青い花・英語版で気になった所を挙げていこう:3巻その1

今回から、英語版・青い花『Sweet Blue Flowers』2巻(日本語版3&4巻相当)を読んでいて気になった部分を見ていきましょう。

巻数・ページ番号は日本語版の数字ですね。

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(3) p. 29:"←CAMP SITE//HIKING TRAIL→"(キャンプ場の標識)

めっちゃ面白いことに、案内板の記述が日本語版と英語版で逆になっている(日本語では、←がハイキングコースで、→がキャンプ場)。

なんという意味のない変更!

A. なぜ意図的にこのような変更がされたのか、全く理解できないね。

ストーリーを理解する上では何の影響もないので、改訂版の付録・誤植の章にこれは含めないだろう。

 

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(3) p. 45:"I SHOULD KEEP HER COMPANY."(「花絵と一緒にいるわ」)

英語だとこの方が自然なのかもしれないけど、原文の日本語だと、康母はここで"If there was only one old woman among young girls, it would be awkward."(原文:「おばさんひとりじゃ浮いちゃうわ」)と言っている。

A. 英語表現としては、英訳の方が自然だと思う。

しかし、残念ながら、これだと話し手の行動にある理由付けは、一部失われてしまっているね。

 

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(3) p. 57:"DON'T TELL KYOKO, ALL RIGHT?"(「京子には言わないでね。いいかな?」)

これもその英文の方が自然なのかもしれないけど、日本語では"Kyoko doesn't know of it at all."(原文:「京子は今の話 一切知らないから」)となっている。

A. これこそまさに、日本語の読者に「空気を読む」能力や、話し手の意図を推し量る能力なんかが求められている例といえるかもしれないね。

推測だが、日本人の読者が"Kyoko doesn't know of it at all."という文を読んだら、自分の頭の中で次のように文章を完成させるのではないかと思う:「Kyoko doesn't know of it at all [so please don't tell her].(=だから言わないでくれ)」。

英訳ではこの暗示部分がより明示的に示されており、英語圏の読者にとってはより自然な表現になっていると思う。

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⇒(いただいた返信への追加返信。特に追っての質問でもないので、これの追加回答は特になし:)まさにその通りだね。

つまり、英語圏だと、「京子は全く知らない」で文が終わってしまうと、読者は「で?」って思っちゃう、ってことなんかな。

面白い点だけど、それならSBFの翻訳の方が断然いいだろうね。

 

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(3) p. 95:"IT ISN'T FAIR TO HOLD AN OLD LOVE LETTER OVER ME."(「古いラブレターを押し付けてくるのは卑怯よ」)

こちらは結構ハッキリした違いになっていて、実際の公理の台詞・日本語版は"Don't feel like you have my weakness with such an old love letter."という意味の言葉(原文:「昔のラブレターみつけたくらいで 弱み握った気にならないでよ」)であり、この原文の方が公理の強い・勝気な性格がよく表れているように思う。


A. そうだね、これは本当に変わってしまっているということには同意だが、自然な英訳をどうすれば良いかはイマイチよく分からない。


⇒(追加送信メッセージ:)
ん、自分の書いた文は、この文脈だと変な(少なくとも自然じゃない)英語ってことなんかな?

まぁ、スペース的にも、自然な感じで同じ意味にするのも難しい所なのかもしれないね。

 

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同じページ・次のコマ:"I'M IN HIGH SCHOOL TOO, BUT I GAVE HIM MY LETTER."(「私も高校生だけど、私は先生に手紙を渡したから」)

続く恭己のこの台詞も、明らかな誤り(少なくとも日本語とは違う)だね。

実際の台詞は、"I was in junior-high, and I gave..."(原文:「私は中等部だったし、ちゃんと本人に渡したもん」)と、当時の話になっている。

手紙を書いたときはまだ中学生だったこと、しかも手紙をちゃんと渡したこと(公理は渡していない)から、自分の方が偉い……これが恭己の主張だね。

A. これは、以下のように訳した方がよかったと私も思う。

Kuri: "I was in high school, so forgive me."(「高校生の頃の話よ、許して」)

Yasuko: "Well, I was in junior high, but I still gave him my letter."(「でも私は中学生だったけど、それなのに渡したからね」)

しかし、これがこの吹き出しの狭いスペースに収まるのかは分からない。


⇒(追加の独り言:)
指摘し忘れていましたが、今よく見てみたら、公理姉ちゃんの続きの台詞(Frankさんが上で書いている通りのやつ)も、日本語版とは結構違いますね。

日本語版では、「あんなもん高等部んときよ  若気の至りで許される話よ」で、英訳はニュアンスが結構変わっており、先ほどのコマ同様、英語版では公理の勝気さが大分失われてしまっているように感じます。

とはいえこれも、スペースの都合で仕方ない…という面も大いにありそうですね。

 

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(3) p. 107:"YEAH...HER PERSONALITY ISN'T ALL BAD."(「えぇ、性格が悪いわけではありませんから」)

あんまり変わらないかもしれないけど、日本語版は、"Yes, but that (her personality) is the only goodness of hers..."(「そうですね、しかし、それ(あきらの性格)が、あきらの唯一の良さなんですけどね」)みたいな意味合いになっている(※ここでの実際の兄の日本語台詞は「まあ…性格ぐらいしか取り柄がないんですけどね」)。

