疑問点へのネイティブの回答:「アリスはいる?」→「She's Alice.」って言える?

とても興味深いご質問の含まれるコメントに触れていくシリーズの続き、今回はまた少し遡って、Frankさんからいただいていた「That's meが自然な理由」の解説メッセージを紹介していたこちらの記事(→補足説明の追加:It's me/That's me. などに対していただいていたものですね。

改めて、コメ提供者のアンさんには心よりお礼申し上げます。

Frankさんの説明は、考えながら読めば、わかりやすいし、納得もできる感じですね、確かに。(2+2=4はちょっとややこしくて難しいですが…)

ただ、そもそもアリスの件では「That's her.(あの子だよ)」が正解っていうことを100わかっている人が理解できるのであって、「Is Alice here?(アリスはいる?)」と聞かれたボブが、アリスを指して「She is Alice.」って答えたらダメなの?って思ってるような人には、結局やっぱり難しいのかなって気がしますね。(対面でI'm Anne.がOKならShe is Alice.もOKで良さそうじゃないですか??)

あぁでも、、meを使う場合の説明という感じなので、そうじゃなくって!ってことですかね…??

やっぱり、読めばわかるけど、自分でそこには行きつかないっていう感じでしょうか。

そして、こうなったら「That's she.」ではない理由も教えてもらえますか?笑

(自分で「This is she.」と言っていい違和感を払拭するために?笑)


前回の「I'm ○○」が使える使えないという話もそうでしたが、もうこれは完全に「文脈次第」といえるのではないかと思います。

Frankさんの「なぜここで(Itではなく)Thatが使われるのか」という例の説明も、改めて、恐らく「あえて理由を考えたら、そう説明できよう」という程度の話であり、実際は普段そんなことを意識してワードチョイスしている人なんてまずおらず、最早「理屈はないけど、なぜかみんなそう言ってるからそう言う」という例のパターンだと思うので、「習うより慣れろ」筆頭の話といえるのかもしれません。

(もうこの例も何度も使いこすっていますが、ちょうど、外を見たら雨模様になり始めた瞬間だったことを周りの人に伝えたい場合、「雨降ってきた」と「雨降ってきた」という2つの文を浮かべて、「格助詞『が』と副助詞『は』の用法の違いから、ここは前者が自然であろう」とか考えて発言する日本人など絶対に存在しないのに近いといえそうですね。
…まぁこの例の場合、実際は「雨が降ってきた」と言う人すら実は稀で、「雨降ってきた」が一番自然なんですけどね。
 これに限らず、意外と日本語でも、自然か不自然か、雑に考えてしまうと我々日本語ネイティブスピーカーですら間違えてしまうことはままあるので(実際この例も、「いや、私は『雨が降ってきた』が一番自然だと思うけど?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません)、必ずしもネイティブの意見だからといって全てが絶対正しいわけではない、というのも注意点でしょうか。

 例えば、ずっと前何かの調べ物で日本語学習者用の掲示板を見てみたことがあったんですが、そこで、「『私はテレビが好きだ』という文章は自然ですか?」みたいな質問がありまして、パッと見一瞬、「『~は~が…』って、そんな日本語はないし、主語を重ねるミスなんて普通するかな?目的語なんだから、そこは『を』にしなくっちゃ」とか思ったんですけど、実際に口に出して呟いてみたら、「うわっ、声に出して読んだら、『私はテレビを好きだ』より『私はテレビが好きだ』の方が、めっちゃ自然じゃん!「~は~が」なんて一瞬あり得ない表現だと思ったのに、全然あり得るね!不っ思議~」と思えたことが強く印象に残っています。
(その掲示板でどのような議論がなされていたかまでは覚えていませんが…)

…まぁまたどうでもいい脱線余談になりましたが、無意識に使っているからこそ、冷静に考えないと普通に結構おかしなことを言ってしまいがちなこともある(自分が実際に口にしてしまうことはまずないですが、説明を求められたときに、おかしな説明をしてしまう可能性もある、ってことですね)…ってのが言語の難しさ面白さといえましょう。)


…と、本当に本題と関係ない駄文で長くなってしまったものの、本題に移りまして……

例の場面(誰か第三者が部屋にやって来て、ボブに向かって「アリスはいる?」と聞く場面ですね)で、ボブが「She's Alice.」と答えるのは問題ないのでしょうか?

その後「I'm ○○.」で適当に間違ったことを書いてしまったことも発覚していたため、勝手に自分の感覚で断言する自信を失っていたことからも、改めてFrankさんに質問してみました。

もちろん、ついでなので、後半でお尋ねになられていた「That's she.」とは言わない理由も含めてのクエスチョンですね。


…が、質問メッセージを書く際にまとめていたら、どの場面に対してのご質問なのか若干判然としなかった、というか、色々これまでの話を総合していたらごちゃっとしてしまった部分があったため、それを自問自答で語りながら尋ねるという変な形の質問になってしまいました。

そのせいで、もしかしたら本来お聞きになりたかったことからピントのずれた回答をいただく形になってしまったかもしれないのですが、そんなわけで、自分がFrankさんに投げた質問の方も、一通り日本語にして示しておこうと思います。


Q. (こないだ送ってもらった)アリスとボブのシチュエーションについて、ボブが「That's her.」ではなく「She is Alice.」と答えるのはどうなんだろう?

ブログでコメントをいただいた読者の感覚では、対面している状況で自分自身について尋ねられた場合の返答として「I'm Frank.」が通用するなら、同じ構造の「She's Alice」も通用するはず…という意見をもらったんだけど、これは正しい…?


