似通った英単語に注意しよう(その10-2:ガラスは液体?)

前回は「グラス」という紛らわしいスペルの存在する単語に触れており、長々と色々語った割に、一つ書こうと思っていて忘れていたネタがあった…という感じで記事を終えていました。

全く大した話でもないんですけど、ふと思いついていたそのネタは、glass=ガラスの方からで、ズバリ、「ガラスは液体?!」というものですね。


これ、僕は高校の頃の授業で教わった話で、

「ガラスって硬いし固体に思えるかもしれないけど、あれはめっちゃくちゃ粘度の高い液体なんだよ。その証拠に、歴史のある教会とかに張られているステンドグラス、あれ、よく見てみると、長い年月で重力によりごくわずかずつ下の方に流れていっている結果、ガラスの下の方が少し分厚くなってるんだね」

…と先生が語っていた話が今でも印象に残ってるんですけど、めちゃくちゃ面白いですよねぇ~。


僕なんぞは、こういう話は本当に面白いと思えるため、塾でアルバイトをしていた時、状態変化の辺りの話になると鉄板ネタのように嬉々として語っていましたが、前回、草の方は古い言葉で「grow」や「green」と同源の語だけど、ガラスの方の語源は何だろうなぁ~と思いWikipediaを見ていたら…

ja.wikipedia.org

語源の方はどうやらオランダ語の「glas」(カタカナ表記だと「フラス」に近い)というあんまり面白くないものだったんですけど、それ以上に気になる情報が…!!


ガラスの物性について、↓のナショジオの記事の引用などとともに…

なお、例えば古い建物の窓ガラスは、それが理由で上部のガラスが下の方に垂れたような形になっているとされたこともあったが、計算によれば千年くらいではとてもそのような差は起きず、実際はガラスの製法によるもので、建設当初からそのような垂れた形になっていたことがわかった

natgeo.nikkeibp.co.jp

…との記述があり、「ガラスは液体なので、ステンドグラスは下が厚くなってるんだよ」というあの話は、まさかのガセであったことが発覚してしまいました…!

 

ギャヒョーン、ドヤ顔で当時の塾の子らに披露していた話が全くのデタラメだったなんて、何てこったい!

…とはいえまぁ、記事でも「それが定説であったが…」とされていますし、自分が一人で勝手に語っていた妄想ってわけでもないですから、科学には新知見による知識アップデートというのは付き物なので、まま、そういうこともある、ってことにしておきたいですね(笑)。

 

実際、「液体だったとしたら何で割れんだよ、割っちゃったら二度とくっついてくれないなんて、そんなやつ液体の仲間とみなしてくれなくて結構!」…とも思えますしね(笑)、「やっぱガラスは固体だわどう考えても、変てこりんな知識を植えつけられてしまって、勘弁して欲しいぜ!」…と手の平を返したくなったものの、しかし、よく読んだら、否定されたのはガラスの厚みの話だけであって、ガラスが実際ミクロのレベルでどういう物質なのかについては、「議論のさなかにある」という感じで、はっきりとは書かれていませんでした…。


ということで改めて検索してみると、Google検索トップにヒットしてきたのは、日本物理学会の学会誌で公開されていた以下のコラム!(PDFなのでリンクカードは取得されませんでしたが…)

 

ガラスは固体? 液体?

https://www.jps.or.jp/books/gakkaishi/2016/05/71-05_70fushigi09.pdf

 

記事冒頭でズバリ、

しかし,ガラスの内部はランダムにつ まった構造であり,実は液体なのである.

…と、はっきり「ガラスは液体」と、「カレーは飲み物」ぐらいのナチュラルさで書かれているじゃあありませんか!


…っぱこれねぇ~、正直、ガラスって不思議な物質だし、僕は液体の一種じゃないかと思ってたんですよねぇ~昔から!


と、物理に関しては一番の専門家・日本物理学会の言うことなら間違いない!…と、完全に手の平クルクルの権威主義が過ぎますけど(笑)、とはいえ記事終わりの結言では、

液体は身近で基本的な状態であるにもかかわらず,その全容はまったくつかめていない.液体とは本当はどのような状態なのか,1 日も早く知りたいものである.

…とありまして、このコラムは2016年のもののようですけど、何と、わずか数年前というごく最近になってまでも、物理のプロでありスペシャリスト連中の目をもってしても、結局の所「よぉ分かっとらん」というのが結論になるみたいですねぇ~。


いやぁ~、こんな身近な物質なのに不思議ですね、ガラス!


…と、せっかくなので検索結果をもう少し見てみたら、あーっと、さらに新しい記事が、いたー!?

東大総合文化研究科の水野さんらによる、2020年10月の論文……完全に最新だと思われる、ガラスにまつわるエトセトラ的なまとめ(大学公式のプレスリリース記事)が、こちらですね(↓)!

 

www.u-tokyo.ac.jp
ズバリ、「ガラスは固体と液体の中間状態 」とのことで、正直煮え切らねぇ~とも思えるものの、「固体か液体かという、ハッキリした状態ではない」ことを示したことに大いなる価値のある研究ですね!


