核はいくつ?

前回は細胞が分裂するときの、含まれるブツの分配の仕組みについて、酵母の分かりやすい蛍光顕微鏡図なんかを用いた研究を参考に垣間見ていました。

この辺はやはり目に見えて分かりやすいということもあり、次から次へと気になる点・疑問点が生じる部分といえましょう、改めて毎度丁寧なコメントをいただけるアンさんからいくつか面白い・気になる点を挙げていただいていたので、今回はそっからのスタートといたしましょう。

この酵母の分裂の様子はめっちゃわかりやすくて、むちゃんこ面白いやんけ!

ただ、パッと見、ひとつの緑の塊がビョーンと伸びて娘細胞に入ってちょん切られてるように見えるんだが、この液胞は1細胞内にひとつしかなくってそれが半分(くらい)に別れたってわけではないんよね?元々ひとつのものが分裂で半分になる場合もあるってことけ?

最初、液胞がそうなのかなって思えたんだけど、「輸送マシーンがある程度の量はちゃんと分配して…」っていう文面から、これもリボソーム同様たくさん(何個か?)あって、例えば100個あったものが50個ずつに分けられたって感じなんだろうなぁ、って思ったんだが…どないざんしょ?

ちなみに、オルガネラっていうのは、グループ名なんよね?


そう言えば、プラスミドも分裂で娘細胞に配分されるってことだったけど、こいつも同じような仕組みで動いとるんかえ??

例えば、、1細胞にひとつしかないものって、ないんかね?(例えてない笑)
あ、しかも上で同じ質問しとったわい笑

核がそうって気がしとるけれどもやね…核って、分裂する時はどうなるんじゃい?
いや、なんか難しそうだねぇ。聞いてもわからないかな…?

 

液胞については、これまた面白い視点ですねぇ~。

深く考えたことがなかったですが、このレビュー記事(↓)によると、酵母細胞には1-10個程度の液胞が存在し、クラスターを形成しているとのことです。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

「え、1個だと、分裂したらどっちかはなくなるじゃん」と思える話かもしれませんが、これはやはり液胞というのは染色体DNAと違って生命活動を行う上で根源的に絶対必須なものではなく、なきゃないで必要ならまた作るというだけのものですから、別に仮に分配されなくても特に気にする必要はない、という感じですね(でも、わざわざゼロから作らなくて済むから、ないよりはあった方が便利だし、分配機構が存在しているという感じといえましょう)。

(また詳しくは後ほど触れる予定ですが)そもそも液胞というのは、栄養や老廃物を貯蔵する、膜で囲まれた区画程度のものなので、まぁ言っちゃえばただの水風船みたいなものともいえますから(もちろん、あえて細胞の中に存在する以上、細胞活動をより安定に行えるようにするなど一応の生理的な意味があるものには違いないですが、核やその他また後で触れる、それがないと生命が保てなくなるほどの器官まででは決してない感じといえましょう)、「(決まりきった)この大きさ・中身で機能する」というタイプのものではないため、実際、1個のものを上手く半分にちぎるような感じで分けることもあるのかもしれませんね。
(特に液胞についてさほど詳しいわけではないので細部は正直分かりませんが、液体に満ちた細胞だって最終的にちぎられて2つに分裂するわけで、液胞もきっと上手い具合にちぎって分けられることも可能なんじゃないかな、と思います。
 蛍光顕微鏡の像的にも、そんな感じでしたしね。)


その他のオルガネラの細胞内における数は、このレビュー記事(↓)でいくつかまとめられていましたが…

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

まぁその辺はまた各物質を見るときに触れるとしましょうか。


とりあえずご質問を進めると、「オルガネラ」はもちろんグループ名で、色々な構成員が存在しています(カタカナだと何かそういう特定の物質っぽいですし、「細胞小器官」の方が圧倒的に分かりやすいかもしれませんね)。

また次回以降軽く見てみる予定です。

続いての点、プラスミドの分配についてですが、プラスミドは染色体DNAとは違ってあってもなくてもいいものですから、これは、「oriで多数複製されたものが、大体均等になるように分けられる」程度のものになっているはずだと思います。

