Q&A続き:イメージが湧かないよ!どうすればよい?

前回アミノ酸からどうやってタンパク質が作られるかの話の一環で、「DNAアミノ酸の並び順を指定して、タンパク質が作られています」と書いていました。

実は、書いたときは「ちょっと常識すぎる話で、流石にこんな当たり前の話をツラツラ語るのも失礼か…?」などとさえ思っていたのですが……

記事アップ後、毎回丁寧なコメントをいただけるアンさんから、「…ム、ムズい…!これは、かなりレベルが高いですよ…!」という、極めてありがたい、率直な感想をいただきました。

…いわれてみると…確かに……そうかもしれない!

自分はもう長年、そんな感じのことを仕事としてやってて馴染みがあるわけですけど、実際前回の話は、選択科目で生物を履修した高校生が半年ぐらいかけて学ぶ話なので、分子生物学の前提知識がない方の場合、そんなにすぐ理解できるはずもない、かなりややこしい話になってる可能性が高い…というかどう考えてもそうなっていることを見落としていました。

とにかく、聞き慣れない名前が多い時点で、知らない現象の理解というのはそう簡単には進まないんですよね。

実際僕も、例えば全くやったことないゲームのルールを理解するのとか、いきなりまくし立てられるように説明されても、一切把握できない自信が大いにあります。

というわけで、改めて、もう少しじっくり丁寧に説明を試みてみるとしましょう。


…まぁ正直、一番の問題は、別に誰一人アミノ酸やDNAについて詳しくなりたいなんて思ってない、ってことがあるんですけどね(笑)。

何ぞいきなり勝手に語り始めたでコイツおい、ってだけで(笑)。

ただ、そういう自分のやってる仕事の話も分かりやすくできないで、何が婚活だ、って話でもあるので(そうか?)、どうせ他に大していいネタもありませんし、もうちょい好き放題語らせてもらおうかと思います。


いただいたコメントでまず特に目がいったのは、この辺りの点ですね。一部改変抜粋させていただくと、

『「DNAがアミノ酸を指定する…」イメージがしにくいです。指定するとは、アミノ酸の並びを決めるってことですよね?
 例えば、例のお酒分解酵素ですと、517個のアミノ酸が、場所でいうとどこでくっついて、そのタンパク質はどこで出来上がるのか?肝臓?そもそも、その時のDNAはどこに??髪の毛のタンパク質は髪の毛にあるってこと…?』

といった旨のコメント&質問でして、これ、僕が高校生物でこの手の話を習ったときも、実はまさに似たようなことをずっと感じていました。

そして、実は学校で習う生物の授業ではその辺の説明があんまりしっかりとされていないので、僕自身、全くイメージができないまま、大学生になってむしろこの手の話を専攻とするまで、ちゃんとしたイメージをもてない状況であり続けた感じです。

そして、どこを見ても調べても、大抵ほとんど教科書的で無味乾燥な説明が載ってるだけで、そういう情報にはたどり着けないというか解決しないことが多いように思うんですよね。

なので、高校で生物を選択した受験生(昔の僕も)でさえ、あんまりきちんと把握できていない内容になっているように思われます。

誰でも感じる疑問なのに、受験生でさえも、案外なあなあにして放置しているポイントだといえましょう。
(←それでも普通にテストはクリアできるから。つまり、テストで聞かれたら覚えたとおりのことを答えることはできるけど、実際に自分の体のどこで何が…みたいな実践的な知識というか具体的なイメージは、実はまるでもてていない、という感じ。
 正直、大多数の普通の学生は、生物に限らずほとんどの教科で、そんなもんじゃないかと思います。もちろん自分含め。)

…ということで、まさに、いいご質問でした。


では、幸い専門に近い立場にい続けて、自分の中でちゃんとその辺のイメージを作ることに成功した、死ぬほど分かりやすい解説ができることに(自分の中で)定評のある僕が、いっちょ腕によりをかけて……

…と思いましたが、うーん、当たり前だけど、高校生が半年かけてもきちんと理解できないことの方が多い話を一発で完璧にイメージしてもらう、ってのはやっぱりめっちゃ難しいんですけど(しかも、ほとんど図なしで、文字だけで)、とにかく分かりやすさ優先で、ざっくり解説をしてみましょう…!