なお、原著論文はこちら(↓)になりますが…

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
こちら、アメリカ物理学協会によるThe Journal of Chemical Physicsという雑誌は残念ながら記事全編の無料公開はされていないようですけど、大学図書館の力を借りて、ちょっくら中身も見させていただきました。


この研究のキモである、粒子の再配置に関する分析法について語られたページの上半分だけをスクショで引用してみると……

https://aip.scitation.org/doi/pdf/10.1063/5.0021228より

…クソ複雑な数式ゴリゴリの、ゲロムズ話すぎてワロタ(笑)。


とはいえここに載っている範囲の数式なら、ギリギリ、理系大学生でもちゃんと読めば理解できるものではあるともいえますけど、さらに進んだシミュレーションによる理論予想の辺まで行くと、流石に専門外ではチンプンカンプンで、考えることを放棄しました(笑)。


ま、何の解説もせず、ただ難しい論文を見せびらかすだけのクソムーブになってしまいましたけど(笑)、コンピューターシミュレーションによって、結晶固体とは極めて違う分子動態を数式的に記述することに成功したというのが非常に革新的で、大学公式のまとめ記事にもあった通り、『“固体的な振動”と“液体的な流動”の中間的な運動を行っていることが明らかとなり、「ガラスは固体か、液体か」という長年の問いに一つの明確な答えを与えるものになった』という形ですね。

 

このガラスネタ自体も大変面白いものでしたが、論文PDFのスクショを撮っていて改めて1つ英語ネタが浮かびまして、この論文掲載の雑誌『 J Chem Phys.』はそんなに主張が激しくなかったですけど、論文PDFの中には、全ページに雑誌名がデカデカと載っていることもあるのです。

その雑誌名に関して、一つ印象深いエピソードがあったのでまた関連して触れてみようと思うんですけど、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Americaという、非常に長ったらしい名前の雑誌がありまして(日本語訳は『米国科学アカデミー紀要』ですが、そんな風に呼ぶ人は一人も存在しません(笑))、これは長いので頭文字を取って「PNAS」と(公式でも)略されています。


こちらの雑誌のPDF記事は、最近はデザインが変わったのですが、一昔前まではページ左側に「PNAS PNAS PNAS…」と徐々にフェードアウトしていく、青いバーの主張が激しいデザイン(笑)で、印刷したら「あ、PNASの記事だな」と遠目でも分かったのですが…

(最近は変わったのですが、確か、少なくとも2015年ぐらいまでは旧デザインだったはず…と思って、2015年のPNASの記事を適当に検索したら、今でもアクセス可能なPDFは、当時のデザインのままでしたね!

https://www.pnas.org/doi/epdf/10.1073/pnas.1418490112より

電子書籍リーダーの光が、睡眠に悪影響』という割と面白そうなネタですけど、中身はともかく、まさに左側のPNASの帯が、上述の激しい主張のやつですね(笑)。まぁそんな激しくはないですけど(笑))


まぁデザインもともかく、この雑誌はアメリカの非っ常~に権威ある「ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス」が発行しているものであり、研究者にはとても有名なもので、学生もまめにチェックしている雑誌といえるんですけど、僕が大学院生だった頃、後輩の学生が、「面白い論文発表会」みたいな研究室のイベントでPNASの論文を選んでおり、発表の際、

「今回選んだのは、こちらのピーナスの論文ですが…」

…と言ったら、教授が、

「ちょっと、『ピーナス』なんてやめなさいよ(笑)。『ピーエヌエーエス』か、せめて『プロナス』って呼んで」

…と苦笑交じりに苦言を呈していた…というのが、その印象深い話ですね(笑)。


何のこっちゃという話かもしれませんが、僕もよぉ分からなかったので帰国子女の後輩学生(発表者よりも後輩)に後で「何でピーナスってダメなの?どういう意味?」と質問したら、彼も恥ずかしそうな笑顔で「いや…ちょっと、言いたくないっす(笑)」と濁した感じで、それでまぁピンと来たわけですが、これはズバリ、ピーナスってのは何てこたぁない、その書き方なら誰でも知ってる、「テニス」の「テ」を「ペ」に変えたやつの、英語での実際の発音がまさにそうなる、ってことだったんですね(笑)。


その発表者であった後輩は、「あれ、大学の頃の先輩がそう呼んでたので、そう呼ぶもんかと思ってました…」と恐縮しきりでしたが、日本人的には別にそんなアカン音でもないですし、そもそもかなり紛らわしいPNASという公式略称自体がアカンのとちゃいます?(笑)って思えてしまいましたねぇ~。


まぁ、日本語でいう、「ちんすこう」とか「ウコンの香り」みたいな、「それわざとやってない?(笑)」と思える、紛らわしい名前の一種なのかもしれませんね(笑)。

 

…おっと、PNASから関連して、音的に近い「マギ単」に触れていこうかなと思っていたのですが、「ガラスは液体」話が思いのほか盛り上がってくれたため(別にそんなに盛り上がってませんけど(笑))、続きは次回とさせていただきましょう。


ほぼ英語ネタですらありませんでしたけど、PNASの発音にはご注意下さい、ということで一応英語カテゴリーのまんまにしておこうと思います(笑)。

(そういえばこれ、同じ研究室だった人には最早完全に身バレ話かもしれませんが、まぁこんな場末のブログなんて読んでいる人はいなさそうなので、気にせずにおきましょう(笑))

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