つまり、普通そんな細胞内に偏っては存在しないので、分裂したらどっちにも行き渡るだろ…という、正直運に頼った適当極まりないだけのもんって感じですね。

そうすると、「そんな適当なら、偶然プラスミドがもらえなかった娘細胞もいるのでは?」と思えますが、これは実際コピーナンバーの少ないプラスミドなら普通にあり得る話で、だからこそ大腸菌を飼う培地には抗生物質(プラスミドには、その抗生物質への抵抗遺伝子が乗っています)を入れて、プラスミドを落としちゃった細胞には申し訳ないけど抗生物質の力で死んでいただきます(笑)という形で、プラスミドをもった菌だけ培養を続ける、ってな具合なわけですね。


最後、1細胞にひとつしかないものは…基本はやはり核ですが、何気に、多核細胞や多核生物、さらには無核の細胞なんてのも存在します。

でも基本的には1細胞1核と考えて問題ないので、やはり答はでしょう。

それ以外の細胞小器官だと……まぁ液胞も結構巨大なオルガネラなので、特に液胞が発達している植物では(花とかの鮮やかな色、あれは液胞に色素が溶け込んでいるからですね)、1細胞に1つのことが多いようですね。

でも酵母だと上述の通り複数個あるのが基本ですし、植物の巨大液胞(大きすぎて1つしか存在できないほどのもの)も、基本的にはもう細胞分裂する必要のない成熟した表皮組織に存在する(液胞が大きく成長する)ことが多いと思うので、核と違い必ずしも1つになるように制御されている、ってわけではないですね。


分裂する際は、核は膜が消失して、むき出しの染色体が紡錘体に引っ張られる感じ(中学理科で確か触れたので、言われれば思い出されるやつかもしれません)ですが、めちゃくちゃ巨大な液胞とかを含んだ細胞が分裂する場合はどうなってるんでしょうね…?

せっかくなのでちょっと調べてみようと思い、今回の記事も『意外と奥が深かった液胞の世界』みたいなタイトルにしようと思ったんですが、まぁ既に大分長くなったので、液胞を皮切りに、ちょっとまた次回以降、順に細胞小器官を見ていく感じでいこうかな、などと考え始めています。

…いや、多分入門編ともいえない感じであんまり面白くもなさそうだしで、そんな深くは語らずさっさと終わらせちゃうので十分な内容かもしれませんが…。


とりあえず今回は、1つぐらい面白い豆知識的な話として、先ほど触れていた多核・無核のものについて簡単に触れておしまいとしましょう。

まず、多核生物ですが、粘菌とか、特殊な海藻類とかがそうであるといわれてますけど、まぁ特に粘菌とかは研究対象として結構面白いとはいえるものの、取り立てて今触れるほどのものでもないかもしれませんね。

一応目に付いた面白い多核体の生物の例として、アカンタリアなる輩が存在しましたが…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/アカンタリアより

「スターミー……スターミーじゃねぇか!実在したんかワレ!!」……としか思えないカッケぇフォルムをされてらっしゃいますが、とはいえこれは絵ですからね。

実際の姿は、ここまでカッコいいわけではないかもしれません。


気になったので、早速、東大・大気海洋研が公開されていた実物の写真を見てみると…

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http://www.icrc.aori.u-tokyo.ac.jp/archipelago_Acantharea.htmlより

…おっ?パネル詐欺じゃない、マジで結構イケビ(イケてる微生物)じゃないっすか!

まぁあんまスターミーみはないですけど、それでも面白いフォルムですね。


…って、まぁぶっちゃけ、多核だから核が1つしかない細胞生物より優れているかっちゅうと別にそんなこともなさそうなのが悲しい所かもしれませんけど、それ以前に、こんなナリをしているのに単細胞生物ってんですから、やはり微生物の世界も奥が深いといえそうですね。

結局、染色体や遺伝子の数(ゲノムサイズ)は生物によって違うので、核が2個とか下手したら十数個あったところで、トータルDNA的にはヒトの細胞の方が沢山のDNA塩基を含んでいる、なんてこともあるでしょうし(そもそもDNAが長いほど高等生物ってわけでもないのは、染色体の数を比較してみたときからも明らかでしたしね)、「ほ~ん、多核なんか。で…?」っていうそれだけの話かもしれません。


しかし、実は何を隠そう、我々人間にも、なんとそういう「普通じゃない数の核」をもつ細胞が存在しているのです!

