光についてもうちょい:意外と脳はバカと思える錯覚画像

ビタミンAの話から唐突に横道に逸れて始まった光と色についての話、何だかんだせっかくならもうちょい丁寧に触れた方がいいかなと思えたこともあり、追加でいただいたご質問も交え、今一度まとめてみようかと思います。

ビタミンとか分子レベルの話より、もっと身近でこっちの方が面白いっちゃ面白いですしね。

例によって毎回親切で温かいコメントをいただけるアンさんから寄せられた質問に、適宜自分で勝手に想定した追加質問も交えて、Q&Aで不足分の説明を補わせていただきましょう。


Q1. 色の話も難しい……というか、概念からごっそり変えられちゃう感覚というかで、どうもスッキリ納得がいかない。モニターは光を反射しているわけじゃなく、自分で光を発射…?じゃあ、モニターで黒く見える部分は?黒い光ではないということは、光ってないってこと…?うーんイマイチイメージが…。

A1. モニターの黒い部分が黒く見える理由は、やっぱり「光ってないから」になりますね。

コンピューター上で、黒い点(RGBオール0)は「光を出さない」というシグナルになっているはずです(その命令通りに、モニターに存在するその指定された場所の点(ドット)が、光るのをやめた状態になる)。

ただ、黒にも濃い黒と薄い黒(やや明るい黒)とがあるように、「黒にも色々あるじゃん」と思われるかもしれませんが、結局それは明るい黒は真の黒ではなく、RGBシグナルがそれぞれ少し足されているだけ(人間の目には黒く見えても、多少の赤・緑・青の光線が足されている)ということですね。

なので、より正確にいうなら、黒く見える部分は「(全部が全部光を一切出していないわけじゃないけど)出される光がとても弱い」といえるかもしれませんが、少なくとも「真の黒」(一番黒い黒。RGB0で指定されたドット)であれば、「光を一切出さない状態」になっているはずです。それよりも黒い黒は、モニター上では表現できません。

(もちろん、目の錯覚で、「周りが明るいとより暗く黒く見える」という作用により、同じRGBオール0でも見え方に差はあるかもしれないし、むしろ多少光ってても「ここは凄く黒く見えるなぁ」なんてこともあるかもしれませんが、あくまでもコンピューターのモニター上で最も黒いのは「RGBオール0で、光の発射量が0」の点になります。)


具体例を見てみましょう。

こないだリンクを貼っていた黒色無双の画像を、同じく前回紹介した便利サイトPEKO-STEPの画像から色を取得するツールで開いてみました。

前回はマウスカーソルの位置がスクショに含まれていなかったので今回は入れて撮るようにしてみましたが…

f:id:hit-us_con-cats:20210905064823p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより
(画像はhttps://dailyportalz.jp/kiji/kokushoku_musou-brain-bugより)

このマウスカーソルが置かれた場所は、真っ黒に見えるけれども、意外とR5G5B7と、微っ妙~に光っているわけですが、この程度の光では人間の目には黒く見える感じですね。

カーソルをうろうろ動かしても、意外にRGBオール0の点は見つからず、「流石に黒色無双でも、RGBオール0の漆黒は存在しないのか…」と諦めかけたその刹那!

f:id:hit-us_con-cats:20210905064854p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより

端っこの方に、オール0の点を発見!

本当に一見真っ黒なボールなのにどこも微妙に光が含まれていたので、(0, 1, 0)のスポットを見つけられた時点でこれを取得して諦めようと思いましたが、流石は黒色無双、真の黒もやはりあるもんですね。

もちろん目で見て「これは真の黒、そしてこっちの(0, 1, 0)の点は、緑の光線のレベルが1つ上がった光が発せられている!」などと分かる人間は恐らくこの世にいないと思いますが、とにかく、この点は3色の光が全部0=オフ(または緑光線レベル1という、ヨワヨワ光線のみが発射されてるだけ)になってモニタ上で表示されているということなわけです。

 

ついでなので、先ほど目の錯覚がうんぬんと書いたので、有名な目の錯覚画像についても見てみるとしましょう。

こちらはチェッカーシャドー錯視としてめちゃくちゃ有名な画像をチェックツールで開いた状況ですが…

f:id:hit-us_con-cats:20210905065010p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより
(画像はhttps://en.wikipedia.org/wiki/Checker_shadow_illusionより)

Bのマスは、RGBレベルで(112, 112, 112)と出ました(16進数なら#707070ですが)。

さて、Aのマスにカーソルを合わせてみると…

f:id:hit-us_con-cats:20210905065213p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより

全く同じっ!!