ちなみに自分の個人的な印象では、「I'm Frank.」と同じように、「許容範囲ではあるけど、そんなに一般的ではない」のかなとも思えるけど……って、あ、ちょっと待った、「一般的ではない」というのは電話の中の話であって、対面の例だと、そういえば「I'm Frank」は「一般的ではない」ばかりか、「フォーマルなシチュエーションであれば、私はこれを使うであろう」とおっしゃられていたし、普通に問題なく頻繁に使われる表現といえるんだったね、そういえば。

ということは、コメントでもらった通りの考え方で正しいのかな…?

いやでも待てよ、このフレーズをよく考えてみると、「She's Alice.(彼女がアリスです)」って、何とな~く、ボブが突然アリスの名前を訪問者に紹介し始めたようにも聞こえる気がして、ちょっと変なんじゃないか?…とも思えてきたよ。

でもこれは単なるノンネイティブスピーカーの推測なので、全く間違っているかもしれないけどね。

 

そしてもう一つ、同じく読者からのコメントで質問が。

「May I speak to Mr. Frank?」に対して、「This is he.」は電話の場面では推奨の返答だったし、「That's me.」もとても自然な「あ、私です」の返し方だということだったけど、じゃあ、これを融合させた「That's he.」はどうなんだろう?

個人的な感覚では、これは100%間違いなく不自然に聞こえると思うんだけど(ちなみに読者も「ダメな理由」を聞いてるから、おかしいと思っているようだね)、これに関して、何か良い理由・説明はあるかい?


...あ、ちょっと待った。実はこれは、「アリスの例では、『That's her.』が提案された推奨返答だったけど、なぜこれが『That's she.』ではないのか?」ということを聞きたいコメントだったのかもしれないね!

でもこの疑問なら、自分でも普通に簡単に説明できそうかな。

ズバリ、「この返答文では、「her」は文中の「object(目的語)」(もっと厳密に言うと、正確な文法用語としては「complement(補語)」だけど)であって、話者(ボブ)は、この文においては「subject(主語)」に当たる人じゃなくて「補語」に当たる人に言及しているから、「her」でないといけない」…ってのが説明だと思うけど、正しいよね?

でもまぁ、この疑問より、個人的には上でした最初の疑問が気になる所ではあるかな。


A.(いただいた回答メッセージ;上記の各段落を引用されての、レススタイルの返信ですね)

ブログでコメントをいただいた読者の感覚では、対面している状況で自分自身について尋ねられた場合の返答として「I'm Frank.」が通用するなら、同じ構造の「She's Alice」も通用するはず…という意見をもらったんだけど、これは正しい…?

これは正しいと思うよ。

でも、使用頻度は低いし、自然さも低い (less common and less natural) ように思えるね。

 

自分の個人的な印象では…

…でもこれは単なるノンネイティブスピーカーの推測なので、全く間違っているかもしれないけどね。

(最初に触れた部分の次の段落全体の引用)

うーむ、部屋に入ってきた人は、特にアリスがいるかを尋ねているわけで、その人はアリスという名前の人がいて、そのアリスという人が部屋にいる可能性があることを、既に知っているわけだね。

だから、ボブがアリスを指差して「she's Alice.」と言うとき、ボブは、部屋に入ってきた人が知っている「アリス」と、部屋にいる実際のアリスとを結びつけているだけといえるのではないかな。


部屋に入ってきた人がアリスの存在を尋ねておらず、「アリス」という名前も知らなければ、状況は違ってくるよ。

その場合、ボブはもっと正式な紹介をするであろう:「By the way, this is Alice X. She works with me on Y(ところで、こちらはアリス・Xさんです。彼女は私と一緒にYについての業務を行っています)」、といった具合だね。

 

「This is he.」は電話の場面では推奨の返答だったし、「That's me.」もとても自然な「あ、私です」の返し方だということだったけど、じゃあ、これを融合させた「That's he.」はどうなんだろう?

個人的な感覚では、これは100%間違いなく不自然に聞こえると思うんだけど(ちなみに読者も「ダメな理由」を聞いてるから、おかしいと思っているようだね)、これに関して、何か良い理由・説明はあるかい?