まぁこれも高校生物で習うので割とメジャーな話ではありますが、代表的な多核細胞には、やはりまず骨格筋が挙げられますね。

自分で動かせる、いわゆる筋肉を構成する細胞です。

ただこちらは、複数の細胞が融合した結果1つにまとまった細胞っぽい塊を形成し、結果1つの中に複数の核がある…というだけで、まぁ元々は普通の単一核細胞だったのがただ合体しただけの、単なるズル野郎といえるかもしれません。

あとそれから有名所としては破骨細胞なんてのもありますが、こいつは核を数十~時には100個以上もつものとして知られており、その名の通り骨の破壊や骨吸収なんかで働く巨大な細胞ですけど、詳細については不明なことも多い、謎多き細胞といえますね。

当然、骨の再生にも関わるもので、そもそも骨髄というのは血液を作る場所としても知られておりまさに再生医療で注目すべき対象ですから(造血幹細胞とかどこかで耳にしたことがあるのではないかと思います。これも骨髄由来ですね)、これはこの先色々と未来がありそうな、面白い研究対象といえましょう。

でもまぁ入門編としては特に深追いする話でもなさそうです。


あとは、Wikipediaの多核細胞の例にはまとめられていませんでしたが、よりなじみがあるものでは、肝細胞も一部多核になってることが知られてますけど、まぁ筋肉に骨髄に肝臓と、死ぬほど重要で有能なやつらに多核なのが目立つということで、やはり核が複数あるのは、特別な高機能を発揮する上で何らかの意味があるのかもしれませんね。
(でも、例えば神経細胞とかも有能の最たるものですが、これは別に多核でもないので、特に多核化が高機能化の鍵ってわけでもなさそうです。)


じゃあ一方逆に、核が無い細胞はどうなんだ、その話の流れからいうと、クッソ無能なゴミ細胞か…?と思えるものの、代表的な無核細胞は、そう、赤血球

しかし赤血球は誰でも知っている、血の赤い成分、どう考えても超絶重要な細胞ですけど、これはズバリ、核どころか、多くの細胞小器官すら捨て去って、とにかく酸素を運搬することだけに特化した、超スーパースペシャリスト細胞だということなんですね。

核もリボソームも捨てた結果、中身がなさ過ぎて真ん中がへこんだ円盤型になるという、何とも突き抜けたタイプの細胞ですけど…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/赤血球より

このように凹むからこそ、表面積が増えて酸素の結合能力が上がる&めちゃくちゃ細い毛細血管の先っぽまででもある程度グニュリと形を変えて入っていくことが出来るという、素晴らしい有能さも兼ね備えた、まさに、自分の役割を理解してあえて断捨離をし尽くした偉大な細胞といえそうです。


なお、赤血球は核もリボソームもないゆえ、他の細胞と比べて寿命は著しく短く、120日程度で分解されてしまうといわれています。

だから、赤血球は培養も不可能であり、だからこそ、人工生産や作り置きなどが難しい→今の時代でもフレッシュな血は献血などで適宜新しいものを入手する必要がある、という話になっているんですね。


ちなみに、哺乳類以外の赤血球には核があるのですが、そのおかげで、ジュラシックパークで血を吸った蚊の中には恐竜のDNAが残っていたというストーリーが矛盾なく作れたわけで、もし遠い将来、ヒトより高等な知能をもった何者かが地上を支配し、そいつらが「ホモサピエンスパーク」なる映画を作ろうと思っても、「あぁっ!せっかく琥珀の中の蚊がヒトの血をもってたのに、DNAが存在しなかった!!!」となって、「…ヒトを再現することは出来なかった。ホモピパーク ~完~」と3分で終わるクソ映画になってしまうことでしょう(笑)。

いやまぁ白血球とかは有核細胞で、一応血液からDNAを採取することも普通に可能だと思いますけどね(笑)。


とりあえず、代表的な多核・無核細胞について少し触れてみました。

次回は先ほど書いた通り、液胞についてちょっと見てみようかなと思っています。

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