脂肪の反対は…?

小学生「うぼし!」

筋トレ好きの人「筋肉!」

料理好きの人「赤身!ささみ!」

ダイエットに励む人「ダイエット成功!」

ドラえもんマニア「スネ夫!!」(脂肪の付いてそうなジャイアンと対を成す存在だし、苗字が骨&皮だから)

…などなど色々な案がありそうで、そのどれも正しいのですが(スネ夫、正しいか…?)、しばらく続けているこの有機化学入門では全く別の案が存在します。

それが……

有機化学者「芳香!」

という、まさかの、スネ夫以上にあり得ないワード!

そう、有機化合物には2大グループがあって、これまでの記事でずっと見てきた、炭素が直線的につながった骨格をメイン構造としている物質を「脂肪族化合物」と呼んでおり、それと対をなすグループが、輪っかをもつ芳香族化合物と呼ばれているやつらになります。

脂肪族化合物については、これまでの記事で概ね重要そうなやつ・生活に密着しているやつは見てきたので(1つ、めちゃくちゃ重要な官能基に触れていませんでしたが、それはまぁいずれまた触れることになるので、後回しでいいでしょう)、今回は満を持して別グループの芳香族にいってみるとしましょう。


脂肪族化合物の出発物質、最も単純なものは、炭素の腕4本に水素がつながっただけの、CH4メタンでしたが、芳香族化合物の全ての基本、出発物質は、ベンゼンになります!

残念ながら日常生活であんまり耳なじみがあるわけではない名前ですが、構造を見たら「こいつか!」ってなるやつですね。

例によってWikipedia大将から画像をいただきましょう。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ベンゼンより

…ってあれ、ウィキペ画像は、よく見るパターンのやつ(六角形に、一個置きに二重結合がある簡略図)が載ってませんが、まぁ実はこっちの形の方が現実に即しているといわれています。

炭素原子Cが六角形状にリングを形成し、各炭素Cは隣のCと腕を1本ずつ、そして水素Hとも手をつないでいるわけですが、それだけでは合計3本なので足りないわけですけど、残り腕1本分は、リング全体で共有することで、ちょうど合計してどの炭素も4本の腕がつながっているという、まぁ入門者にとっては逆に分かりづらい表記かもしれませんね。

よく見るやつは、同じページ下の方の、「ベンゼン表記法の歴史」の項目の、一番右側のやつですね。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ベンゼン#歴史より

これなら(そして、他のは見慣れませんが、他のやつも点線の○以外の全て)、全ての炭素から4本腕が出ている(もちろん、この図では水素が省略されているので、3本ですが)ことが分かりやすいので、個人的にはこの描き方のほうが好きです。

ただ、くどいですが、現実的な状態をより正しく反映しているのは、六角形に丸印が入っているやつの方になっている感じです(結局、腕というのは電子の共有であり、実際はリング全体で電子を共有しているから)。

なので、電子軌道について詳しく習う大学以降の有機化学では⬡(←六角形の記号文字ですが、ブログ上で正しく表記されますかね?)の中に○を描く方が多用されている気がします(何気にそっちの方が手で書くのは楽ですしね)。

…が、そんなことは入門編ではどうでもいいでしょう。

いずれにせよ、このベンゼンが芳香族グループの基本物質であり、芳香族というのは「ベンゼン環を含む物質」であるわけです。

もちろん脂肪族にも環状の構造を含むやつは存在しますが、ベンゼン環でなければ芳香族とは呼ばれません。

…といってもそんなのは人間が勝手にグループ分けしたどうでもいいカテゴライズなので、特に意識する必要もないでしょう。

学習者が、まとめて勉強するのに便利だから、そう分けているのに過ぎない、って話ですね。


ちなみに芳香族という名前の由来は、基本的に、このベンゼン環を含む物質は特有のニオイがすることが多いからその名が付けられたという、まぁ当たり前すぎる話ですね。

英語ではaromatic、まさにアロマなのです。

これまたもちろん、脂肪族にも香り高いものはいくらでもありますし、ベンゼン環を含んでいてもニオイが一切しないものもありますが、これはあくまでグループ名ですから、香りがなくてもベンゼン環さえ含んでいれば「芳香族化合物」には違いありません。


脂肪族は結構分かりやすい命名ルールがあったんですけど、芳香族の方は、基本的に慣用名が使われるので、覚えることは多くなる感じかもしれないですね。

でもまぁ、別に試験を受けるわけでもない入門編ですし、覚える必要はなく、気軽に、「あぁ聞いたことあるようなないような!」と流し見していただければそれで十分でしょう。

そんなわけで、芳香族化合物、著名なものだけに着目して、順に紹介していこうと思います。


まずベンゼンは、全ての芳香族の基本物質でありながら、これは別に特記事項なしですかね。

有機化合物は生化学実験でもめちゃくちゃ多用されますが、こいつはあんまり使われることもないですし、僕自身、一度も使ったことがありません。

一応、液体なので試薬としての購入も簡単にできますが(メタンやプロパンは気体なので、扱いが難しく、生化学実験とかでの出番はほぼなし。もちろん、工業的用途や、家庭用のガスとかで、めちゃくちゃ社会で使われてはいる物質ですが)、毒性も高く使い道がないので、マイナー野郎ですね。