 

もちろん、Aの下の薄いマスはBよりも明るい(オール199)し…

f:id:hit-us_con-cats:20210905065255p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより

さらに下の濃い目のマスは、Aよりも断然濃い(60, 60, 60)という強さの光のグレーマスという感じです。

f:id:hit-us_con-cats:20210905065425p:plain

https://www.peko-step.com/tool/getcolor.htmlより

何度見てもAとBのマスは同じ色には絶対見えないわけですが、かように人間の脳というのは周りの色に引きづられて実際の色そのものを認識できないバカさもあるということですけど、いずれにせよ、コンピューターは命令通りのRGBレベルで、モニター上の点(ドット)を発光(発色)させているということですね。


ちなみにモニターのドットといってもこれまたイメージが湧かないかもしれませんが、これもズバリ、液晶ディスプレイやタブレットなんかは、本当に小さな点(命令通りに光を放つ点、ドット)が規則正しく並んでいる形になっています。

いくつの点が並んでいるかは、ズバリ、解像度というよく聞く用語で定められており、例えばiPad Proの12.9インチですと、スペック情報には「2,732 x 2,048ピクセル解像度、264ppi」と書かれていました。

これはつまり、iPadの画面の縦方向に2732個の光を発色する点(ドット)が、横方向には2048個のドットがズラーっと並んでおり(合計2732×2048=559万5136ドットが存在)、このドット1つ1つが「R255、G99、B71」みたいな命令を受けて、その通りに光ることで、我々はモニター上の文字なり画像なりを特定の色をもった情報として受け取っているということなわけですね。


具体的には、各ドット(まぁピクセルという方がより正確な用語かもしれませんが、いずれにせよiPadの縦方向に2732個ある、超小さい1つの点のことですね)は、超拡大して見ると、こんな感じの中のいずれかのものになっているようです。

f:id:hit-us_con-cats:20210905065537p:plain

https://www.researchgate.net/figure/a-Seven-subpixel-configurations-traditional-1D-RGB-stripe-three-different-proposed_fig1_295905125より

一番ベーシックなのが左上のストライプで、1ドットがこういうRGB3つの光を放つブロックで作られており、例えば「R255、G99、B71」という命令を受けたドットは、赤光線を255レベル=Max全力で照射し、緑光線はレベル99の強さ、青光線はさらに弱いレベル71の強さで光り、結果、このドットから出される光は人間の目にはオレンジ色に見える(これは、前回カラーパターンの例で見ていた、「tomato」という色のカラーコード)、という仕組みなわけです。
(もちろん1ドット程度の光では小さすぎてほぼ見えないので、その周辺のドットが束になって似たような光を発することで、人間の目に「トマト色の物体だ」と視認させている形ですね。)

先ほどの画像、恐らくストライプ以外のやつはドット内でも3色の光源がバランスよく配置されていますから、こういうタイプのドットを備えたモニターの方が発色がキレイだったりするのかもしれませんが、(軽く調べた限り)最新のiPadでもストライプドットのようなので、まぁコストの問題とかで、ほとんどのデバイスでは単純な3色ストライプドットになっているのではないかと思われます。

(なお、Apple製品はRetinaディスプレイと呼ばれる、従来の1ドットを更に分割した形(1ドットが9ピクセルなど)で表示する技術なんかで、より滑らかに画像を表示できる工夫がされてるということで、「ドット」と「ピクセル」は微妙にきちんと使い分けた方がいい表現だったかもしれませんが、まぁ今はそんな細かい点は深入りしなくてもよいでしょう。

 また、画像右側にあったRGBWの4色込みのピクセルが採用されているデバイスも存在はするのでしょうが、極めてコストもかかるでしょうし、今現在の世界においては一般消費者向けのものではないように思います(ディスプレイの専門家でもなんでもなく、詳しい調査もしていないので、適当意見かもしれませんが)。)


なお、当然ですが、同じ解像度でも、実際のモニタのサイズによって「きめ細かさ」が変わってくることになります。

例えばiPadと同じ「2,732 x 2,048ピクセル解像度」が、例えば新宿アルタの街頭ビジョンとかクソデカスクリーンに並べられていたとしたら、スカスカすぎて見れたものじゃない感じになるでしょうし(まぁそれは極端すぎますが、例えば30インチのそんなに大きくないTV(でもiPadよりは、面積で6倍ぐらい大きい)とかにこの解像度を適用するとしても、各ドットの隙間が酷いことになりますから、めちゃくちゃ粗いギザギザの画像になっちゃいますね)…
(※追記:実は調べたら全くそんなことはありませんでした。次回の記事で触れる予定です。)
…逆に、スマホぐらいの、より小さい画面に同じ数のピクセルが敷き詰められたとしたら、めちゃくちゃびっしり詰まって超細かい描写が可能になるといえましょう(といってもこれは単純にそうとも限らず、詰まりすぎて物理的に配置できないとか、コンピューター側でうまく制御できず上手に画像を描写できないなんて可能性もあるかもしれませんが、まぁ実用に耐える規則正しい配置ができるという前提条件であれば、一般的には、同じ解像度(同じ数のドット・ピクセルが存在する)なら、小さい画面の方がきめ細かい描写は可能になりますね)。

その、画面上の発色ドットの存在密度のことを「ppi」と読んでおり(pixels/inchのことで、1インチあたりのピクセル数のこと。モニターの場合、ドットのことをピクセルと呼ぶのでpixels per inchでppiですが、印刷物とかの場合、そのままdots per inchでdpiという語も使われますね)、iPadピクセルの詰まり具合=ppiは、264ということです。