まず、人間は細胞でできています。

「うわ、出たよ細胞!言葉では聞いたことあるけど、イメージできないんだってば!」という意見も聞こえてきそうですが、実際僕も長年そうだったのでそれはよく分かります。

でもまぁ、厳密には微妙に違う所もあるんですけど、今は、「自分の体は目に見えないぐらいのめっちゃ小さい細胞が大量に集まってできてる」と考えればそれでOKなので、そう考えましょう。

当然一口に細胞といっても種類は色々で、目は視細胞が集まってできているし、皮膚表面は角質化した上皮細胞の集まりだし、肝臓には肝細胞が集まっている……と、とりあえずそんなふうに考えれば無問題です。

見た目も機能も全然違いますが、ミクロのレベルでは似たような構造なので、みんなまとめて「細胞」と呼んでいるわけです。

…って、そういわれてもやっぱり、「どゆこと?小さいものが集まるって、どうやって?何でバラバラにならへんの?」的な疑問も感じるかもしれません。

これは、ざっくり結論からいうと、
「同じ細胞同士が手をとりあって、くっついて存在できるように手助けをしてくれる(違う種類の細胞はくっつけない)やつが存在している」
…という、「そんな都合いいことできるの?本当にぃ?」と思えてやまないメカニズムが働いて、可能になっている、といえる感じです。

全く聞いたことのない固有名詞が出てくると拒否反応が生まれてしまうのが人間なので、いちいち詳しい名前は出しませんが、当然、その手助けしてくれているナイスガイも、タンパク質です。

目には視細胞同士をつなぎとめてくれるタンパク質が、肝臓には肝細胞同士をくっつけてくれるタンパク質が、それぞれしっかりいて働いてるんですね。

「うっそくせ、そんな都合いい話があるかよ」ってちょっと思えるんですけど、マジなんだから驚きです(実際目には目の細胞だけが集まってるのは、疑いようもない事実ですしね。目に指とか歯が移動してきたりはしません!(当たり前))。

生命は神秘といわれますが、知れば知るほど、本当によくできすぎている、この世の奇跡と思えてやまない感じです。

「5000兆円あげるから、ゼロから生命を作ってみて」といわれても、絶対にできない自信が僕にはあります。まぁ僕に限らず今のところ誰もできてませんが、生物学に関する知識もすごく積み重なっているとはいえ、人工生命が誕生するには、まだまだ時間がかかりそうですね(でも、遠い将来、きっと可能になることでしょう)。


…と、話が逸れたので、細胞に戻りましょう。

あぁ、戻ってきていきなりですが、先ほど最初の説明で、「まぁ微妙に違う所もあるんですけど…」みたいに例外をニオワせていましたが、そういうニオワセも気持ち悪く鬱陶しいだけで、そういう所をボヤかしたままなのも不親切というか、やる気をなくす原因かもしれないので、これもハッキリさせておきましょう。

そうですねぇ、「体の中で、細胞ではない部分」といえば、例えばとか。

歯の先端の、食べ物をすり潰すのに使われる硬い部分、これはエナメル質と呼ばれるものですけど、このエナメル質は最早単なる物体なので、細胞ではありません。
(…って、まぁ細胞も「物体」ですけど、細胞みたいな「生命!生きている!複雑!」なモノじゃなくて、人工的に簡単に作れるモノって意味合いです。)

なので、「人間は細胞が集まってできている。全身、全てが細胞」と言い切ることはできなかったわけですね。

ただ、このエナメル質も元々はエナメル芽細胞という細胞が作ったものなので、ある意味「細胞から生まれたもの」ともいえましょう。
(あともちろん、歯の根っこ部分には、ちゃんと細胞が存在しています。歯を削りすぎると、神経に当たって痛い……そんなイメージは誰でもお持ちだと思いますが、まさに、生きてる細胞がいる証拠ですね。)

