最先端の凄い技術・CRISPRのサワリを解説~Cas9編~

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前回の記事では、遺伝子治療の最先端技術の一つであるCRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)という話題のテクの、名前だけ触れていました。


せっかくなので、今回はその生命科学の革命級の技法・CRISPRについて、ちょろっとだけサワリの一端を垣間見てみるといたしましょう。

とはいえ、元々以前書いていた分子生物学入門的な記事では、「DNA→RNA→タンパク質という流れから、最近色々話題だしPCRについてなるべく分かりやすく説明するみたいな形の記事で〆るのがいいかな…」とか考えていたんですけど、それすらもまだ途中段階な上、DNAとかRNAとかその程度の基本話ですら、いざ書いてみると意外とどなたにでも分かりやすく書くのって難しいんだな、と感じたこともありましたし、CRISPRなんてのは最先端だけあって入門編とは桁違いの難解さ複雑さがあるのは事実ですから、ガッツリ説明するのもちょっと正直無理があるんですけどね。

でもまぁ詳しい細部を無視してざっくり語るだけでも、きっとその凄さが分かるはず……それぐらいにインパクトのある技術に思うので、難しいことは抜きに、概要をチェケラッチョしたい限りです。

 

…と、どうやって概要に触れればいいのかも悩ましかったのですが、あまりにもホットなトピックなので、インターネット上には既に様々な解説記事がゴロゴロ転がっていました。

流石に個人ブログ的な解説ネタを拝借するわけにもいかないので、ここは、より公共性の高い、研究試薬系の会社が公開してくれている記事を参考にさせていただこうかと思います。
(まぁそれもパクリというか勝手に乗っかっていいのか、って話なんですけど、専門外の方が「?」と思いがちであろうと思われるポイントを補足するのは、公共の福祉として悪くなかろう、と半ば開き直る感じです(笑))


軽く調べた限り、やはり研究試薬系世界最大手・我らがThermo Fisherの解説記事が一番分かりやすいですかね。

www.thermofisher.cn

あとはこの手のバイオテクノロジー解説記事が充実している、我らがコスモ・バイオの記事なんかも上手にまとまっていましたし(僕はチェックしていませんが、動画もありますね!)……

www.cosmobio.co.jp
コスモ・バイオは本当に丁寧に様々な技術の解説記事を提供してくれています。
 ↑の記事では、「概要の次にいきなりダブルニッキングについて説明するのって、正直どうなんだろう?」…とも思えましたが、普通に同じコスモ・バイオ内でもクリスパー特集記事はいくらでもあるようなので、その人にとって分かりやすいものを色々と参照するのが良さそうですね。
 ↓の解説記事なんかは、動画は英語しかなさそうですけど、より詳しく、初学者の方が感じやすい疑問点もしっかり抑えられている、とても分かりやすい内容かと思います(でも専門外の方にはちょっと難しいかも)。)

www.cosmobio.co.jp

他にもより具体的に、各種反応条件まで懇切丁寧な記述がなされている、みんな大好き我らがタカラのハンドブックもめちゃくちゃよくできてますね!


・ゲノム編集実験ハンドブック(TAKARAバイオより、PDFファイル)

https://catalog.takara-bio.co.jp/CONTENTS/catalog_request/pdf/handbook_for_gene_editing_experiment.pdf

 

そもそも試薬会社の解説記事って本当に有用で、僕は教科書とかよりもよっぽど試薬会社のマニュアル・解説記事で多くを学ばせてもらったといっても過言ではないぐらい、専門課程の学生にとっても一番頼れる友とすらいえる、最高の教材に思います。

やはり、商品を買ってもらうためのプロの説明力は凄い……その一言ですね。

 

とはいえぶっちゃけ、この辺の解説を読んで「そういうことだったのか!」と思える人は、そもそももうほとんど理解できてたんとちゃいます?(笑)…って思えるぐらいに、全く専門外の方が読んで即理解できるとは到底思えないのも正直な所ではありますが……

先ほども書いた通り、CRISPRは2020年のノーベル化学賞も受賞した本当にホットなトピックなので、上記企業の解説サイト以外にも沢山分かりやすい説明ページが既に色々ある気もするんですけれども、やっぱり中学生とか、他にも生命科学に全く興味のない方なんかが寝ながら流し読みするだけで理解できるようになっているかというと、流石にそこまでの分かりやすさの記事は存在しないようにも思えます。

…なので、いつかまた時間ができたら、そんな分かりやすい解説を書いてみたい限りですね…!