(これは、身内のことはあえて悪く言うことの多い日本語らしい「謙遜」的な習慣で、英語では適切ではないのかもしれないね。)

A. 英語のネイティブスピーカーにとっては英語版の方が自然に読めると思うが、多少意味が歪んでいるような気もするね。

おっしゃることからすると、日本語の文章は要するに"Everything about her is bad except her personality."(「彼女は、性格以外は全て悪い」)と言っていることになるからね。


⇒(追加メッセージ:)
そう、一般的に日本では、自分の家族のことを良く言うことはあまりなく(自慢に聞こえ、悪印象を与える)、むしろ悪く言うことが多いんだ。

でも、最近はその状況が変わってきて、この悪しき伝統を避ける人もいるね。

(自分の家族を褒めるのは間違いなく良いことだし、特に年上の人が年下の家族を悪し様に言うのは本人のために良くない、みたいな。
 子供も一人の人間であり、あまり重要でない存在・他人に悪く言っても構わないような存在ではないと考えるようになった、という感じかな。)


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(3) p. 112:"tough personality"(タフな性格)

『That Type of Girl』の文中にも何度か出ていたので、本編の翻訳の際にもずっと思っていたけど、「タフ」という言葉が最適なのかどうかがちょっと疑問に感じるよ。

個人的には、日本語原文からすると、「wild」とか「masculine(男らしい)」とかの方が近いという気がする。

タフというのは、ある種のネガティブな意味も含むよね?

日本語で言うと、原文の恭己の表現は、そういう意味では100%ポジティブなんだ(※注:原文では「ざっくりとした性格」…まぁ100%ポジティブでもないかもしれませんけど(笑))。

A. これはtoughな質問だね :-)。

でも、英語では「tough」は実はポジティブな意味合いを持っているように思うので、この訳でいいんじゃないかと思う。

「男性的」という訳もOKだと思うが、訳者はもっとシンプルな表現を目指したのかもしれないね。


⇒(追加メッセージ:)
あぁ、否定的な意味ではないならば、全く問題ないね。

(日本語でも「タフ」はよく使われるけど、ほとんどが否定的な意味で使われているので、気になった次第だよ。)


⇒(追加独り言:)
…と、Frankさんには書きましたが、これは「タフな状況(厳しい状況)」みたいな使い方を想定してのもので、改めて今よく考えてみたら、タフガイという意味とかであれば日本語でもまぁポジティブな意味で使うし、実際ここの英文でもポジティブな表現になっているとのことで、気にする必要はなかった点かもですね。

 

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(3) p. 115:(特に英語版特有の話ではなく、作品全般で気になったポイントとして)ここで京子は演劇部に入ると言っているが(多分まだ中学生当時)、(1)p. 55では、高校に入ったばかりのあきらとの会話で、入る部活はまだ全く決めていない旨を語っている。

この辺に関して、何か理由があると思う?

恭己が学校を去ったから、京子も辞めたか、あるいは(まだ入ってなかったなら)考えを改めた…?


A. そうだと思う。あるいは、高校生になったのをきっかけに、部活を選び直すということもあり得るかもね。

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という所で、またちょうど半分ぐらいでいい分量になったので、3巻の続き後半は次回とさせていただきましょう。

あとはおまけで、別におかしな点というわけではなく、面白いと思った英語表現のコーナーに今回も軽く触れておこうと思います。

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青い花で学ぶ英語】

(3) p. 72:"LET'S BURN RUBBER!"(「はやくはやく 車車車!」)

あーちゃんが寝坊して各務先生の結婚式に急ぐ場面ですけど、そのまんまとはいえ、「急ぐ」=「ゴムを燃やせ!」は、面白い表現ですね。

もちろん、「ゴムを燃やす」ですから、意味としては「to drive very fast」で、「急ぐ」というより「車を飛ばす」方が近い感じでしょうか。

(実際、あーちゃんの台詞は、"HURRY UP! LET'S BURN RUBBER!"です。)

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(3) p. 92:"nosy"(詮索好きな)

こちらは大したことはなく(面白いイディオムというわけではなく)、単に自分がその意味を知らなかった単語なだけですけど、前回「何にでも首を突っ込む」で「busybody」という単語がありましたが、そちらは「お節介・世話焼き」でポジティブな意味であった一方、こちらは似たような意味でありながら「詮索好き」という感じで、ネガティブな意味合いが強い単語になる感じですね。

一瞬、noisy(ノイズが多い=うるさい)と空目しましたが、そうではなく、これはnose(鼻)の形容詞で、詮索好きという意味以外に、「鼻が大きい」という意味も(むしろ第一義に)ある単語です。

「詮索・噂話好きなんて、『耳が大きい』じゃないの?」って気がしますが、英語では鼻が大きいヤツがゴシップ好きな人扱いということで、面白いですね!

(…って、冷静に考えたら、日本語の「首を突っ込む」も、「首て何やねん(笑)。どうやったら頭と体はそのままで、首だけ突っ込めるの(笑)」と思えましたし、イディオムとはそういうものなのでしょう(笑)。)

 

ではまた次回、3巻の後半を見ていきましょう。

英語版『放浪息子』4巻表紙、https://www.amazon.com/dp/1606996053より

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