それは、以前に述べた理由によるものだと思う:「that's X」と言うのは、言語的には人を指差すのと等価であるから、だね。

つまり言い換えると、言語的に、「X」はある動作(指差し)の対象になっているわけだ。

だから、何かの行為の対象である人に使う代名詞を使うわけだね:「him」「her」「them」という形だ。

 

...あ、ちょっと待った。実は読者は、「アリスの例では、『That's her.』が提案された答だったけど、なぜこれが『That's she.』ではないのか?」ということを聞きたかったのかもしれないね!………

(から、最後の部分までの引用)

そのお書きになられた説明は、私のものと同じものになっていると思えるね。

 

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…ということで、後半というか最後、余計な横やりを入れてしまったせいで論点がぼやけてしまったかも…という印象だったのですが、改めて読んでみたら、一応ズバリと理論付けしていただけていた感じですかね…?

 

とりあえず最初からおさらいしておくと、まず、「She's Alice.」は、使われる率も自然さも若干「That's her.」より劣るものの、別に問題はないとのことですね。

(これも、理屈うんぬんではなく、ネイティブが状況を想定してブツブツと口ずさんでみたときに感じるフィーリングでしょうから、「なぜかは分かんないけど、あんまりそうは言わないかな?そう言っても別に何も問題ないけど」ってやつといえましょう。

…日本語でも、例えばオフィス訪問客の「ニトリさんっていう方、いらっしゃいますか?」という質問に対して、「あちらの方が二鳥さんです」と「二鳥さんはあちらの方です」だと、「う~ん、前者の方が、ちょっと自然な気がする!」と思えますけど…

(まぁこれはただの適当な例なので、あんまり思えないかもしれませんけど(笑)。まぁ多分、普通にシンプルに「あちらの方ですね」とかが一番自然というか、そう考えると、もし二鳥さんがすぐ横とか向かいのデスクとかの目の前にいたら、即答で手を伸ばしながら「こちらの方が二鳥さんです」(この状況で「二鳥さんはこちらの方です」はまずない)かなと思う一方、ちょっとオフィス内を見回して探す必要があったら「二鳥さんは…(キョロキョロ)…あ、あちらの方です」みたいなのが自然に思えるしで、やっぱり今の「自然さの違いを判断する例文」としてはあんまり良くない例だったかもしれませんね)

…件の返答は恐らくそれよりもうちょいレベルの大きな違いで、「どっちでも言えるけど、多分こっちの方がよく使われるし自然かな?」という、恐らくその程度のものだということですね。)

 

ちなみに僕が途中でいきなりほざいていた、「いきなりアリスの紹介どうたらに思えてこうたら…」は、冷静に考えたら普通にそんなわきゃなかったですね(笑)。

Frankさんの言う通り、別に「彼女がそのアリスです」と、訪問者と本人を結びつけているだけですから、ここは全く突っかかるポイントではありませんでした。

 

一方ご質問後半の、「That's sheと言わないのはなぜ?」は、恐らく最初に挙げていた「This is she./That's her.は言うのに、なぜThat's she.はない?」というポイントだったのではないかと思いますけど、先ほど書いた通り、僕が変な茶々を入れたせいで話がずれてしまった気もしたものの、でもよく見たら、Frankさんは逸れる前の内容を引用して、ちゃんと回答してくれていた形ですね。


そして結局これも、言われてみれば確かに、「This is」なら自分のことを言ってるから主格のsheで、「That is」なら誰かのことを言ってるから目的格のherで、という説明で、普通に理屈の通る話だった感じでしょうか。

…あ、いや待てよ、最初に挙げていたのは「That's she.」ではなく「That's me.」でしたし、やっぱりそれだと自分のことを指しているんだから、この場合、同じ理論で「That's she.」でもいいのでは?…というのが、ご質問の肝だったのではないかと思える気もしてきました。


まぁでもこれはやっぱり、「That's me.」という返答は、Frankさんがこないだ説明されていた通り、「沢山の人という選択肢がある中から、『私』という人間を選んで指差す」という意図の台詞であり、一方「This is she.」は、「この電話口で話している主体は私です」という、主語を答えているという形になるので、「That's」の場合は目的格が続く……というのが、一応理論立った説明という感じでしょうか。

(頭の中でぼんやりと描いているイメージが、Thisの文とThatの文では明白に違う、とでも言いますか…)


…ま、くどいですが、これは「あえて説明するなら、そう理論付けられそう」であって、ぶっちゃけ説明のための説明な気もしますし、実際問題、単に「いや、ネイティブなら無意識で口を付いて出るのはその形だから、『経験的にそうだからそう』としか言えねンだわ」って話かもしれませんね!

 

というわけで、Frankさんの助力を得た解説部分は以上になりますが、他にも更に遡って興味深いご質問があったと思うので、また続けて見ていこうと思います。


とうとうアイキャッチ画像のネタも切れたので、今回は「アリスさん」が登場したことから、こちらのいらすとやイラストをお借りしましょう。

一目で不思議の国のアリスって分かるのも、凄いですね…!

(まぁ流石にトランプとうさぎと時計がなかったら、これだけでアリスというのは若干無理があるかもしれませんが(笑)…いやでもやっぱり、金髪&服装で、これだけでもアリス感はありますかね?!)

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