(でも、多分それは「まだ誰も書いてないから存在していない」のではなく、単に「仕組み的に無理」なだけなのかもしれません。
 例えば大学レベルの高等数学を中学生が鼻ほじりながら読んで理解するなんて絶対に不可能であるのと同じように、生命科学は数学や物理より必要となる論理的思考力は断然小さくはあるものの、ある程度知識の積み重ねがないと各現象や反応の意味する所が理解できないというのはやっぱりそうかな、と思われるため…。)


とりあえず今回は、最初のリンクで貼りましたThermoの記事から画像を拝借して、めちゃくちゃ簡単にCRISPRの仕組み・流れを大まかに見てみるといたしましょう。

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https://www.thermofisher.cn/blog/learning-at-the-bench/gene-editing_bid_ts_1/の図1より(補足追加)

CRISPR/Cas9というのは、この図1にある2つの分子が主役になります。

1つはCas9というタンパク質(図の、緑の丸が2, 3つながった、ダルマ型っぽいやつ)、そしてもう1つは、Crispr RNAcrRNA;読み方は、シーアールRNAと呼ぶことはあまりなく、クリスパーRNAと呼ばれることが多いですかね?ちょうど、mRNAがエムRNAよりメッセンジャーRNAと呼ばれることの方が多い気がするのと同じ感じで)という一本鎖RNAですが、厳密にはcrRNAは図の左半分のことを指しており、このRNAは右半分がtracrRNA(こちらはほぼ確でトレーサーRNAと発音されます)という、Cas9をおびきよせてつなぎとめる部分とつながっているため、これらを合わせて、ガイドRNA(略称は、sgRNA(single guide RNAの略号)という呼び名もよく使われますが、上記Thermoの記事では使われていませんし、あんまり名前はどうでもいいでしょう。


3つも4つもアルファベットの文字列が出てきた時点で基本やる気がなくなりますからね、名前はまぁ本当にどうでもいいので、役目・機能の方を簡単に説明していくといたしましょう。

まずCas9ですが、上述の通りこれはタンパク質で、以前から何度も触れていましたけど、タンパク質というのはマジで凄まじいまでに多種多様な、そして複雑な機能をもつ生体マシーン分子でして、こいつの機能は何かといいますと、ズバリ、DNAの切断


結局、遺伝子を改変したい場合、DNAを切ったり貼ったりが基本になるわけで、Cas9というのはズバリ「DNAを切る酵素」だということなわけですね。
(それはなぜか、というかなぜそれが可能なのかというと、DNAというのは結局4文字の塩基が大量につながっただけの分子だからといえましょう。
 数億塩基から成る超高分子DNAとかも存在するとはいえ、DNAなんてのは結局の所、どこを見てもAかCかGかTかの文字がつながっているだけの単純な物質なのです。
…逆にたった4文字の組み合わせだけで人間や生物が作れるというのもスゴいわけですが……!)


しかし、DNAを切るといえば、以前の分子生物学入門シリーズで、制限酵素というのを見ていました。

最早覚えてらっしゃる方もいないかもしれませんが、この記事(制限酵素について分かりやすく説明するよ)の辺りから、結構何回かにわたって丁寧にクドクド見ていたアレですけど、DNAを切るなら制限酵素とやらでいいのでは?という気もするかもれしれないものの、Cas9はもっと凄い……具体的には、自由度が凄いんです!


制限酵素というのは、酵素によって特別な認識部位をもっており、その認識部位だけをスパッと切断するマシーンでした。

(例えば代表的な制限酵素EcoRI(エコアールワン)ならGAATTCという6塩基、BamHI(バムエイチワン)ならGGATCCという6塩基…って具合ですね。)

もちろんその配列がDNAの中に存在すれば、制限酵素は超絶高い効率でDNAをスッパスパ切ることができるんですけど、逆にいえば、その認識配列とピタリ完全一致するものでないと、こいつらはDNAを切ることができないのです。


…無論、「遺伝子DNAの決まった所だけを切る」という機能も凄まじく、制限酵素のおかげで分子生物学は20世紀の終盤以降本当にヤバいレベルの発展を見せてきたともいえるのですが、ここで近年、さらなる柔軟性をもって世に出てきたのが、Cas9だというわけですよ。

こいつの素晴らしさは、ズバリ、「遺伝子DNAの、どこでも好きな所をスパッと切断ができる」というその自由度!


ごく簡単にいえば、遺伝子診断をして、「○○遺伝子のここの所に、普通とは違う異常な部分が見つかった」となったら(例の、嫌婚遺伝子とかもそうですね(笑))、その部分をチョキーンとちょん切って、正しい遺伝子にちょちょいっと入れ替えてやれば、遺伝子を正常な機能のものに置き換えることができるじゃあないですか!……という、そんな夢のような遺伝子編集を可能にしてくれる偉大なタンパク質だということですね。


そして、その自由さを可能にしてくれるのが、CRISPR-Cas9(そういえばこの用語、Thermoの記事ではスラッシュ区切りでしたが、その他多くのサイトはハイフン区切りですね。どちらかといえばハイフンの方がよく使われている印象でしょうか…?ツイッターで同様の質問がされていましたが……

リプライを見ても、ハイフン派が多そうな感じですね。)

…と、また余談が長くなりましたが、CRISPR-Cas9という名前の片割れ、CRISPR RNAが、その「どこでも好きな場所を切断」という夢のような技術を可能にしてくれているのです!


…という所で、めっちゃ中途半端にも程がありますが、もう大分いい長さになってしまったこともあり、このシステムで大事なもう半分のパートナーであるRNA側の要素から、更にその後の「切った後どうすんの?」という点について、また次回にまわさせていただきましょう。

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