改めて、Q&Aでややこしい点解消にチャレンジ!

前回の記事でややこしい用語の解説をブワァーっと、めっちゃ早口でいってそうな感じでまとめていましたが、これ正直、分かってる人には当たり前すぎてほぼ何の意味もない一方、初めて学ぶような人には、一気にまくし立てられすぎてて何のこっちゃよぉ分からん…という、誰も得しない感じになってるかも…という気もしていました。

実際、毎回本当に的確な疑問点等を含んだコメントをいただける、この辺の生命科学全般のジャンルについてはモグリでいらっしゃるアンさんからも、「むむむ、後半はちょっと厳しいかも…?」というフィードバックをいただいていました。

もう何度か書いてますけど、本来生物を選択した高校生が必要に迫られて半年とかかけて学ぶ内容なので、新しい単語がビシバシ出てくるのを、寝っ転びながら文章をツラツラ読むだけで理解できるようになる(ことを目指しているわけですが…)なんて、土台無理があるんですよね。

でもまぁ、幸い数学や物理よりは、整理さえできればただ読むだけで十分一定の理解が得られる可能性は高い上、数学や物理より遥かに日常生活に近いといいますか身近な、自分自身にも関することなので興味も持ちやすい、って点はあるかもしれないので、せっかくの機会ですし、「分かった気がする!スッキリ!」という体験をしてもらえることを目指して、説明再チャレンジをさせていただきましょう。

コメントとともに改めて疑問点をまとめていくつかいただいていましたが、どの質問も、めっちゃ有能な初学者の仕事といいますか、僕自身「なるほど、いわれてみたら、確かに分かりづらい!」という気付きもあったので、また今回とりあげさせていただこうと思います。

基本的に、前回の記事を受けていただいたご質問ですね。


Q1. 「奥二重の遺伝子が存在しない」というのは、この場合は「あくまで例として」という意味?それとも、実際現実的に存在しない?そもそも、存在している全ての遺伝子は明確になっているって理解でいいのか…? 

まずとりあえず改めて、「奥二重の遺伝子」は、前々回から話に出している、僕が作ったあの例の中では存在しません。

なぜなら、あの「例として作った世界」の中では、一重の遺伝子と二重の遺伝子ししか存在しないという設定だから、ですね。

(この例の世界で、奥二重は「遺伝子」ではなく、「表現型」でしかない。
 おさらいすると、一重の遺伝子と二重の遺伝子を両親から1つずつ受け継いだ場合、奥二重という表現型になるという設定でした。
 「『奥二重の遺伝子』を持っている」のではなく、「一重と二重の遺伝子を持っている」「奥二重という表現型(見た目)になる」といわなければいけない、という話ですね。
…もちろん、「奥二重の遺伝子を持っている」といわれたら、「あぁ、一重と二重の遺伝子を1つずつ両方持ってるんだな」という推測が立つというか確実にそう断定できますが、言葉の使い方としてその表現は正しくない、ということですね。)

一方、現実世界は、分かりません

多分現実も、勝手に作った先ほどの例みたいに、一重遺伝子の強さと二重遺伝子の強さによって奥二重という表現型が生まれるのではないかと思いますが、もしかしたら単独で「奥二重を決定付ける遺伝子」があるのかもしれません。

前回チラッと書いた通り、まぶたの形は1つの遺伝子でバシッと決まるわけではなく、複合的な要因で決まっているもののようなので、まだハッキリとは分からない、というどっちつかずの感じが答になりそうです。

(ただもちろん、まぶたの形が遺伝するのは間違いないですね。でも、「この1つの遺伝子ですべてが決まる」とか「この遺伝子があれば、一重の人は奥二重になる(=もしあるなら、これこそが『奥二重の遺伝子』ですね。くどいですが、あるかどうかは多分わかってないと思います)」とか、そういう詳しいことは完全には解明されてはいない、という感じです。)

また、「生まれか育ちか」も当然、影響がある要因の1つといえましょう。

要は、「遺伝子か、環境か」ですが、まぶたに関しては、環境もあることにはあるけど(太ってまぶたに肉が付いたり、加齢でたるんできたら見た目なんて当然変わりますから)、間違いなく遺伝子の影響の方が大きいといえるように思います(改めて、僕は別にまぶた遺伝の専門家ではないので、素人の意見ですが)。