つまり、エナメル質みたいな、特別な細胞が生み出した作品というか分泌物みたいなものもあるけど、そういうのはまぁアクセサリーみたいなもんとみなして、基本的には、「人間は全て細胞からできている」と考えてもOKでしょう。


で、タンパク質が作られる場所ですが、これは、ズバリ、「細胞の中」が答になる感じです。

「…待て待て!『細胞の中』って、何だよ!『中』があるん?コッペパンみたいに中身が詰まってるんじゃなく、風船みたいなのか、それともちっこい段ボールみたいなのが並んでるのか…イメージできんて!」と思われるのも分かります(まぁ別に思わないかもしれませんけど)。

細胞はめっちゃ小さいですけど、膜に囲まれていて、1つの部屋のようなものになっています。そして、中身は、ちょっと濃い目のコンソメスープみたいな感じの液体で満たされていて、スープの中には、色々な仕事をしている粒々も存在します(その粒々が、「タンパク質合成工場」だったり「DNA格納庫」だったりするわけです!)。

なので、細胞は、ちょうど中身(具入りスープ)の詰まった水風船みたいな感じといえますね。

もちろん、そうやすやすと破裂しない風船ですが、例えばビルの屋上から飛び降りとか対向車と正面衝突とかしちゃうと、木っ端微塵に破裂してしまう(まぁそれは細胞レベルというより、もっと大きな組織とか器官レベルでぶっ壊れてるともいえますが)のは当然です。

でも、日常生活では、ちゃんと「細胞!」という1つの塊として、それぞれ独立した部屋のように存在し続けている感じですね。
(肝臓というホテルには、肝細胞という部屋が大量に存在しているという感じ。)


そのめっちゃ小さい細胞という部屋の中で、DNAの情報をもとに、タンパク質が日々作られ続けている、というのが、話のキモというわけです。

…ん~、いまいちイメージ湧かない!基本的にサイズ感が分からん!もうちょい詳しく!!(…と、昔の僕なら思うでしょう。)

改めて例えば肝臓、これは誰でもレバーを思い浮かべれば、少なくともどんな見た目なのかはイメージが付くと思うんですけど、人間の肝臓は実はめっちゃ大きくて、お腹の右真ん中あたりに、幅は最長25 cmぐらいで、重さにして1 kg以上もある、結構堂々としたたたずまいで、デップリと鎮座しています。

そして、肝臓を作っている肝細胞の大きさは大体20マイクロメートル(=0.002 cm。細胞1つを肉眼で見るのは、どんなに視力が良くても、大分厳しいですね)とのことなので、肝臓の一番長い所(=25 cm)には、1つ0.002 cmの肝細胞は、1万2500個ぐらいズラッと並んでる感じですね。

それが立体的に、ラグビーボールぐらいの大きさでビシッと並んでいるわけですから、合計どのぐらいの数の肝細胞があるかといいますと……めっちゃ大量です(肝臓全体で、おおよそ2500億個とのこと)。

で、この合計2500億もの肝細胞1つ1つが、それぞれ、部屋の中で、せっせとタンパク質を合成し続けているわけです。

(いやあんま説明変わってないですけど、それぞれの臓器や器官は、そのぐらい本当に沢山の細胞が集まって形成されている、ってイメージをもてれば、それだけでまぁ大分いい感じでしょう。)


肝臓ではもちろん色々な、本当に沢山の種類のタンパク質が製造され続けていますが、当然、肝細胞では、あくまで肝臓で必要なタンパク質がメインで製造されています。
(肝臓で、例えば髪の毛に必要なタンパク質を作っても、何の意味もないため。)

もちろんその中の1つに、もう何度も登場しておなじみのお酒分解酵素ALDH2なんかも含まれているわけですね。

また、必ずしも全部の細胞が常にせっせとタンパク質作りに精を出しているわけではなく、タンパク製造以外の他の役割に特化している細胞もありますが、まぁそのほとんど=恐らく何百億もの肝細胞で、DNAの「ALDH2遺伝子」のページに書かれている指示通りに、アミノ酸を1つずつつなげて、ALDH2(や、その他の遺伝子の情報をもとに、その他の肝臓関連タンパク質)が日々合成されているのです。

