についてですが、これは、そもそもの時制の一致のルールが、

  • 主節が現在→過去と一段階レベルが下がったら、従属節の時制も同じように一段階レベルを下げる

…というものなので、例えば「My son plays baseball.」というお父さんの発言を振り返った場合、「He said his son played baseball.」となる(現在形のままを貫くと、時制の一致の例外で、「今でもそう」ということが強く示唆される)…というのは上述の通りですけど、これが元々「My son played baseball.」と、「息子は野球をやっていました。」というように元々が過去形であった場合、この発言を振り返って過去形で語る際は、従属節の過去形をさらに一段階「過去化」してやりまして、過去形→過去完了形になり、

「He said his son had played baseball.」

となるため、実は、この場合、英語自体も変わるんですね。

 

……と、僕は高校時代そう習ったのですが、次回引用予定のミントン先生の著書を改めてパラパラ読んでいたら(次回触れるのとは別の章ですが)、驚きの情報が掲載されていました!

一段落程度なので、引用させていただきましょう。


出典はこちら、これまではシリーズ一作目を見ていた『ここがおかしい日本人の英文法』の完結三冊目(III)の、209ページからになります。

https://www.amazon.co.jp/dp/4327451800より

 

元々の発言が単純過去だった場合は、すでに完結している行動について述べているわけですから、過去完了も単純過去も両方可能です。意味もまったく変わりません。

  • "I graduated from Harvard."
    →Ian claimed that he graduated/had graduated from Harvard.
    イアンはハーバード大卒だと言っていた。

  • "Taro lent me his car."
    →He said that Taro lent/had lent him his car.
    太郎が車を貸してくれたと彼は言った。

  • "I borrowed it for a week."
    →He said he borrowed/had borrowed it for a week.
    彼はそれを1週間借りたと言った。


まさかの、「主節を過去にしたら、パズルのように、従属節の過去レベルも一段階下げる」というのは、どうやらミントン先生によると全然どうでもいい話だったようで、アンさんの書かれていた通り、「野球をやっていた」という昔の発言を過去の時間軸に持っていっても、そのまま普通に過去形のまんまでも何ら問題がないとのことですから、実際区別がつかないこともあるということですね!


このミントン先生の解説は、ずっと前読んだはずがすっかり忘れていたので、個人的にとても新鮮な(再)発見でした。

日本の文法書では、ここは確実に過去完了にしないといけないと書かれていたように記憶していますけど、僕はやっぱりミントン先生の説明を信じたい所です。

(変えなくていいなら、その方が楽ですしね(笑))

ただし、紛らわしくなるのは間違いないので、紛らわしさを避けるためには、過去完了にした方が、「過去の話をしていたんだな」ということがハッキリするので、自分で使う際は分かりやすいそっち(過去完了に変形する)にしてもいいかもしれません。


という所で、案外奥が深かった時制の一致はひとまずこの辺にして、次回は途中触れていた、「台詞の引用」に関する話(=話法)を見ていこうと思います(また完全にミントンさん頼りですが)。

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