一方、血液型は遺伝子100環境0で決まるもので、その逆の遺伝子0環境100は…何かありますかね?あぁ、「どの言葉を母国語として話すようになるか」とかは、遺伝子の要素0ですね。日本人夫婦から日本で生まれた赤ちゃんでも、例えば生後即さらわれて海外で育った、とかなれば、その海外の国の言語を話す人になりますから。

ただ、100対0のものは珍しく、何事も環境の影響も受けるので、あんまり理想の遺伝子をもらえなかったな、と思うことがあっても、日々の努力で何とでもなる(ものもある……お酒分解酵素ALDH2みたいに、「ザル酵素EE型が良かった!何で俺はあんまり強くないEK型なんだ!」と嘆く人が、いくら努力しても、多少「慣れ」で分解酵素の生産能力が強くなることはあっても、EE型を持つ人のようには決してなれない、みたいな、後天的な努力では何ともならないものも、当然あります)のかもしれませんね。

ご質問後半、「存在している全ての遺伝子は明確になっているか?」は、質問が若干あやふやですが、「『存在している全ての表現型(=見た目や性質)を決める』遺伝子は、全部明らかになってるのか?」であれば、多分全然分かっていないと思います。

例えば僕自身が持ってる珍しい(調べたら、結構いるみたいですが)性質として、「耳かきをして耳の奥をつっつくと、せきが出る」というのがあるんですけど(ちなみに右耳だけ。左は大丈夫です)、この「耳ツンでせき」という表現型を決める遺伝子は、多分全く分かっていないでしょう。
(「せきが出る遺伝子Sと、出ない遺伝子Dがあって、SSが揃った場合だけせきが出る」みたいな話にはなっていない、ということ。)

ちなみにこれは「迷走神経が刺激される」ことでせきが出るそうなので、恐らく迷走神経がどこを走っているかということを決める、例えば内耳の構造を決める遺伝子や骨格を形成する遺伝子などが複雑に絡み合ってそうなってるんだと思いますが、結局それもあくまで推測に過ぎず、「詳しくは不明、今後の研究が期待される」という生物学お得意の、未来へ丸投げパターンかと思われます。

結局、人間の見た目や性質のほとんどは、一つの遺伝子で決まるほど単純なものばかりではないということですね(もちろん、耳垢や血液型のように、たった一つの遺伝子でバシッと決まるものも存在しますが)。

生命の仕組み・人体の仕組みがまだよく分かっていないのはそういう理由もあるといえましょう。複数の遺伝子が複雑に絡み合って決まっているものですと、それを上手に解析することなど困難を極めますから…。

また、先ほどの質問が、「今まで見つかった遺伝子は、全て役割が明確になっているのか?」という意味の話であれば、これも「明らかにこの遺伝子からタンパク質が作られているけど、ハッキリとした役割は不明」というものもまだまだ沢山あります。

ものすごく色々なことが分かってきたとはいえ、人間の複雑さ神秘さはそれに輪をかけて凄まじいものですから、まだまだ謎はいっぱいなのです。

今後の研究が待たれますね。

 

1つ目のご質問だけで長くなりましたが、以降は簡単な質問から、簡単に見ていくとしましょう。

Q2. DNAは60億文字で、お酒分解酵素のDNAが1551個ってことは1551/60億ってこと?…あれ、ヒトゲノム約30億塩基なら、1551/60億ではなく1551/30億?

お酒分解酵素ALDH2のタンパク質を指定するDNAは1551文字ですが、全体の割合で見るなら、1551/30億ですね。

逆に、人間は、お酒分解酵素のDNAを、父親と母親両方から受け継ぐので、1551×2=3102文字分持っているともいえます。

そう考えた場合、3102/60億ともいえましょう(約分して結局同じですが)。

日本人のほとんどは、この酵素に関して、強いE型と無力なK型の遺伝子を両方もってますから、EKの父とEKの母とから、自分も半分の確率でEK(=「そんなに酒に強くない」表現型)になっているということですね。

その場合、E型のDNA情報1551文字、K型のDNA情報1551文字を持っている、という形です。

Q3. 1551個つながって初めて意味のあるタンパク質になるってこと?なら、60億文字のDNAでも情報は60億じゃなくない?