「本当にそんな小さい細胞の中で、そんなこまごまとタンパク質を作るとか可能なん?お前見たんか?」といわれると、僕もこの目で直接タンパク質がブリブリ作られ続けてる様子をLIVEで見たことはないんですけど、細胞をシャーレとかで培養すると、ちゃんとタンパク質がブリブリ作られるので、間接的には確認しました。

なので、間違いないでしょう。

そもそも細胞は0.002 cmとのことでしたが、アミノ酸は大きくても0.0000002 cmとかそのぐらいですから、自分の1万倍の大きさ、人間でいうと1辺15 km以上はある巨大公園(むしろ、1つの町ぐらい?)とかで作業をするようなものですから、スペース的には全然余裕なんですね。

ちなみに人間はよくできているので、普段必要ないときはそんなにジャカジャカタンパク質を作り続けてはいないかもしれませんが(使わないものを大量に作るのは、無駄以外の何ものでもないため)、例えばALDH2ですと、お酒を飲んでお酒成分が体内に溜まってくるとスイッチが入り、全力でガンガン作り始められるようにできています。

必要なときに必要なものを作る、無駄のない設計になっているんですね。

先ほど書いた、「肝臓では髪の毛のタンパク質が作られない」というのも、ある意味そういうスイッチが機能しているからといえましょう。
(もちろん、肝臓で「髪の毛タンパク質合成開始スイッチ」がオンになることはありません。できてしまったら…それは、病気ですね。)

「…いやだから、スイッチが入るとか、そんな都合いいシステムがホンマにあるんけ?中に小っさいおっさんがいるわけでもあるまいし、たかがアミノ酸とかタンパク質ごときが、そんなん無理くね?出木杉くんじゃん!」…と思われるのも無理はなく、僕も当然最初はそう思えたものですが、先人たちによる長年の研究の結果、もちろん完全に全てのメカニズムが解明されてはいませんが、生物がそういう仕組みを持っていることは、実験できちんと証明されているのです。

マジで僕たち人間(というか生物全般)はそういう高等技術を、無意識に、平然と、細胞レベルでやってのけているんですね。

とにかく、「んな都合よくできてるなんて、あり得ないでしょ。実際、俺はいわれてもそんなことできないし、自分でやってる実感もねーぞ!」ということが生物を学んでいると多発して、ニワカには信じられないことも多く目にするわけですが、くどいですけど、マジであまりにもウマく(都合よく)できすぎているのが生命なので、ご都合展開多発でも、疑いの目を向けるのではなく、盲目的にまずは「はぇーそういうもんなのか、生き物スゲー、俺スゲェー!」と信じるようにすると、理解がより早く進むかもしれませんね。


またもちろん、そういうスイッチとか、タンパク質製造工場のパワーなんかも、使い続けると段々ガタが来たり、効率が落ちたりしていくこともあるでしょう。

それが、病気であり、老いでありで、そういう高度なスゴイことを上手くできなくなってしまったとき、生き物は死んでしまう、ということなんですね。

逆に、こんな凄いシステムを最長で100年ぐらいもずっと稼動し続けられるなんて(途中、手術みたいなメンテが入ることはあれど)、あまりにもスゴイとしかいえません(それしかいってないけど(笑))。

毎日3回充電(食事)する必要があって、毎日8時間操作不能モードでスタンバイ状態(睡眠)に入る必要があるのも納得の、ゴイスーなシステムが、我々人間なのです、という話でした。


…ということで、まだ質問の回答への前段階で、具体的な説明には届きませんでしたが、今回はとりあえず「生命活動は何事も基本的に細胞の中で行われており、僕らの体は基本的に細胞でできている」ということを抑えられればパーフェクツといえましょう。

これを踏まえたうえで、次回、いただいた質問や自分が昔感じていた質問に、順次イメージを持ってもらえる説明を加えていこうと思います。

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