ちょうどWikipediaの最初の段落にもありましたが、名前は似ているけど、ベンジンとは全く異なる無関係な物質です。

どっちも有機溶媒という共通点はありますが、ベンジンはガソリンの仲間で、むしろ一般社会ではベンジンの方が耳なじみのある物質だったかもしれませんね。


まぁベンゼンは特になにもないので、次へ進みましょう。

ベンゼンの次に単純なものといえば、まぁ、ベンゼンの-Hを1つ、こいつを、一番単純な官能基の1つであるメチル基-CH3)に変えてやりましょうか。

もちろんメチルベンゼンと呼ぶことも可能ですが、実際にそう呼ばれることはなく、どの分野の人からも、慣用名で、トルエンと呼ばれています!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/トルエンより

こちら、どんなものかといいますと、ズバリ、シンナー少年の吸う、シンナー臭のする液体になります。

(揮発性の高い液体で、トルエン自体は液体ですが、室温でもどんどん空気中に飛んでいくタイプですね。)

シンナー少年たちの間では、純トロとか純トルとか呼ばれて高値で売買されているものだと思いますけど、物質自体はそこまで高価なものでもなく、むしろ試薬としては安い有機溶媒に入るものなので、有機溶媒が必要な場面では、安価な有機系液体として、実験室で使われることもあります。

実際僕もたまに使ってますが(…って書くとシンナー吸ってるみたいですけど、そうではなく、実験用途で使うって意味ですね(笑))、まさにガソリンに近いというかトルエン臭というか、特有のニオイがするものです。

当然、シンナー少年は歯が欠けたり色々ボロボロになることからも明らかな通り、こいつは人体に有害なので、使うときは換気扇みたいな吸引ダクトのそばで使うなどして、揮発したトルエンを吸わないように注意していますが、ラフに扱うとニオイは感じますねぇ。

別に取り立てていいニオイでもなく(まぁ、ガソリン系のニオイが好きな人は多いので、嫌なニオイではない人がほとんどかもしれませんが)、酔う感覚も一切ない(当然、そんなに影響が出るほどは吸っていないから、かもしれませんけど)ので、「こんなんの何がいいんだ?」と思いますが、横流ししたらかなり高値で売れるぐらい、混じり気のない純トルは、シンナー少年が喉から手が出るほど欲しい物体なのかもしれませんね。

トルエンは、極々微量ですが、マニキュアとかにも含まれることがあるようなので、女性の方でも何となくどんなニオイかは予想が付くかもしれませんね(まぁ、ニオイがわかるほど入っているとは思えませんが)。

むしろ有機溶媒臭なら、除光液の方が近いかもしれませんが、除光液はトルエンではなく別の有機溶媒アセトンのようなので、若干違うタイプでしょうか(除光液を使ったことがないので、実際どんなニオイなのか分かりませんが、アセトンとトルエンは、まぁちょっと違いますね)。

いずれにせよ、少量なら問題ないとはいえ、その手のいわゆる有機溶媒臭は体にいいものではないと思うので、好んで嗅ぐことはしない方がいいかもしれませんね(もちろん、市販されている除光液とか程度で健康に影響があるとも思えませんけど)。


トルエンといえば、派生物でもう一つ有名なものがあるので、今回はそれだけ触れておくとしましょう。

トルエンに、以前出てきたニトロ基(-NO2が3つついたものが、ニトロが3つで、トリニトロトルエンと呼ばれる物質になります。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/トリニトロトルエンより

ニトロ基という官能基の特性、並びにトリニトロトルエンという名前から、どんなものかピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。

これはTori-NitroTolueneの頭文字をとって略称TNT、ゲームや戦争映画が好きな方であればこれはまさにおなじみでしょう、前回ニトロ基が登場したニトログリセリン同様、これは、火薬・爆薬ですね!

スーパードンキーコングをプレイしたことのある方、すなわちこの世に存在する人間全員がご存知、爆発する樽、TNTバレルなんかでおなじみでしょう。

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https://www.mariowiki.com/TNT_Barrelより

ちなみに正確には、ニトロ基の付いている部位を示して、2,4,6-トリニトロトルエンと表記すべきですが、TNTは基本的にこの結合パターンしかないので、数字部分は省略されることが多いという感じですね。

ニトログリセリンにいたっては、同じく3つニトロ基があるのに「トリ」すら省略されるぐらいですから、まぁそれだけ実社会で馴染みのある、いわばもう慣用名に近い名前ということでしょう。)


というわけで、トルエンは何となく危ない物質でしたが、でももちろん正しく使えば人間社会になくてはならない欠かせない有機物(芳香族化合物)であるともいえる感じですね。

次回も、芳香族でシンプルなものから順に、メジャーなものを中心に順次見ていこうと思います。

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