そうですね、DNAは「60億文字」存在するから、「60億文字分の情報」があるとは何度も書いてましたけど、これは「60億種類のタンパク質を作る」というわけでは全くありません。

誤解を招きやすい書き方だったかもしれませんね。

実際は、2万~3万種類の遺伝子が、これまでの研究で知られています。 

タンパク質がつながってうんぬんについては、実際最初の数アミノ酸とか最後の一部とか(でも504番目は超重要なので、最後の方はより重要なのかもしれませんね)をなくしても普通に機能すると思いますが、とりあえず「人間のもつALDH2のDNA設計書は1551個になってる」って感じですね。

Q4. 化学的に塩基と呼ばれる物質…は?どゆ意味?

例えば、調味料の酢は、正式名は酢酸で、化学的には「酸」と呼ばれる物質です。

(厳密にはちょっと違うけど、もう少し分かりやすい例としていえば)例えばは、モノとしてはあの鉄ですけど、化学的には「金属」と呼ばれる物質でもあります、みたいな感じでしょうか。

物体の性質で、鉄やアルミニウムは「金属」と呼ばれるグループに属す物質で、DNAのA, C, G, Tは「塩基」と呼ばれるグループに含まれる物質です、って話ですね。

Q5. AとGはプリン塩基、CとTはピリミジン塩基と呼ばれるもの…え?いやいや、Aはアデニン…て言ってたやん!

Q4にも通じる内容で、固有名詞はアデニンだけど、所属グループ名として、「プリン塩基の一種」という呼び名がある……つまり、「プリン塩基の一種、アデニン」といえる、ということですね。

Q6. 連続する3塩基でもコドンといわないことがある…呼び名だけの問題?真ん中を抜き取ってみてもコドンかコドンでないかわかる?

適当なDNAの文字列をもってきて、いきなり「どれがコドン?」と聞かれても、絶対分からないですね。

「始まりが1番目のアミノ酸を指しています」という但し書きがある文字列なら、そこが何番目かを数えて、3の倍数で終わる3連続のものであれば「これはコドンだね」ということは、できます。
(例:1444-1445-1446番目の3塩基はコドンになっている、でも、567-568-569番目の3塩基はコドンではない。)

あくまで呼び名ですし、タンパク質が作られるとき以外は、コドンとコドンじゃない3塩基に違いはありません。

Q7. DNAの粉末?!何ぞや?

DNAもタンパク質やアミノ酸と同じように、あくまでも物質ですから、大量に集めれば目に見える物体になります。

DNAも、精製された純品は、白い粉末です(ものによっては、透明の薄いフィルムみたいな感じにもなりますけど)。

でも、生体内では普通、液体に満たされた細胞内にあるんだから当然ですが、粉ではないですね。

基本的にどうやって存在しているかは、もうずっと話に出す出す詐欺になっていますが、多くの場面で、染色体という形になって存在しています。

詳しくは染色体の話で…。

Q8. タンパク質を補給してるから体内のアミノ酸は通常はなくならないってことだったけど、DNAが物質(粉末)なら、なくなったりはしないの?

いい質問!

基本的には、タンパク質は、ゼロから産み出されるもの=いわば製品なので、材料であるアミノ酸を消費して作られるものだけど、DNAはただ読んでくだけの本ともいえるので、一旦細胞ができてしまえば、DNA(というか、材料であるヌクレオチド)はなくならないんですね(情報が読まれるだけなので)。

もちろん、「細胞分裂のときに完コピして分裂元分裂先どちらも同じものを持つようにする」と書いた通り、分裂時にはコピーを作るためにヌクレオチド60億塩基が必要になるわけですが、一度細胞ができちゃえば、そっからは何度でも何度でもレシピを読むために使われるだけ(DNAもその材料も消費されない!)なので、DNAの材料がなくなる心配は、ほぼする必要がないでしょう(少なくともアミノ酸より、圧倒的に消費量は少ない)。

もちろん、DNAの材料=核酸分子も、食品に大量に含まれるので、食事から補給することが可能です。

Q9. ビーズは1551個で切れてる?ひとつの核に1本?ビーズの鎖が何個もあるって感覚?
Q10. 父からの30億と母からの30億は、混ぜこぜになってる?

その疑問も、ナイス着眼点ですね!こちらも、染色体の話のときにまた…。

Q11. 全ての遺伝子を2セットずつ…父からの遺伝子と母からの遺伝子っていう意味?