ITmediaの記事に、ppiの違いによるきめの細かさについての非常に分かりやすいイメージ図があったので、ぐだぐだ言葉で語るよりこれを見れば明らかでしょう。

f:id:hit-us_con-cats:20210905065606p:plain

https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1412/11/news009_2.htmlより

もちろんこれもあくまで単なるイメージ図ですが(実際この画像を表示しているモニターの現実的なppiは、今これを見ている方ご自身がお使いのデバイスによって違うわけですしね)、モニター上に、色を発色する最小単位のドット(ピクセル)が密にあればあるほど(ppiが高いほど)高精度な画像描写が可能になるということは容易にご理解いただけると思います。

いずれにせよ、この辺の知識も「モニターは、1ドットずつが(RGBレベルの指定通りに)発色して画像を表示している」ということの理解の助けになるように思えたので、触れてみた感じでした。

また、モニター上の画像の見え方については、もちろんモニター自身も光っていますが、普通はさらに天井の蛍光灯からの光(や外からの太陽光など)もあるので、実際に見える色は、それら全ての兼ね合いになっている形ですね。

色々考えるとかなりややこしくなりますが、まぁ真っ暗な部屋でもモニターに映るものは普通に見える(むしろ眩しい)ということで、これはモニター自身が光っているからだ、ということが抑えられれば、あえてややこしく考える必要もないといえましょう(実際、蛍光灯の反射とかよりモニターからの光が直で目に届くものの方が圧倒的に多いですしね)。

Q2. 赤いセロハンを貼った電球の赤い光があたったものは、赤以外だと黒く見えて、赤いものだけが赤色に見えるってこと?いやぁ~、これも、イメージできないっすねぇ~。

A2.  前回の赤いセロハンの話は、まぁそんな状況を経験したことがある人はほぼいないと思われるので、想像するのは難しいシチュエーションだったかもですね。

何かいい例はないか考えてみたら、トンネルの中とかが割と近いかもしれません。

もちろんトンネルも完全に閉鎖空間ではないし、車のライトなんかもあるので完全に理想的な条件ではないですが、トンネル内にはナトリウムランプというあの黄色い光を出すやつのみしか設置されていないことが多いので、ほぼ黄色い光線しか存在していないため、例として「黄色いセロハンを貼った電球に照らされた部屋」と近しいものといえましょう。

(…って、もしかしたら最近のトンネルは白色灯が普通に使われていることも多いのかもしれませんが(車ももっていないし、最近トンネルを通った記憶もないので、現代のトンネル事情に追いつけていません)、まぁこの話では昔のトンネルとかをイメージしていただければと思います。)

(なお、ナトリウムランプは、日本分光の解説記事によると、589.6 nmと589.0 nmとに鋭く強い輝線をもつ、単色の光源ということですね。この波長は、まさに黄色の光線です。)

f:id:hit-us_con-cats:20210905065639p:plain

https://www.jasco.co.jp/jpn/technique/internet-seminar/cdord/cd6.htmlより

トンネル内を思い浮かべてもらうと想像できるかと思いますが、全てのものが黄色くなって、色が判別できなくなるイメージは十分もてるのではないかと思います。

これはつまり、黄色い光を跳ね返せるものは全て黄色く映り、その他黄色い光を吸収してしまうものは、光が自分の目に届いてこないのでただ暗い影のようになるということですね。
(意外とトンネル内の光も明るいのでイメージが湧きづらいかもしれませんが(全体的に黄色く染まって、何かとにかく色んなものがまぶしい印象かもしれないので)、黄色を跳ね返さない物体は、黒くなっているように思います。例えば、トンネル内の側壁に設置された赤い消火栓とかは、黒く見えるはずですね)。

まぁあとは、子供用学習雑誌の付録とかについてそうな青赤メガネ、まぁあれは右目で青・左目で赤のみを見るという状況で、青と赤が微妙にずれて描かれた絵を見て「立体的に見える!」と喜ぶオモチャですが(今では映画館とかでも使われてますかね?)、あんな感じのやつで、右目側だけ青メガネだけを通して見て「自分の目に届くものは青い光線だけ」にしてやる と、青い物質(および青い光を跳ね返す物質)は明るく見えて、青い光線を吸収する青以外の物質は黒く見える(まぁ黒く見えるというのも極端かもしれませんが、もちろん真っ黒で存在が消え失せるわけではなく、白黒画像でいう黒になる、ってことですね、今は青黒かもしれませんが)、って感じと同じことだといえましょう。

結局あんまりイメージも湧かないかもしれませんが、要は単色光しか存在しない環境だと、世界がモノクロになる、ってことですね。
(そのフィルターの色をもったもの(トンネルなら黄色、赤セロハンなら赤)が最も明るく見えて、その色を吸収してしまうものはどれも黒く暗くなるということ。)


2つの回答だけでいい量になってしまいましたが、まだいただいたご質問で割と面白い感じのものが残っているので、次回もQ&Aを続ける予定です。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村