これ、前回の記事をアップした後、改めて自分で読み直していて、「『2セットずつ』というのは、『1セット=2つ1組が、2セット=計4つ』みたいにも読めてしまって、誤解を招くな…」と思ったので、しばらくして「全ての遺伝子を2つずつ」に修正していました。

直す前の文をご覧になってたようで、誤解を招きやすい書き方になってて申し訳なかったです。

より分かりやすく正しくは「人間は、全ての遺伝子を2つずつ持っている」で、ご推察の通り、父からの遺伝子1セットと母からの遺伝子1セット(「一式」という意味での「1セット」)で、あわせて全ての遺伝子は2つずつ存在、ってことですね。

血液型遺伝子がAOとか、お酒分解酵素がEKとか(念のため、EとKは僕が勝手に名付けただけで、正式名称ではないのでご注意ください)、我々はみな、どの遺伝子も、常に2つずつもっています。

Q12. DNAは設計書で、人によって違う部分はお酒の分解酵素でいうとアミノ酸517個(1551個)のうち504番目だけ?そこだけが遺伝で変わってくる部分?

う~ん、いい質問ですねぇ~。

もちろん全人類の全DNAが調べられたわけではないので多分に推測も混じる話ですが、実は、遺伝子DNAで、人によって違う部分というのは結構存在します

大体、1000塩基に1箇所は、個人によって差が存在するといわれていますね。

ですが、コドン表を思い出していただけると分かるんですけど、1塩基が変わっても、結果指定されるアミノ酸は変わらないことも、ままあるんですよね。

(例:GGAGGCGGGGGTも、全てグリシンになるので、GG◎の部分が何に変わっても、タンパク質には何の影響もない。)

もちろん、1塩基が変わることで指定アミノ酸が変わってしまうこともありますが、タンパク質も巨大分子であり、重要な所・そうでない所色々ありますから、どうでもいいアミノ酸が変わっても、特に機能としては何の影響もないこともまた、ままあるのです。

当然、たったの1アミノ酸が違うだけで、劇的に能力を失うこともあり、それの代表的なものが、前述の、お酒分解酵素ALDH2の504番目のE(グルタミン酸)がK(リシン)になるパターンですね。

なので、「個人差はあるけど、変わってもどうでもいいものは無視されている」というのが実際といえましょう。

なお、ALDH2の504番は、影響がバカデカいのみならず、個人差のレベルを超えて、集団(アジア人)として同じ変化を持っていることが多いので、よく知られているというパターンですね。

平均1000塩基に1つは違うとのことですから、同じEKの遺伝子を持つ人でも、合計1551×2=3102塩基中、3塩基は違う可能性が高いということになります。

もちろん全く影響のない変化(=指定するアミノ酸が変わらない)の場合もあるでしょうが、指定するアミノ酸が変わってしまう変化の場合、E504Kほどの影響はまずないとはいえ、微妙にでもタンパク質の構成が変わる以上、若干の能力変化はあるかもしれません。

同じEK持ちの人でも、よりお酒に弱い人もいるのは、そういう微妙な変化が悪さをしている可能性も、もしかしたらあるのかもしれませんね(もちろん、お酒の分解はこの酵素だけがすべてではないので、他の要因が絡んでいる可能性も、大いにあります)。

もちろん、変わってはいけない所が変わってしまう例もあり、お酒分解酵素とかまぁなくなってもどうでもいいものならともかく、生命活動に必須の遺伝子ですと、大変なことになります。

それが、遺伝病と呼ばれるもので、有名な例だと筋ジストロフィーとかがそれにあたりますね。
(最も有名なDMDという筋ジスでは、途中のコドンTACが、TAGになってしまっている場合があります。
 コドン表をチェックすると分かるとおり、TAGは、まさかの「タンパク質合成おしまい」を意味する、停止コドン!途中でいきなりタンパク質が切れちゃうんですね。
 難病であり、未だに根治にはつながっていません。冗談抜きに、今後の研究に期待されています。)


…という所で、一通りご質問はさらえたので、その他追加のあやふや点がなかったら、次回、染色体の話へいってみましょう。

もしあやふやな点・気になる点がありましたら、どなたでもドシドシご質問ください。

話を進めるより、疑問解消の方が圧倒的に大切であり、個人的にも楽しい&ありがたいです…!

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